准認証アーキビストの認定開始について

国立公文書館 統括公文書専門官室
アーキビスト認証担当

はじめに
  独立行政法人国立公文書館(以下「当館」という。)は、令和6年度から准認証アーキビストの認定を開始した。これまでに2回の認定が行われ、認定者は合計176名である。
  当館では既に、公文書等の管理に関する専門職員に係る強化方策として、国民共有の知的資源である公文書等の適正な管理を支え、かつ永続的な保存と利用を確かなものとする専門職を確立するとともに、その信頼性及び専門性を確保するため、アーキビスト認証を令和2年度から実施している。この取組は、「アーキビストの職務基準書」に示された「知識・技能等」、アーカイブズに係る「実務経験」、大学院修士課程修了レベルの「調査研究能力」からなる3要件を満たすことで、アーキビストとしての専門性を有すると認められる者を、国立公文書館長(以下「館長」という。)が認証アーキビストとして認証するものであり、現在、合計323名の認証アーキビストが誕生している。
  准認証アーキビストの認定は、このアーキビスト認証の取組をさらに推進するため新たに始めたものであり、上記認証要件の一つである「知識・技能等」の修得をもって准認証アーキビストに認定する仕組みとなっている。准認証アーキビストの認定実施に向けた準備に関しては、「「准認証アーキビスト」骨子」(令和5年3月30日、国立公文書館長決定)策定までの経緯をまとめた記事を本誌第88号に掲載しているが[1]、本稿では、改めて上記の経緯を簡単に振り返った上で、第1回及び第2回認定の実施について報告する[2]。

1.准認証アーキビストの検討経緯
  准認証アーキビスに関する検討は、平成31年3月、アーキビスト認証を創設するため当館に設置されたアーキビスト認証準備委員会において始まった。当館では、同準備委員会が令和元年12月に取りまとめた提言を踏まえ、その後設置されたアーキビスト認証委員会(以下「認証委員会」という。)の意見も得ながら准認証アーキビスの検討を重ねていった。
  令和3年度には、基礎的な情報を収集するため、全国公文書館長会議参加機関の協力を得てアンケート調査を実施し、あわせて複数のアーカイブズ機関に対するヒアリングを行った[3]。このアンケート調査及びヒアリングでは、実務経験は無いが知識・技能等を修得した者の資格化を支持する意見が多数を占めたことから、以降は准認証アーキビストの認定対象を、上記に範囲を絞る形で検討を進めることとした。
  その後も引き続き認証委員会で議論を重ねつつ、アーキビスト養成に取り組む高等教育機関及び研修機関、全国公文書館長会議参加機関、アーカイブズ関係機関協議会、日本歴史学協会国立公文書館特別委員会との懇談会での説明や意見聴取を行った。こうした検討を経て、令和5年3月30日に「「准認証アーキビスト」骨子」を決定し、当館ホームページで公表した[4]。

2.「准認証アーキビスト」骨子の概要
  「「准認証アーキビスト」骨子」では、准認証アーキビストの「目的」を、「アーキビスト認証の取組を推進するため、認証アーキビストの一要件である専門的知識・技能等を有した者を公的に認める仕組みを設け、専門人材育成の道筋を示し、その育成環境の充実及び専門人材の定着を図る」こととしている。また、同骨子では准認証アーキビストの認定を、アーキビスト認証の一環として実施するものであると位置付けている。
  さらに、「対象者及び要件」については、「「知識・技能等」を修得していること」とし、具体的には、大学院修士課程における所定の科目を修得した者、もしくは関係機関における所定の研修を修了した者としている。いずれもアーキビストとしての専門的な「知識・技能等」を体系的に学んだ者に当たる。
  先に見た「目的」の項目において「専門人材育成の道筋」とあるとおり、将来的に認証アーキビスト等の専門人材となることを志向する又は期待される者に、認証アーキビストに進むためのプロセスを指し示すことが、准認証アーキビストの仕組みを設ける目的としている。具体的には、認証アーキビストの一要件である「知識・技能等」を体系的に修得し、さらに「実務経験」及び「調査研究能力」を段階的に獲得するといった道筋が、ここでは想定されている[5]。従って、准認証アーキビストは、認証アーキビスト等の専門職員を補助する者ではなく、認証アーキビストにつながっていく「認証アーキビストの候補者」という位置づけとなる[6]。

