Ⅳ.おわりに――平家物語とその時代
平家物語に収められている逸話は、治承・寿永の内乱(源平合戦)当時の史書・日記などの記録類と異なっている箇所が多くあります。また写本によっても内容・表現が大きく違っており、物語は様々な様相を見せます。この章では最後に、当時の記録類や諸本についてご紹介します。
平家物語諸本
葉子七行本『平家物語』
特025-0009
【成立】未詳
展示資料は1ページ7行で書写されていることから「葉子七行本」と通称される写本で、江戸時代初期の書写と推定される。「剣」「鏡」「宗論」という巻を合わせ持っている点が特徴で、本文は出版によって広がった流布本に近似している。当館のみが所蔵する貴重な写本。全12巻12冊。紅葉山文庫旧蔵。
中院本『平家物語』
特124-0004
【成立】慶長年間(1596~1615)刊
慶長年間に木活字を用いて出版されたもの(古活字版)で、古典学者で歌人としても知られる公卿の中院通勝(1556〜1610)が校合を加えたとの記載があることから通称を「中院本」と呼ぶ。灌頂巻を置かず、平家の遺児である六代の死で物語が終わる。
展示資料には雲母刷で模様を出した表紙が付いている。全12巻12冊。昌平坂学問所旧蔵。