第3回公文書管理フォーラムにおける国立公文書館からの報告
~地方公共団体との関わりを中心とした国立公文書館の取組~

国立公文書館
公文書専門官 島林 孝樹

はじめに
  国立公文書館(以下「当館」という。)は、内閣府が開催している地方公共団体の文書主管課等職員を対象とした文書管理の普及、啓発のための公文書管理フォーラム(以下「フォーラム」という。)に支援、協力しています。令和4年9月29日に開催された第3回フォーラムでは、当館からも、地方公共団体に係る自館の取組を中心に報告しました。本フォーラムは、地方公共団体の文書主管課等職員を対象としていますが、本稿では、我が国の公文書館制度の充実発展を図っていくための場として、報告の概要を広く紹介します。

1.第3回公文書管理フォーラムの概要
  第3回フォーラムでは、「地方公共団体における公文書管理や市町村連携の取組」をテーマに、まず、内閣府から「歴史公文書等の保存・管理の推進のための地方公共団体に対する国の支援施策について」と題する説明がなされました。
  次に、2つの地方公共団体の取組についての講演がありました。第一に、沖縄県公文書館指定管理者(公財)沖縄県文化振興会公文書管理課資料公開班班長の仲本和彦氏から、「沖縄県公文書館による市町村等公文書管理支援活動」を、第二に、尼崎市公文書管理担当課長の久山修司氏及び尼崎市立歴史博物館長の伊元俊幸氏から、「公文書管理条例の制定経緯・概要等について」、「デジタル田園都市国家構想推進交付金による歴史的公文書等の管理・公開の推進について」をそれぞれ講演されました。
  最後に、当館及び内閣府から、「国立公文書館の取組―地方公共団体との関わりを中心に―」、「国の行政機関における歴史公文書等の評価・選別について―手続と基準―」をそれぞれ報告しました。

2.国立公文書館からの報告
  当館からの報告では、「認証アーキビストについて」、「地方公共団体との連携について」、「ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリーについて」という、地方公共団体と関係する三つの取組を取り上げて説明を行いました。以下は、当日の報告内容を書き起こしたものです。

2.1.認証アーキビストについて
  当館では、令和2年度から、アーキビストとしての専門性を有する者を国立公文書館長が認証するアーキビスト認証の取組を始めました[1]。

2.1.1.認証の目的
  当館は、長年にわたり、公文書館をはじめとするアーカイブズで働く専門職員であるアーキビストの養成や、その資格化について検討を進めてまいりました。平成10年には、このアーキビスト養成を目的とする長期研修である公文書館専門職員養成課程(現在のアーカイブズ研修Ⅲ)を毎年開催するなど、その養成に関する取組を進めてきました。
  そのような中、平成23年に公文書等の管理に関する法律が施行され、その5年後見直しを契機とし、当館では、改めてこの「アーキビスト」の資格化の検討を進めました。そして、令和2年度から、国民共有の知的資源である公文書等の適正な管理を支え、かつ、永続的な保存と利用を確かなものとする専門職を確立するとともに、その信頼性および専門性を確保するため、アーキビストとしての専門性を有するものを国立公文書館長が認証するアーキビスト認証の仕組みをスタートしました。

図1 認証の基本的仕組み

図1 認証の基本的仕組み

2.1.2.認証の基本的仕組み
  認証の基本的仕組みは、図1のとおりです。
まず、認証を受けようとする方は、国立公文書館長に対し申請書を提出していただきます。次に、国立公文書館長は、有識者からなるアーキビスト認証委員会に対し審査を依頼します。同委員会の審査によって、アーキビストとしての専門性を有することが認められた方に対し、国立公文書館長が「認証アーキビスト」として認証します。
  この「認証アーキビスト」には、高い倫理観とともに、評価選別や保存、さらには時の経過を考慮した記録の利用に関する「専門的知識や技能」、様々な課題を解決していくための高い「調査研究能力」、3年以上のアーカイブズに係る「実務経験」が求められます。認証委員会において、この3要件をすべて満たすと判断された人が、認証アーキビストとして認証されます。