3.准認証アーキビスト審査規則及び同審査細則の決定
  以上の「「准認証アーキビスト」骨子」を踏まえ、続いて准認証アーキビストに係る関係規則等の整備に取り掛かった。令和5年6月1日開催の第19回認証委員会及び9月7日開催の第20回認証委員会において検討を行い、10月5日に准認証アーキビスト審査規則[7]及び准認証アーキビスト審査細則[8]を策定した。あわせて、認証アーキビスト審査規則及びアーキビスト認証委員会規則についても、准認証アーキビストに対応する改正を行った。
  准認証アーキビスト審査規則は、本則14条及び附則からなり、第1条で「アーキビスト認証の実施について(令和2年3月24日国立公文書館長決定)に基づき実施するアーキビスト認証を推進するため(中略)准認証アーキビストの審査及び認定について、必要な事項を定める」と本規則の目的を明示している。また、続く第2条において「アーキビストとして必要な知識・技能等を有すると認められるときに当該申請者を認定する」とし、その付与される名称は、和文表記「准認証アーキビスト」、英文表記「Associate Archivist Certified by the National Archives of Japan」としている。以下、第3条において「認定の要件」、第5条において「申請書類」、第7条において「認定の審査」、第8条において「認定の手続」というように、准認証アーキビストの認定に係る基本的な事項を定めている。
  一方、准認証アーキビスト審査細則では、認定要件の具体的な規定、申請者別の提出書類の指定など審査の詳細事項を定めている。これら准認証アーキビスト審査規則及び同審査細則の構成は、それぞれ認証アーキビスト審査規則及び同審査細則の構成とおおむね同じ形としている。

4.准認証アーキビストの認定の仕組み
  准認証アーキビスト審査規則及び同審査細則により定められた認定の仕組みは、基本的に認証アーキビストの認証と同様の仕組みとなっている。館長は、申請者からの申請を受けて、認証委員会に審査を依頼し、その審査結果に基づき、アーキビストとして必要な「知識・技能等」を有する者を「准認証アーキビスト」として認定する。
  准認証アーキビストの認定要件は、2つのパターンに分かれており、(1)「アーキビストとして必要な知識・技能等について大学院修士課程における科目修得又は関係機関における研修修了によって体系的に修得していること」、(2)「認証アーキビストの認証を受けている者又は過去に認証を受けた者であること」のいずれかの要件を満たす必要がある。
  なお、大学院修士課程の科目を修得した事実や関係機関の研修を修了した事実については一定期間で失効するようなものではないため、准認証アーキビストでは有効期間を設けていない[9]。

5.「申請の手引き」の公表及び説明会の開催
  以上の関係規則の整備と並行して、具体的な申請方法を記載した「令和6年 准認証アーキビスト 申請の手引き」(以下「申請の手引き」という。)の準備を進め、令和5年10月26日に当館ホームページにて公表した。
  「申請の手引き」の構成は、認証アーキビストの「申請の手引き」と基本的に同様とし、「令和6年の申請・認定スケジュール」、「1 アーキビスト認証について」、「2 認定要件」、「3 申請方法」、「4 審査結果の通知」、「5 よくある質問(FAQ)」の順でまとめている。また、准認証アーキビストは大学院生等の申請も想定されるため、学生にも理解しやすい形となるよう、「申請の手引き」の作成に当たっては平易な表現をとるなどの工夫を加えた[10]。
  次いで、令和6年1月19日及び20日には、准認証アーキビスト申請者向けのオンライン説明会を開催し、准認証アーキビストの仕組み、申請の具体的方法等についての広報にも取り組んだ。説明会は両日で合計93名の参加を得た[11]。あわせて、同月26日からは、説明会の録画動画を当館YouTubeチャンネルにて公開し、幅広い情報発信に努めた。動画は、後述する第2回認定の申請書類受付終了日に当たる4月30日まで公開を行った。
  また、説明会実施に先立ち、令和5年12月1日には、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会主催の全国(東京)大会で「アーキビスト認証の取組について-准認証アーキビストの創設を中心に-」と題する報告を行った[12]ほか、同月19日には、全国公文書館長会議参加機関に対し准認証アーキビストの目的や仕組みについての説明を実施し、アーキビストを採用する側となる公文書館等の関係機関に向け、准認証アーキビストに対する理解や協力を求める取組も幅広く展開した。

