召集―帝国議会

33.憲法改正草案に関する想定問答(第1輯)

寄贈00876100

34.憲法改正草案に関する想定問答(第2輯)

寄贈00877100

35.憲法改正草案に関する想定問答(第3輯)

寄贈00878100


写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

枢密院における審議が進むなか、法制局は来るべき第90回帝国議会を意識して説明資料の準備にとりかかっていました。資料は、法制局が作成した想定問答です。

国体と主権に関わる問題は枢密院でも論議の中心であり、「国体」という国の本質的なかたちが主権の所在によって決まるという従来の説明は、終戦以来「国体護持」を旗印にしてきた保守派から反発を受ける可能性がありました。一方で、逆に「国体」が変わらないという説明をすれば社会党や共産党といった革新勢力や連合国に日本が再び反動化したとの印象を与えるおそれがありました。金森徳次郎は同局の佐藤達夫次長、井手成三第1部長らと枢密院での審議用に作成された想定問答を素材として、連日研究を進めました。

36.憲法改正草案に関する想定問答 増補

寄贈00880100

写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。

論点は主権の問題以外にも数多く残されており、想定問答には、天皇の国事行為について第4条の「天皇は、この憲法の定める国務のみを行ひ、政治に関する権能を有しない」という規定や、第6条の内閣総理大臣の任命に関わる規定に関し、「レフエレンダム」(国民投票)や「国民解職」(リコール)などについて対話形式で議論をした経過が記されています。

金森と法制局のスタッフの再検討の結果として、6月には憲法改正草案に関する想定問答が改めて整備されます。特に重点が置かれていたのは国体と主権の所在に関わる部分と、戦争の放棄に関わる部分でした。なかでも目をひくのは、国民統合の「象徴」としての天皇に対する説明です。金森は天皇を国民の「あこがれの中心」としてその敬愛の念を一身に集める存在であるとする答弁をたびたび行っていますが、そのもとになった想定問答も確認することができます。

その原案を作成した佐藤達夫によれば、多くの大臣が議会での答弁ではあらかじめ部下が準備したメモを片手に、あるいは介添えの政府委員の耳打ちを頼りとするのが普通であったところ、金森は改正案以外にメモも持たず、そばの政府委員がうなずきながらその答弁に聞きほれるほどであったといいます。