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36.おあむ物語おあんものがたり

戦国時代といえども、さすがに女性がいくさの前面に出て戦うということはめったにありません。しかし、血を見るのも怖い、と恐れるようなことは言っていられませんでした。

ここで取り上げた資料は、青春時代を戦国の混乱の中で過ごした女性の思い出話。主人公の「おあむ」は、石田三成の家臣の娘で、慶長5年(1600)の関ヶ原の戦いのおり、石田方の美濃大垣城に入ります。そこで待ちかまえていたのは、味方の獲ってきた敵方武将の首の処理。

みかたへ、とった首を、天守へあつめられて、札をつけて覚えおき、さいさい、くびにおはぐろを付ておじゃる・・・くびもこはいものではあらない。その首どもの血くさき中に、寝たことでおじゃった。

戦後の恩賞のため、少しでも綺麗に見栄え良く化粧することが求められました。しかし、凄まじいのはこれから。「おあむ」は、目の前で実弟が射殺され、冷たくなっていくのを目の当たりにします。また、闇に紛れて城から逃げる際には、身重の母親が急に産気づき、田んぼの水を産湯代わりに妹を出産。すぐに父親が母親を肩にかけて落ち延びていきます。

「おあむ」の語りの言葉に、凄まじいまでの戦国の世の実像が感じとれます。

展示資料は、享保初年(1716)頃までに成立か。天保8年(1837)刊。全1冊。

(請求番号:166-0092)

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