Ⅲ書物を守り伝える

書物を伝える

康煕字典

29こうてん

別004-0001

『康煕字典』

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『康煕字典』は、清の康煕帝こうきてい(在位1661~1722)の命令で作成された字典です。この字典に使用された字体は「康煕字典体」と呼ばれ、現代の日本で用いられている漢字は、この字体を基準にして作られています。

掲載資料は、天保14年(1843)、小倉こくら新田しんでん藩第5代藩主のがさわらさだとしが湯島聖堂に献納したものです。帙の表面には、花模様をあしらった藍色の美しい生地を用いています。

『康煕字典』の蔵書印

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「大学校/図書/之印」・「浅草文庫」印が押されています。

がさわらさだとし(1802~1857)

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小笠原貞哲は、小倉新田藩第5代藩主です。小倉新田藩(現在の福岡県豊前市)は、小倉小笠原藩の支藩の1つで、小倉藩2代目藩主のただ(1647~1725)が、弟の真方さねかた(1652~1709)に1万石を与えて立藩させたものです。貞哲は、享和2年(1802)に生まれ、文政5年(1822)から天保14年(1843)まで藩主の地位にありました。天保14年に藩主を退任し、安政4年(1857)に死去しました。小倉新田藩は、真方を初代として明治維新まで9代続きました。

『康煕字典』の収められた箱

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小笠原貞哲が献納した『康煕字典』の書箱です。全40冊(6帙)からなる『康煕字典』を、この一つの書箱に収めることができます。

『康煕字典』の箱蓋裏書

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「 元禄三年
   大成殿新作祖備中守従五位下
   真方献四書集注儀礼経伝通解
   後罹安永之災祖従五位下守
   弾正少弼貞顕又献康煕字典
   今茲天保十四年
   官大修治
   殿因謹修貞顕所献篋帙聊由
   旧章敢致誠敬
   天保十四年癸卯十月
   従五位下近江守源朝臣貞哲  」

大意
元禄3年(1690)、大成殿が新築された際に、小倉新田藩初代藩主の小笠原真方が書物を献上しました。しかし、安永元年(1772)の火災で焼失したので、その後、3代目藩主の小笠原貞顕が『康煕字典』を献上しました。天保14年(1843)の今、幕府が大成殿を修理したので、貞顕が献上した『康煕字典』を修復しました。伝統を踏襲して誠意を示します。