[請求番号 多012887]
ひとくちに幕府の医師といっても、奥医師・番医師・寄合医師などさまざまな医師がいました。このうち将軍以下「奥」の人々を診療したのが奥医師で、大奥で誕生した若君姫君たちを診察し薬を処方するのも彼らでした(ほかに幕臣ではありませんが、医術にすぐれているため将軍に御目見を許された御目見医師も、診療に当たりました)。
展示資料は、オランダの軍医ポンペに長崎で近代医学を学び、維新後は軍医総監を務めた松本良順(1832―1907)が奥医師拝命後、元治元年(1864)8月15日に、老中・牧野備前守(忠恭)と若年寄・平岡丹波守(道弘)に差し出した血判誓詞(誓約書)です。
誓約の内容は、薬をさし上げる際には奥医師一同でよく相談し最善の処方に従うこと。奥向の事は親兄弟妻子といえども口外しないこと等々。花押の中にかすかに血判の痕が見えます。