6.令和6年の認定実施結果
  准認証アーキビストの認定について、令和6年は4月1日付と6月1日付の2回実施することとし、第1回は令和6年2月1日から同月29日まで、第2回は4月1日から同月30日までの期間で、それぞれ申請書類の受付を行った。申請者数は、第1回が129名、第2回が49名であり、3月15日開催の第24回認証委員会で第1回申請分、5月17日開催の第25回認証委員会で第2回申請分の審査を実施した。当館は、認証委員会からの審査結果の報告に基づき、第1回は4月1日付で128人、第2回は6月1日付で48人を准認証アーキビストとして認定することを決定し、第1回に関しては3月27日、第2回に関しては5月29日に、申請者全員に対して認定の可否を電子メールにより通知した。また、4月1日及び6月3日に、第1回及び第2回の認定した者の一覧表を、当館ホームページで公表した。なお、認定した者の一覧表では、准認証アーキビスト審査規則第8条で定めるとおり、(1)氏名、(2)認定番号、(3)認定年月の3点の情報を掲載している。

○申請者・認定者数

実施回 認定年月日 申請者数(人) 認定者数(人)
第1回 令和6年4月1日 129 128
第2回 令和6年6月1日 49 48
合計 178 176

 

おわりに
  本稿では、令和6年度から開始した准認証アーキビストの認定について、その実施に至る取組を振り返った。
  准認証アーキビストの認定は、認証アーキビストの認証と並び、適正な公文書管理の推進を我が国全体で図る上で不可欠な取組であると考えている。今後も引き続き、専門人材のさらなる育成環境の充実及び専門人材の定着を目指し、高等教育機関等との連携を深めるとともに、アーキビスト認証の普及啓発を努めることにより、アーキビストやアーカイブズが社会で果たすべき役割やその重要性などを広めてまいりたい。

〔注〕
[1] 統括公文書専門官室アーキビスト認証担当「「准認証アーキビスト」骨子について」(「アーカイブズ」第88号、令和5年6月23日)
https://www.archives.go.jp/publication/archives/no088/13918
[2] 准認証アーキビストに関しては、本稿のほか、令和6年1月末までの取組をまとめたものとして、伊藤一晴「准認証アーキビストの検討状況について」『日本歴史学協会年報』(第39号、令和6年3月)がある。あわせて参照いただきたい。
[3] 調査結果は、アーキビスト認証委員会(第9回)配布資料
https://www.archives.go.jp/ninsho/download/haifushiryo_009.pdf
のうち、資料3、6~34ページに掲載。
[4] 「「准認証アーキビスト」骨子」(令和5年3月30日、国立公文書館長決定)
https://www.archives.go.jp/ninsho/download/jyunninsho_kosshi.pdf
[5] ここで具体的に想定されている専門人材育成の道筋に関しては、このほかにも、公文書館等で「実務経験」を積んだ者が、「知識・技能等」を修得することで准認証アーキビストの認定を受け、さらに「調査研究能力」を伸ばし認証アーキビストの認証へとつなげていくケースがある。
[6] 前掲「「准認証アーキビスト」骨子について」を参照。
[7] 「准認証アーキビスト審査規則」(令和5年10月5日、国立公文書館長決定)
https://www.archives.go.jp/ninsho/download/007_jyun_shinsa_kisoku.pdf
[8] 「准認証アーキビスト審査細則」(令和5年10月5日、国立公文書館長決定)
https://www.archives.go.jp/ninsho/download/008_jyun_shinsa_saisoku.pdf
[9] 一方、認証アーキビストについては、社会規範の変容や情報技術の進展等を踏まえ、最新の動向を把握し、アーカイブズやアーキビストを取り巻く環境の変化に対応していくことが求められるため、認証の有効期間を認証状交付の日から起算して5年とし、更新が必要となる仕組みとしている。
[10] アーキビスト認証委員会(第20回)議事の記録
https://www.archives.go.jp/ninsho/download/ninsho_giji_20.pdf)、6ページ。
[11] 『令和5年度業務実績等報告書』(令和6年6月、国立公文書館)、51ページ。
[12] 中野佳「アーキビスト認証の取組について-准認証アーキビストの創設を中心に-」『全国歴史資料保存利用機関連絡協議会会報』(第115号、令和6年3月)
http://jsai.jp/pdf/115kaihou.pdf