Ⅱ蔵書家列伝

かりえきさい(1775~1835)

狩谷棭斎は、江戸時代後期の書誌学者・蔵書家です。した池之端の本屋青裳堂せいしょうどうの子に生まれ、後に米問屋津軽屋の婿養子となり、弘前ひろさき藩のくらもと(藩の年貢米や専売品の流通を取り仕切る商人)を務めるかたわら、日本や中国で出版された書物の収集と研究に努め、数多くの業績を残しました。

名はぼうあざな卿雲けいうん、通称はさん、雅号は棭斎えきさいきゅうろうといいます。棭斎が、友人の蔵書家たちと開催した「求古楼展観」(第1回は文化12年(1815)5月7日に開催)は、日本における最初の本格的な書誌学研究会といわれています。

箋註唐賢三体詩法・孝経

16せんちゅうとうけんさんたいほう

363-0102

『箋註唐賢三体詩法』

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『箋註唐賢三体詩法』(以下、『唐賢三体詩法』)は、漢詩を作るための教科書です。

唐の時代(618~907)の詩人が詠んだ数多くの漢詩の中から、「しちごんぜっ」(一句七字の四句からなる詩)・「しちごんりっ」(一句七字の八句からなる詩)・「ごんぜっ」(一句五字の四句からなる詩)の3つの体裁の詩を集めたもので、詩人167人・詩494首を収録しています。

掲載資料は、狩谷棭斎の旧蔵書で、後に昌平坂学問所に収蔵されたものです。明の時代に刊行されたもので、全3冊です。

『唐賢三体詩法』の蔵書印

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『唐賢三体詩法』の蔵書印です。

『唐賢三体詩法』の蔵書印

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  1. ①「書籍/館印」
  2. ②「松屏書庫」→使用者不明の蔵書印です。
  3. ③「浅草文庫」
  4. ④「棭斎」→狩谷棭斎の蔵書印。
  5. ⑤「狩谷/望之」→狩谷棭斎の蔵書印。
  6. 表紙「昌平坂/学問所」

『唐賢三体詩法』の蔵書印

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  1. 「湯島狩/谷氏求古楼/図書記」→狩谷棭斎の蔵書印。

17こうきょう

275-0183

『孝経』

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『孝経』は、儒教経書の一つです。「孝道(先祖や父母によく仕えること)」について述べたもので、家族を中心とした道徳を説いたものです。『論語』とともに広く読まれました。

掲載資料は、狩谷棭斎が所蔵していた北宋の時代刊行の『孝経』を忠実に再現した復刻本で、文化9年(1812)に刊行されたものです。棭斎は、自身が所有する貴重な書物を模刻して出版することで、広く学者の利用に供しました。全1冊です。

『孝経』の蔵書印

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『孝経』の蔵書印です。

『孝経』の蔵書印

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  1. ①「書籍/館印」
  2. ②「日本/政府/図書」
  3. ③「内閣/文庫」
  4. ④「浅草文庫」
  5. ⑤「和学講談所」→和学講談所の蔵書印。
  6. ⑥「狩谷望之審定宋本」→こちらは印ではなく印刷。