滋賀県立公文書館の開館について

滋賀県立公文書館
歴史公文書専門職員 岡本 和己

開館式の様子(令和2年4月1日)

開館式の様子(令和2年4月1日)

1.はじめに
   令和2年(2020)4月1日、歴史資料として重要な公文書等を適切に保存し、利用に供するため、滋賀県立公文書館が開館しました。
   当館は、平成20年以降、事実上歴史的文書を利用者の閲覧に供してきた県政史料室を改編し、「滋賀県立公文書館の設置および管理に関する条例」(平成31年滋賀県条例第6号。以下「公文書館条例」という。)に基づき、正式な公の施設と位置付けて設置したものです。同条例および歴史公文書等について定めた「滋賀県公文書等の管理に関する条例」(平成31年滋賀県条例第4号。以下「公文書管理条例」という。)の制定に至る経緯や目的は、過去の『アーカイブズ』で紹介していますので、こちらから御覧ください。
   そこで今回は、公文書館として新たに取り組んでいることを中心に今後の活動について紹介したいと思います。

2.公文書館に移管される所蔵資料
   これまで、県政史料室では明治期から昭和戦前期までの公文書等を歴史的文書として公開してきましたが、このたび新たに公文書館として開館することを機に、これらに加えて戦後の資料の一部も件名目録を作成した上で開館と同時に移管・公開しました。
   新たに加えたのは、昭和21年から昭和56年までの間に作成された永年保存の文書の一部(昭和戦後期)および、平成19年度以降に保存期間が満了した文書のうち、移管が適当と判断された文書(令和2年度移管文書)約4,000冊です。この中には、昭和天皇の湖国巡幸や琵琶湖総合開発、全国学力調査、新型インフルエンザの流行(平成21年春~22年3月)に関する文書などが含まれています。
   今後は、公文書管理条例により現用公文書の移管の制度が整えられたことに伴い、毎年保存期間が満了したファイル等のうち公文書館へ移管されたものを順次加え、目録を整備した上で公開していきます。
   さらには、県政と重要なかかわりがある文書の個人や団体からの寄贈・寄託の受入れも行っていきます。昨年寄贈を受けた、第16代滋賀県知事堀田義次郎の私蔵文書も、「堀田義次郎関係文書」として4月の開館にあわせて公開しました。
   これら当館所蔵資料は、公文書管理条例に基づく利用請求権の対象となり、本県のインターネットサービス(しがネット受付サービス)やファックス、郵送により利用請求をしていただけます。請求の受理から30日以内に利用審査を行った上で、利用決定を行います。なお、目録の利用区分が「公開」の資料であれば、簡易閲覧として申請当日に利用できます。

3.検索システムとデジタルアーカイブの導入
   開館にあたり、歴史公文書等管理システムを導入し、確実かつ効率的な文書の管理と利用者の利便性の向上を図りました。同システムでは、目録の検索とデジタルアーカイブの閲覧が可能です。
(1)目録の検索
   これまで、目録のキーワード検索は県政史料室内の端末でしかできず、ホームページ上での公開はエクセル形式であるなど、利便性に欠く面がありました。公文書館の開館にともない導入した歴史公文書等管理システムでは、インターネット上でキーワードによる横断的な検索をはじめ、作成日や差出人、受取人等による詳細検索(件名単位)や、資料分類による階層検索(簿冊単位)も可能となりました。検索システムで特定した資料は、画面上の利用請求ボタンを押すと蓄積され、一覧表として抽出することができます。利用請求書を提出する際は、別紙としてこの表を添付することで、簡単に書類の作成が可能となります。
   当システムは、国立公文書館デジタルアーカイブの横断検索機能とも連携しています。

