Ⅲ書物を守り伝える

書物を愛する心

淮南鴻烈解・羅山林先生集

22淮南鴻烈解わいなんこうれっかい

307-0042

『淮南鴻烈解』

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『淮南鴻烈解』(「えなんこうれっかい」とも読みます)は、『淮南鴻烈』(『なん』ともいう)という書物の解説書です。『淮南鴻烈』は、前漢の時代(紀元前202~8)の淮南王わいなんおうりゅうあん(紀元前179~紀元前122)が、お抱えの学者たちを総動員して編纂した書物で、儒学や道家などさまざまな思想が入り交じっているのが特徴です。

掲載資料は、明の万暦ばんれき9年(1581)に刊行されたものです。江戸時代中期の易学者・まつしゅう(1751~1822、雅号は耕読園・臨照堂)の旧蔵書です。羅洲は大坂の人で、易学に関する書籍を多数著しました。表紙には大型の蔵書印が押されています。そして、蔵書印に記された文章からは「書物を愛する心」が読みとれます。昌平坂学問所の旧蔵書で、全6冊です。

『淮南鴻烈解』の蔵書印

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  1. ①「趙子昴云吁聚書蔵書良/非易叓善観書者滌手焚/香払塵浄几勿捲脳勿折/角勿以爪侵字勿以唾掲/幅勿以夾刺勿以作枕随/損随修随開随掩後之得/吾書者并奉贈此法/大阪耕読園蔵」
  2. ②「昌平坂/学問所」

羅洲は、元の時代の能書家・趙子昴の言葉を引いて、蔵書印を作成しています。そこには、以下のように書籍の取り扱い方を述べています。
「滌手焚香・払塵浄几」→手を良く洗い、香を焚き、机を綺麗にしなさい。
「勿捲脳・勿折角」→書物を丸めてはならない、ページの端を折ってはならない。
「勿以爪侵字・勿以唾掲幅」 →爪で文字に印をつけてはならない、唾をつけた指でページをめくってはならない。
「勿以夾刺・勿以作枕」 →しおりを挟んだままにしてはならない、枕にしてはならない。

23ざんはやしせんせいしゅう

205-0127、263-0058

『羅山林先生集』

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江戸時代初期の儒学者・はやしざん(1583~1657)の詩文集です。

掲載画像1~3(請求番号:205-0127)・掲載画像4~6(請求番号:263-0058)は、どちらも寛文2年(1662)に刊行されたものですが、350年以上の時を経て、その保存状態に違いがあらわれています。

掲載画像1~3は、「秘閣図/書之章」の印からもわかるように、幕府の蔵書庫である紅葉山文庫に献上されたものです。紅葉山文庫の蔵書はしっかりと管理されていたため、非常に良い状態を保っています。

『羅山林先生集』の蔵書印

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『羅山林先生集』の蔵書印です。

『羅山林先生集』の蔵書印

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  1. ①「秘閣図/書之章」→明治6年(1873)の皇居火災以降、明治12年(1879)まで使用された乙種印。甲・丙に比べて形が小さいことが特徴です。
  2. ②「日本/政府/図書」
  3. ③「内閣/文庫」

『羅山林先生集』

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掲載画像4~6は、羅山の子孫が代々受け継いできたもので、昌平坂学問所が開設された際に移管された書物です。始祖ともいえる林羅山の文章を、その子孫や門弟たちが読んだのでしょう、ページの左端が人の皮脂などで黒く汚れています。この違いを目にすると、松井羅州の印記にある「手を洗う」ことの重要さがわかります。

『羅山林先生集』の蔵書印

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『羅山林先生集』の蔵書印です。

『羅山林先生集』の蔵書印

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  1. ①「林氏/蔵書」→寛政9年(1797)の昌平坂学問所開校時に、林家が羅山以来代々収集してきた家蔵書に押したもの。寛政9年以降はこれを原則用いず、「昌平坂学問所」印のみを押しています。
  2. ②「日本/政府/図書」
  3. ③「浅草文庫」
  4. ④「弘文学士院」→林ほう(1618~1680)の蔵書印。鵞峰は羅山の三男でしたが、長男・次男が早世したため、羅山の跡を継ぎました。寛文3年(1663)からこうぶんいんがくと称し、蔵書印にも用いました。