[請求番号 212-0275]
大田南畝の随筆『一話一言』に、明和元年(1764)11月、原武太夫が68歳のときに記した文書が書きとめられています。
文書の内容は、武太夫の家に出入りする人々のあらまし。旗本や僧侶のほか、学者・茶人・狂歌俳諧師・武芸者・能役者・各種・芸人などなど。もちろん三絃師(三味線弾き)も流派の別なくやって来ました。将軍家の試し斬り御用を務める「人切 山田浅右衛門」や新吉原遊廓の町名主たちとも交際があったほか、武太夫を頼って駆け込んできた男女もすくなくありません。実に多彩な人々が武太夫のもとを訪れた様子がうかがえます。
武太夫が詠んだ歌は「大勢にくひたてられし米なれば 貧乏せしもことはりぞかし」。貧乏なのは多くの人に頼られたから、という意味でしょう。
展示資料の『一話一言』は、全80冊。教部省旧蔵。