4. 安政雑記

[請求番号 150-0158]

大地震の後、江戸では鹿島かしま(鹿島神宮)の神や被災者が地震鯰を懲らしめている図柄を描いた錦絵(鯰絵なまずえ)が大流行しました。鯰絵は当初は地震の鎮静を祈願するものでしたが、余震がおさまるにつれて地震の経済効果(土木建築業の活性化による景気振興)を歓迎し、鯰を福をもたらす「世直し鯰」として描いた鯰絵も流布するようになりました。鯰絵にかぎらず、落書の中にも地震の経済効果を称えるものが登場します。『安政雑記』に見える「地震散」の落書もその1つ。地震を振出ふりだし薬(袋に入れ湯の中で振って成分を出す薬)にたとえて「職人土方は冷腹ひえばらヲあたゝめ身上しんしょうの痛ミを治する」と、その効能を述べています。

『安政雑記』は、江戸で剣術指南を業にしていた藤川貞(号は整斎せいさい。1791―1862)の著。全16冊。貞は家業のかたわら多くの著述をのこし、当館も本書のほかに、『文政ぶんせい雑記』『天保てんぽう雑記』『弘化こうか雑記』『嘉永かえい雑記』『整斎随筆』など彼の著述を所蔵しています。

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