会期 | 平成25年10月5日(土)〜10月24日(木) |
日時 | 平成25年10月19日(土)14時〜15時 |
演題 | 浮世絵で見る武士の世界 |
講師 | 堀口茉純氏(タレント・作家) |
場所 | 国立公文書館(千代田区北の丸公園3-2)4階会議室 |
秋の特別展は、平成21年春の〈旗本御家人〉、22年春の〈旗本御家人II〉に続き、〈旗本御家人III〉と題して、江戸時代の幕臣である旗本御家人に関わる資料を展示します。
展示は、まず大奥女中や大奥で生まれた若君姫君にお乳をさしあげる「御乳持」(おちもち)と呼ばれる幕臣の妻たちに注目。続いて幕府の医療を担った奥医師や天文観測をもとに暦を作成した天文方、書物保存のために複本の作成や修復作業を行った書物方の活動などを取り上げます。天文方の資料としては『貞享暦』(重要文化財)を展示。このほか小性・小納戸など将軍の身近に仕えた人々の仕事ぶりを伝える資料も。最後のコーナーでは、幕末に京や大坂に出張滞在していた幕臣が江戸の同僚や家族にあてた手紙と、金座で行われた金貨鋳造の詳細を描いた絵巻をご覧いただきます。まさに「お仕事いろいろ」。
幕臣の中には、文学・芸術の世界ですぐれた才能を発揮した人もすくなくありません。活躍の舞台はさまざまですが、今回は、狂歌・音曲・園芸の世界から、それぞれ名人大家と讃えられた人物を紹介します。役人の世界に身を置きながら、精力的に趣味を極めた彼らによって江戸文化はさらに豊饒で多彩なものとなりました。
『女中帳』(じょちゅうちょう)
大奥で若君姫君にお乳を差し上げた幕臣の妻たちや、将軍の子作りの世話をした「御伽坊主」ほか、大奥の出産と哺育にかかわった女性たちが登場します。大奥の本領は、将軍のお世継ぎをもうけ、育てること。大奥の最も重要な仕事を照らし出す貴重な記録です。
『吉宗公御一代記』(よしむねこうごいちだいき)
中風で倒れ、半身不随と言語障害の症状が残った大御所吉宗の日々を、近臣の小笠原政登が記録した希有な資料。吉宗はどのように介護され、なにを語ったか。八代将軍徳川吉宗の老後があざやかによみがえります。
『草木錦葉集』(そうもくきんようしゅう)
19世紀の江戸。成熟しきった文化は、園芸の世界にも新たな嗜好を生みました。
彩り豊かで美しい花だけでなく、斑入りや変わった形の草木を尊ぶ「奇品」嗜好が流行。奇品の図録が刊行され、品評会が催されました。「草木錦葉集」もそんな奇品図録のひとつ。編者は水野忠暁。旗本であるとともに江戸園芸文化の旗手でもありました。
『貞享暦』(じょうきょうれき)【重要文化財】
幕府の碁所の家に生まれた安井算哲(のちの渋川春海)は、幼い頃から天文学・暦学に興味津々。中国の授時暦を研究するとともに日本各地で観測を試み、苦難の末に新しい暦を作成しました。貞享2年(1685)から採用されたこの暦が「貞享暦」。貞観4年(862)に宣明暦が採用されて以来、実に823年ぶりに改暦を実現した算哲は、幕府の初代天文方に任命されました。
『金吹方之図』(かねふきかたのず)
文政年間(1818〜1830)に江戸の金座で小判・二分金などの金貨が鋳造される様子を描いた絵巻。金貨の材料となる地金や金に混入する「差銀」の製造から、各種金貨の成形作業まで、50近い作業の図が収められています。ほかに勘定奉行が見廻りに訪れる場面や、作業を終えて退出する職人たちに対して厳しいチェックが行われている場面も。金貨改鋳で活気を呈する金座内の様子が活写されています。