2.1.3.令和2・3年度の認証状況
  令和2年度からスタートしたアーキビスト認証ですが、初年度は248名の申請に対し190名、2回目となる令和3年度は、81名の申請に対し57名の方が認証アーキビストとして認証され、現在、247名となっております。
  認証者の内訳をみると、全国の公文書館に所属している認証アーキビストは、令和2年度、3年度をあわせると139名になります。
  なお、自治体の中には、公文書館は設置されてはおられないものの、図書館や博物館等の類縁機関に公文書館の機能を持たせている自治体もございます。認証には、前述のとおり、3年以上の実務経験が必要となりますが、このような類縁機関の職員であっても、公文書館の職務を行っていると判断されれば、実務経験は満たすことが可能です。

表1 令和2・3年度の認証状況
全体
  申請者数(人) 認証者数(人) 認証率
第1回(令和2年度) 248 190 76.6%
第2回(令和3年度) 81 57 70.4%
合計 329 247 75.1%

認証者の内訳(所属別)※認証時の所属
  公文書館(人) その他(人) 公文書館職員の割合(%)
第1回(令和2年度) 110 80(非公表3を含む) 57.9
第2回(令和3年度) 29 28 50.9
合計 139 108 56.3

  247名の認証アーキビストの住所地からみた都道府県別の人数が、図2になります。

図2 都道府県毎(住所地)の認証者数

図2 都道府県毎(住所地)の認証者数

  このように、国立公文書館では令和2年度からアーキビスト認証の取組を開始したところです。当館ではアーキビスト認証の定着を図るため、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。
  全国の公文書館をはじめとするアーカイブズ関係機関の長の皆様におかれましては、引き続き、自館の職員に対する資格取得に向けた積極的な支援、また申請の促進に努めていただくとともに、認証アーキビストの積極的な活用にご協力いただきますようお願いします。
  館業務の在り方や条例を整えたとしても、それを運用する人材の配置・育成がなければ、公文書管理の適正化は成しえません。自治体の方におかれましては、是非とも人材育成の一環として、職員の「知識・技能等」の要件となっております研修受講、職員の認証、また認証者の活用について、積極的にご検討いただければ幸いです[2]。

図3 令和4年度研修計画(アーカイブズ研修)

図3 令和4年度研修計画(アーカイブズ研修)

2.2.地方公共団体との連携について
  次に、地方公共団体との連携になります。当館では、地方公共団体からの求めに応じて、公文書館の運営に関し、技術上の指導又は助言を行っております。
  まず1点目は、全国公文書館長会議です。この会議は、毎年6月、全国の公文書館の館長が一堂に会して開催し、協議、相互連絡を行うものです。館長会議のテーマにつきまして、平成29年からは、継続的に、公文書館の専門人材の育成をテーマに意見交換を行っています。人材育成を継続したテーマにする一方で、毎年度、もう一つ別のテーマを設けて参加機関同士で、意見交換を実施しています。今年令和4年は、「学校連携(展示・学習機能)」をテーマにしました。新学習指導要領では、社会科において、資料や公文書館の活用が明記されるようになり、学校側からも資料を使った学習を進めることが求められるようになったことから、こうしたテーマで実施しました[3]。
  2点目は、国立公文書館が実施する「アーカイブズ研修」です。この研修につきましては、実施にあたって受講者の推薦を、全国公文書館長会議にご参加いただいている公文書館、また都道府県の文書主管課に対し、案内をさせていただいております。アーカイブズ研修はⅠからⅢに分かれています(図3)。令和4年度のアーカイブズ研修Ⅰでは、地方公共団体から14名が会場受講したほか、オンラインでは63名もの方に受講いただきました。現在、アーカイブズ研修Ⅲを開催しています。また、アーカイブズ研修Ⅱについては、2月上旬を目途に完全オンラインで実施を予定しています。
  アーカイブズ研修については、公文書館職員のみならず、公文書の保存・利用を担当する文書主管担当の職員も対象としております。
  3点目は、地方公共団体が設置する委員会等への委員派遣、地方公共団体が主催する研修・セミナーへの講師派遣を、地方公共団体からの求めに応じ、行っております。例えば、山口県や高知市には、公文書管理条例制定に向けた検討会に専門職員を派遣しています。また、仙台市には、公文書館設置準備に向けた検討会に専門職員を派遣しています。ご希望の自治体におかれましては、当館までご連絡いただければと思います。
  また当館では、情報誌『アーカイブズ』をウェブサイト上で刊行しています[4]。この情報誌には、地方公共団体の職員の皆様にも公文書館設置の取組などをテーマにご寄稿いただき、情報共有の場としてご活用いただけます。ご寄稿を希望される場合は、当館までご連絡ください。
  4点目は、デジタルアーカイブ化推進の助言等を行っております。また、当館デジタルアーカイブ[5]との横断検索が可能なシステムを有する公文書館等との間で、横断検索を実現しています。
  5点目は、自然災害により被災した公文書等の救援を行っております。例えば、平成29年度に、台風18号により大分県津久見市が保有する公文書等が水損した際には、館の職員を派遣し、乾燥、クリーニング方法等について、実技指導等を実施しました[6]。
  6点目は、館外展の開催です[7]。毎年、開催会場となった公文書館等と共同して館外展を開催しており、今年度は武蔵野市ふるさと歴史館での開催を予定しております。館外展の開催会場は公募により決定しております。例年、12月頃に館HP等に、公募の情報を掲載しております。[8]

