8. 信震録
この資料には、信濃の代官から「善光寺地震」の被害状況を勘定所に報告した文書や松代藩主の手紙の写しなどが収められています。編者未詳。2冊目の表紙裏に、貸し本屋から借りたまま返却を忘れた旨が記されていて、元は貸し本であったことが分かります。幕領の代官や上田、飯山、須坂など諸藩の報告書は被害の実態をよく伝えていますが、それ以上に興味深いのは、松代藩主真田幸貫が徳川三卿の一つ田安家の側用人竹中織部にあてた手紙です。
真田幸貫はこのとき57歳。3年前に老中職を退き、藩政の改革に力を注いでいました。4月22日付けの手紙で、幸貫は地震のすさまじさを語ると同時に「大変にて老境忘れ若やき、且は一代一度の働は此為と周旋いたし候」と、災害復旧に対する強い意欲を表明しています。はたして松代藩の復旧策は迅速で、幕府から1万両の拝借金を受けたほか、領内に課業銭(人頭税)を課して復興資金を貯えました。それにしてもなぜこのような文書や手紙の写しが外部に流れ、貸し本屋で借覧されたのでしょう。本書は、災害情報の伝達を考えるうえでも貴重な資料といえます。全3冊。