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人生の節目

誕生に始まり、学習と受験、就職活動、結婚(離婚)、病と老衰による引退そして臨終の時まで。旗本御家人は人生のそれぞれの節目にどのような「届」や「願」を幕府に提出していたでしょうか。それらの文書の内容から、彼らの知られざる姿が浮かび上がります。展示資料の中心は、幕末維新の混乱で廃棄されないまま江戸城多聞櫓内に残された幕府の公文書類。幕末の旗本御家人の実態をうかがう絶好の資料と言えるでしょう。

異才の幕臣たち

旗本御家人の人数は二万数千人。その多くが文化の花咲く刺激的な大都市江戸で、泰平の世を享受していました。おまけに幕臣の身で(貧富の差はあれ)とりあえず飢える心配もない。そんな好条件の下、彼らの中からすぐれた才能が輩出し、各分野で活躍しました。今回の展示では、旗本御家人の多彩な人材の中から、古い記録の収集や資料集の編纂など公文書館の仕事にゆかりの深い人々を選び、彼らの業績を紹介します。

幕末から明治へ

黒船来航、攘夷と開国、テロと災害。政治も人もかつてない熱を帯びた幕末という時代に、徳川家臣団のみならず、全国各地から多くの優秀な人材が幕臣に採用され、進取の気性に富む若き幕臣たちが、率先して西欧の知識や技術を身につけました。明治維新で幕府が倒壊したのちも、彼らはさまざまな分野でその経験と才能を発揮し、明治という時代を支えることになります。このコーナーでは、これら多士済々の旧幕臣の中から大鳥圭介、成島柳北ほかに光を当て、その足跡をたどります。

「武」の世界

江戸時代の初期をのぞけば、真剣を抜いて戦う非常事態はほとんど無く、おのずと鎗や甲冑も飾り物と化していました。 戦争を知らない幕臣たちにとって、幕末の黒船来航の衝撃は大きく、彼らのために甲冑の着方を平易に図解したマニュアル本まで緊急出版されます。一方で、西欧の知識を積極的に吸収しようとする洋学者たちによって、西欧の近代的兵器が相次いで紹介され、わが国の「武」の世界は、伝統的な古武具と近代的な兵器が相交じり、奇妙な様相を呈していました。

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