コロナ禍における研修の実施~令和2年度研修を振り返って~

国立公文書館
統括公文書専門官室 研修連携担当

はじめに
  世界中の人々がマスク生活を余儀なく強いられた1年でしたが、国立公文書館(以下「館」という。)統括公文書専門官室研修連携担当(以下「担当」という。)は、オンライン研修の導入などコロナ禍における初づくしの研修実施に尽力した1年でした。
  館が実施する研修は、これまで、講師と受講者が一堂に会した対面研修で実施していましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の国内発生状況を踏まえ、軒並み延期・変更を余儀なくされました。
  本稿では、担当が運営する研修をどのように開催、実施したのか、その成果や課題等を紹介・共有したいと思います。

研修計画の変更
  令和2年度研修計画(アーカイブズ研修、公文書管理研修)は、令和2年3月23日に作成・公表しましたが、4月7日の緊急事態宣言の発出を受けて、当面の間、研修の実施を見送ることとしました。その後、5月25日の宣言解除を受けて、6月10日に改正令和2年度研修計画(公文書管理研修)(表1)を作成・公表し、これに基づき、7月下旬から後ろ倒しして開始しました。なお、アーカイブズ研修は、8月以降の開催予定であったため、当初の計画どおり(表2)としました。
  また、実施にあたっては、新型コロナウイルス感染防止対策(①座席間の間隔確保のための会場収容定員の半数以下での小規模開催による実施及び飛沫防止アクリルパネルの設置、②来場時の受講者に対する検温・手指消毒・マスク着用の協力依頼、③会場内の定期的な換気・消毒・清掃の実施)を施した上で、サテライト会場の設置を含め、当初計画と同数の実施回数としました。なお、会場確保の調整の結果として、文書管理実務における初任者を対象にした公文書館理研修Ⅰより先に、専門的な事項を内容とする公文書管理研修Ⅱから始まることになりました。[1][2]
  その後、小規模開催や各機関における職員の移動制限の措置により、受講者枠や受講環境を十分確保できていない状況を補うためにオンライン研修の検討に至りました。

(表1)令和2年度研修計画(公文書管理研修)

(表1)令和2年度研修計画(公文書管理研修)

(表2)令和2年度研修計画(アーカイブズ研修)

(表2)令和2年度研修計画(アーカイブズ研修)


公文書管理研修Ⅰ・Ⅱでのオンライン方式の導入
  オンライン方式の導入の検討に当たっては、Skype、Zoom、Webex等、様々なweb会議システムがあるなかで、普遍的な受講環境が提供可能なツールか、対面方式と同様の方法でオンライン研修を実施可能か等、考慮すること・判断すること等が多数ありました。公文書管理研修Ⅰ・Ⅱでは、討論等を実施しない座学研修が主であり、必ずしも双方向型である必要はないこと、誰でもアクセスが可能であること等といった担当の要望と委託業者からの提案に一致したYouTube LIVE配信)(非公開)を、12月の公文書管理研修Ⅱ、2月の公文書管理研修Ⅰ(行政機関向け、独法等向けの各回)で、会場受講と併せて実施しました。12月の公文書管理研修Ⅱでは、会場受講69名、オンライン受講206名でしたが、2月の公文書管理研修Ⅰ(行政機関向け、独法等向けの各回)は、緊急事態宣言中でもあり、オンライン受講の促しも行ったこともあり、会場受講24名、7名、オンライン受講529名、505名となりました。今回は、受講希望者に十分な受講枠を提供できない状況を解消するために行った措置でありましたが、地方支分部局など遠地に勤務する職員に対しても、サテライト研修の実施に加え、オンライン研修の方法で受講機会を提供できたことは多様な受講機会の提供をできた成果と考えています。

アーカイブズ研修Ⅱでのオンライン方式の実施
  一方、アーカイブズ研修Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは、座学のほか、討論形式の研修内容が含まれていることから、会場での研修で実施していましたが、令和3年1月に予定していたアーカイブズ研修Ⅱは、緊急事態宣言の発令を受け、一旦見送りの判断を取りました。しかし、開催できる見込みが立たないことから、基調報告や5つの公文書館等の事例報告を行う講師各位においては、既に報告準備が整っていたことや、年度内開催を希望する声もあったことから、会場を設けず、講師各位からの報告をZoomにてライブでのオンライン配信を行い、講義終了後には質疑応答を受け付ける手法で実施しました。本来ならば、報告した公文書館等の取組の情報を基に、受講者間の討論により問題点の整理や解決に向けた方向性を提示するところ、今回は、討論の場を用意できなかったことは残念ではありますが、一堂に会さずともできるツールがあることを活用し、同じ実務上の問題点を抱える館同士で研修の枠外において連絡・連携を図っていくことも今後検討に値すると考えています。

終わりに
  令和3年度においては、研修受講希望者の受講できる場を確保し、受講しやすい環境を整えるとともに、研修効果を高めるため、公文書管理研修及びアーカイブズ研修では、会場研修とオンライン研修を組み合わせながら、公文書管理の進展などに応じたカリキュラムで実施を予定しています。今後とも当館主催の研修をご活用いただければ幸甚です。

〔注記〕
[1] アーカイブズ77号「新型コロナウイルス感染症拡大防止に係る国立公文書館の対応」(https://www.archives.go.jp/publication/archives/no077/9887)を参照されたい。
[2] 当館で令和元年度から実施しているサテライト研修は、東京会場で行われる講義の様子をサテライト会場(仙台、大阪、福岡)へ同時配信し、サテライト会場からの質疑応答にも対応したものである。