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37.おきく物語おきくものがたり
舞台は移って、元和元年(1615)5月、落城寸前の大坂城。ここで登場するのは「おきく」という淀殿に仕えていた女性。そば焼きを作るようにと申しつけた下女から、落城しそうだと報告を受けて仰天します。
なるほど、ところどころ盛んに燃えているので、局(つぼね)に帰り、帷子を取り出し3つ重ねて、下帯も3つして、秀頼公より拝領した鏡を懐中し、(中略)急ぎ出た所、「女中方は出られませんように」と警備の(武田栄翁)が言う。それにも構わず(殿舎を)出た。(豊臣家の)金の瓢箪の御馬印が落ちていたので、このまま捨て置いては恥をさらすと打ちくだいて捨てた(後略)
警護の武士の制止を振り切り、城外に逃げ出した「おきく」は、途中、怪しい侍に遭遇しますが、持っていた金の棒を差し出すことで乗り切り、ついに、常光院(お初、淀殿の妹、お江の姉)の一行に出会って匿われます。後で聞いた話では、城に残った女中たちは生死がわからぬ者も多かったとか。「おきく」の話からは、戦国の女性たちの悲惨さとともに、たくましさも伝わってくるようです。
展示資料は、大坂城に勤務した女性の回顧録。天保8年(1837)刊。全1冊。「おあむ物語」とともに収録されています。
(請求番号:166-0091)
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