図4 ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー「沖縄県公文書館」のページ

図4 ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー「沖縄県公文書館」のページ

2.3.ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー
  最後に、当館ウェブサイトに開設している、ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー(以下「JAD」という。)[9]を紹介します。JADでは、国や地方公共団体等が所蔵する歴史公文書等の概要やその利用に関する情報を提供しています。これまで、全国の公文書館の所蔵資料を中心に所在情報を提供してきました。令和3年度から、公文書館を設置していなくても、保存期間が満了した重要な文書を保存し、利用提供を行っている団体に対し、順次、調査を進め、所在情報を提供しています。
  図4は、今回報告をいただいた「沖縄県公文書館」のページです。歴史公文書等の所蔵者ごとに、所蔵者が提供する様々な情報を国際的な標準にしたがって整理し提供することで、どのような歴史公文書等があるのか、それを利用するにはどうしたらよいのかといった基本的な情報を容易に入手することができます。
  当館としては、JADが、国内にある歴史公文書等の利用の「きっかけ」となることから、内容をより充実させたいと考えています。公文書館の有無にかかわらず、地方公共団体の皆様のご協力を何卒宜しくお願いいたします[10]。


おわりに
  参考として、ウェブサイトでの情報共有・発信の媒体として、先ほど御紹介した情報誌「アーカイブズ」[11]と「国立公文書館ニュース」[12]という広報誌を国立公文書館ホームページ上で掲載しておりますので、ご覧ください。

図5 情報誌「アーカイブズ」

図5 情報誌「アーカイブズ」

図6 国立公文書館ニュース

図6 国立公文書館ニュース



〔注〕
[1] 国立公文書館「アーキビスト認証」、https://www.archives.go.jp/ninsho/index.html
[2] お問い合わせ先:統括公文書専門官室(アーキビスト認証担当)
[3] 国立公文書館「令和4年度全国公文書館長会議報告」、https://www.archives.go.jp/news/20220712_01.html
[4] 国立公文書館情報誌「アーカイブズ」、https://www.archives.go.jp/publication/archives/
[5] 「国立公文書館デジタルアーカイブ」、https://www.digital.archives.go.jp
[6] 国立公文書館「被災公文書等の救援について」、https://www.archives.go.jp/about/activity/kyuuen.html
[7] 国立公文書館「過去の展示会」、https://www.archives.go.jp/exhibition/past.html#ex03
[8] お問い合わせ先 :統括公文書専門官室(研修連携担当)(1~3について)
   :業務課デジタルアーカイブ係(4について)
   :業務課総括係(5について)
   :統括公文書専門官室(展示担当)(6について)
[9] 国立公文書館「ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー」、https://www.archives.go.jp/jad/index.php
[10] お問い合わせ先:統括公文書専門官室(調査研究担当)
[11] 国立公文書館情報誌「アーカイブズ」、前掲3(https://www.archives.go.jp/publication/archives/
[12] 国立公文書館ニュース、https://www.archives.go.jp/naj_news/index.html