19. 一話一言
(いちわいちげん)

[請求番号 特131-0001]

藤枝外記一件の詳細は、大田南畝の随筆『一話一言』の巻38に書きとめられた文書によって知ることができます。

文書は、評定所において久松筑前守(定ト)が申し渡した判決文で、これによって―外記は寄合(非役)で28歳。相手の女性は新吉原京町2丁目の大菱屋久右衛門の抱え遊女「綾絹」(あやぎぬ)、19歳。外記の妻「みつ」も19歳で、母「本光院」は49歳。心中したのは8月13日で、場所は千束村の百姓平右衛門の家。ほかに藤枝家の用人二人も「押込」になった―ことなどがわかります。

『一話一言』は50年にわたって書き続けられた随筆ですが、巻38の成立は文化9年(1812)。南畝は64歳でした。

判決を申し渡した大目付久松定トの公務日誌にも記されていない文書が、著名な文人とはいえ、幕臣としては御目見以下の支配勘定にすぎない南畝によって、事件から27年も経って書きとめられたのはなぜか。文書を後世に伝えようとする南畝の強い意欲がうかがえます。

展示資料は、全50冊(全56巻)。南畝の自筆本ですが、展示箇所は他筆と思われます。内務省旧蔵。

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