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中村正直(なかむらまさなお)(1832-91)
江戸麻布生まれの中村正直(敬輔・敬宇)は、子どもの頃から天才的な能力を発揮し、“麻布の神童”と称賛されました。幕府の儒者でありながら西洋の学術にも興味を示した彼の学識は、幕府の留学生の一員として英国の生活を体験することでさらに深まり、明治になって開花します。
展示資料の『自由之理』は、正直が、英国人J・S・ミルの『自由論』(1859年刊)を翻訳したもので、明治5年(1872)刊。前の年に刊行されベストセラーになった『西国立志編』(英国人S・スマイルス『セルフ=ヘルプ』の邦訳)と共に正直の代表的な業績です。
正直は、本書の内容が「是ナリヤ非ナリヤ予ガ知ルトコロニ非ズ」と述べ、日本の現状にはふさわしいとは言えないと評していますが、思想や言論の自由を主張した本書は、のちに自由民権運動に大きな影響を与えました。外務省旧蔵。全6冊。「在清国日本公使館所蔵記」「在清国日本総領事館印」の蔵書印が捺されています。
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