Ⅱ.妖しきものたちの平家物語
武士たちのドラマの背後に、暗躍する怨霊・天狗・魑魅魍魎——
平家物語には教科書にも掲載される有名なエピソードのほか、奇妙で不思議な逸話も多く収められています。この章では平家物語の陰に蠢く妖しき”モノ”たちの姿に迫ります。
都落ちをめぐるドラマ
寛永3年版『平家物語』
203-0150
【刊年】寛永3年(1626)
【刊行者】菊池五兵衛
展示資料は京都で出版された『平家物語』で、文化5年(1808)に昌平坂学問所に収められたもの。巻3を欠き、全11冊。
万治2年版『平家物語』
203-0152
【刊年】万治2年(1659)
【刊行者】未詳
本資料は寛永3年版を再版したもの。全12巻12冊。紅葉山文庫旧蔵。
源頼朝(1147~1199)
平治の乱(1159)で父の義朝が敗死してからは伊豆で流人として暮らしていました。関東の豪族北条氏らを従えると、以仁王の令旨に呼応して挙兵。石橋山の戦いでは敗れましたが、間もなく勢力を回復、鎌倉で武家政権を立てました。弟の範頼・義経に命じて木曾義仲・平家を追討。物語の中では義経との対面時に涙を流すなど、人間的な姿が描かれます。

- 上洛した木曾義仲と後白河院(在位:1155~58、退位後は院政を敷く)の関係が悪化。院は頼朝に対して義仲追討の院宣(上皇の命令)を出しました。これを受けて、頼朝の弟たち範頼・義経の軍勢が京に進攻。配下の佐々木高綱・梶原景季が宇治川を渡って先陣を果たします。
高綱の乗っていた馬は、人や馬を見境なく生きたまま食べてしまうという荒馬。これにちなんで「生食」と名付けられたといいます。