デジタルアーカイブの検索結果画面

デジタルアーカイブの検索結果画面

(2)デジタルアーカイブ
   さらに、ニーズが高い資料のデジタル画像を、デジタルアーカイブとしてインターネット上でご覧いただけます。これらの画像は、特段の断りがない限り当館に申請することなく自由に利用いただけます。
   まずは、旧村絵図と社寺明細帳を開館にあわせて公開しました。この旧村絵図は、堤防や橋梁、道路などの長さが記されたもので、当館では全10簿冊を所蔵しています【明へ1~9、68】。明治6年(1873)12月8日、県令松田道之の指示により各村が作成したもので、施設ごとに「自普請所」「御普請所」と、改修費を官民いずれが負担するか、細かく注記されています。
   一方の社寺明細帳は、明治期から終戦直後にかけて用いられた神社や寺院等の公的管理台帳です。祭神・本尊や由緒、境内・建物の規模などが記載されており、神社や寺院の歴史を知るため、これまでも研究者のみならず県民の方にも広く利用されてきた文書です。今回は、除籍簿を含む46冊を公開しました。デジタルアーカイブでは、通常のキーワード検索に加え、地域ごとの階層検索も可能です。たとえば、「県社」→「滋賀郡」→「坂本村」と選ぶことで、坂本村にある県社を検索することができます。
   ほかの資料も順次デジタル化作業を進め、より充実したデジタルアーカイブを提供していきたいと考えています。
   

4.企画展示とデジタル展示
   当館では、県政史料室の頃から、所蔵資料について広く知っていただくため、年に4回程度の企画展示を行っています。公文書館となってからの第1回目は、「公文書管理の源流を探る-大正期の文書事務改革-」と題して、本県の公文書管理の歴史を振り返りました。現在は「活躍する外国人―開化する滋賀―」と題した展示(令和2年6月29日~9月24日)を開催しています。

第1回企画展示ポスター

第1回企画展示ポスター

企画展示の様子

企画展示の様子


   また、公文書館ホームページ上では、新たに「デジタル展示」として、これまで行ってきた展示を資料の画像や解説とともに紹介しています。ここで紹介した資料は、検索システムの目録情報と紐づけられており、そのまま実際の資料を利用請求することもできます。「デジタル展示」では、公文書館にどのような資料があるのかわからない場合でも、関心のあるテーマから資料を探す参考にしていただくことができますので、ぜひ御活用ください。

5.おわりに
   公文書館条例では、御紹介した特定歴史公文書等の収集・保存、展示や利用に関する業務の他にも、講演会・講習会等の開催や、調査研究等が業務として定められています。また、公文書管理条例では、知事は特定歴史公文書等の学校教育における活用、図書館・博物館等との連携、市町への情報提供・助言・その他の支援を行うよう努めることが規定されています。県政史料室のときと場所こそ変わりませんが、公文書館としての機能をしっかりと担い、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える県民共有の知的資源」として、みなさまにより一層利活用していただけるように努めてまいりますので、引き続きの御支援、御利用をよろしくお願いします。

データシート
機関名: 滋賀県立公文書館
所在地: 〒522-8577  大津市京町四丁目1番1号(滋賀県庁新館3階)
電話/FAX: 077-528-3126/077-528-4123
Eメール: archives■pref.shiga.lg.jp (■を@に替えてください。)
ホームページ:https://archives.pref.shiga.lg.jp
交通: (1)JR大津駅から東へ徒歩5分 (2)京阪電鉄島ノ関駅から山側(南南西)へ徒歩5分
開館年月日: 令和2年4月1日
設置根拠: 滋賀県立公文書館の設置および管理に関する条例
組織: 総合企画部―公文書館
人員: 館長1名、副館長1名、副主幹1名、公文書館専門職員1名(会計年度任用職員)、歴史公文書専門職員3名(会計年度任用職員)
建物: (1)書庫、(2)事務室、(3)閲覧スペース(展示スペースを含む)
所蔵資料: (1)特定歴史公文書、(2)行政資料、(3)寄贈文書
開館時間: 9:00~17:00
休館日: 土・日・祝日、年末年始(12月29日~1月3日)
主要業務: ・歴史公文書等の収集・保存
                ・特定歴史公文書等(所蔵資料)のレファレンス
                ・特定歴史公文書等の普及事業