Ⅲ書物を守り伝える

書物を伝える

御纂春秋直解

28ぎょさんしゅんじゅうちょっかい

別002-0003

『御纂春秋直解』

▲写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

『御纂春秋直解』(以下『春秋直解』)は、清の時代に刊行された『春秋』(儒学の経典の一つ)の解釈書です。掲載資料は、しましげひでが湯島聖堂に献納したものです。

しましげひで(1745~1833)

▲写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

島津重豪は、延享2年(1745)に生まれ、宝暦5年(1755)に11歳で鹿児島藩(薩摩藩)の藩主となり、天明7年(1787)に43歳で隠居しました。隠居後は南山なんざん栄翁えいおうと称し、将軍の「がく」(妻の父の意。重豪の三女茂姫が11代将軍家斉いえなり夫人となったため)として豪奢な生活を送ると同時に、89歳で没するまで藩政を後見し、影響力を及ぼし続けました。調しょひろさと(1776~1848)を抜擢して藩財政を再建したことで知られる重豪ですが、知識欲旺盛な藩主でもあり、博物学・語学・歴史など各種の文献の編纂刊行を企画しました。

『春秋直解』の帙

▲写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

掲載資料は、書物の状態が良いことはもちろんのこと、書物を包む「帙」も贅沢な作りとなっているのが特徴です。帙の表面は、雲と菊花模様をあしらった「はなだいろ」(薄い藍色あいいろ)の生地を用いています。帙の裏側には金箔を用いています。

『春秋直解』の収められた箱

▲写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

『春秋直解』の書箱です。ほかに『御纂周易述義』、『御纂詩義折中』が『春秋直解』と同様の装丁で、一緒に収められています。

『御纂春秋直解』の箱蓋裏書

▲写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

「 奉献
  大成殿
   明和九年壬辰十月二十一日
     従四位上行左近衛中将兼薩摩守
              源朝臣重豪 」

「明和九年」は、1772年です。「大成殿たいせいでん」は、孔子を祀る廟のことで、現在の湯島聖堂を指します。「従四位上行左近衛中将兼薩摩守源朝臣重豪」は、島津重豪のことです。