国際アーカイブズ週間2020について

国立公文書館 統括公文書専門官室
公文書専門官 渡辺悦子

はじめに
   国際公文書館会議(International Council on Archives、以下ICA)では、6月9日を含む週を「国際アーカイブズ週間(International Archives Week)」と位置づけている。2008年に始まって以来、その取組は徐々に発展し、近年は世界中のアーキビストやアーカイブズの利用者等が国を超えて交流し、また記録を保存し利用を図ることの大切さを人々に呼びかける各種イベントが世界各地で開催されている。
   2020年は、新型コロナウィルス 感染症の拡大防止のため、人々が一堂に会するイベントの開催が世界的に難しくなるなか、ICAのほか各国の機関においても工夫を凝らし、困難を乗り越えて様々なイベントが行われた。本稿は、これらの活動の一部を、当館の取組とあわせて紹介するものである。

1.国際アーカイブズ週間について
1.1 概要
   国際アーカイブズ週間は、翌2008年がICA創設60周年にあたることを機に、2007年11月のICA年次総会において、ICA設立日にあたる6月9日を「国際アーカイブズの日(International Archives Day)」と定めたことにはじまる[1]。以後、年に一度、記録やアーカイブズへの関心を高める日と位置づけ、この日を中心に関連イベントを開催する動きは世界各国に広がっている[2]。
   2016年のICAソウル大会開催年からは、「国際アーカイブズの日」は、その年に開催されるICAの大会(Congress、4年に一度開催)または年次会合(Annual Conference)の広報と一体化し、大会/年次会合のカンファレンス・ロゴをあしらったコミュニケーション・ツールキットがICA事務局より配布されるようになった(図1参照)。こうしたツールキットの配布とあわせ、近年では、各機関で開催されるイベントを双方向交流マップ(Interactive map)へ登録することや、取組の様子等についてハッシュタグを付したキーワード(#IAD2016など)とともにTwitterやFacebook等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で発信することを呼びかけるのが恒例となっている。
   このようなICAの積極的な普及活動ともあわせ、開催される関連イベントも、2016年は全世界で50件 [3]程度であったものが、2017年は242件、2018年は187件、2019年は243件[4]という推移を見せており、確実に定着しつつあることがわかる。
   2019年以降、ICAは「国際アーカイブズの日」を含む週を「国際アーカイブズ週間(International Archives Week)」とし、1週間にわたって、社会における記録やアーカイブズの大切さを啓発する取組が行われるに至っている。

図1 カンファレンス・ロゴと一体化した「国際アーカイブズの日/週間」にかかるコミュニケーション・ツールキット。左から、2016ソウル大会、2017メキシコシティ年次会合、2018ヤウンデ年次会合、2019アデレード年次会合。

図1 カンファレンス・ロゴと一体化した「国際アーカイブズの日/週間」にかかるコミュニケーション・ツールキット。左から、2016ソウル大会、2017メキシコシティ年次会合、2018ヤウンデ年次会合、2019アデレード年次会合。



図2 国際アーカイブズ週間2020のデザイン

図2 国際アーカイブズ週間2020のデザイン

1.2 国際アーカイブズ週間2020
   ICAによる2020年の国際アーカイブズ週間のプロモーションは、同年11月に開催が予定[5]されていたアブダビ大会のテーマ「知識社会に力を与える(Empowering Knowledge Societies)」のもと、6月8日(月)~14日(日)の期間で、例年どおり展示やワークショップなどの各種イベントの開催が呼びかけられていた。また、アブダビ大会をイメージしたカンファレンス・ロゴを使用した、コミュニケーション・ツールキットも同様に準備されている(図2)。
   しかし、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大に伴い、人々が一堂に会してのイベントの開催が難しくなったことから、ICAは対応を変更し、オンラインでも可能な取組に切替えて実施されることになった[6]。4月24日、David Fricker ICA会長(オーストラリア国立公文書館長)のビデオメッセージにより[7]、2020年における国際アーカイブズ週間の取組の全面的なオンライン化が発表され、5月6日には、ICA事務局のオンラインによる立ち上げイベントとwebサイトにより、詳細な実施要領[8]がアナウンスされた。
   呼びかけられた主な取組は、以下の4件である。
(1) SNSキャンペーンの実施:「#AnArchiveIs」のハッシュタグとともに、各自にとっての「アーカイブとは」を発信[9]
(2) オンライン・イベントの開催(「#IAW2020」のハッシュタグをつけて発信)と、イベントマップ[10]への登録
(3) ICAブログへの投稿
(4) デジタルマップ「アーカイブズはすぐそばに(“Archives are accessible”)」[11]への登録
   なお、SNSキャンペーンやオンライン・イベント、ICAブログについては、以下のように日ごとにテーマが設定され、それらテーマに基づく発信が呼びかけられた。

〔テーマ一覧〕

開催日 テーマ
6月8日(月) 開会のあいさつ
6月9日(火) #AnArchiveIs / 持続可能な開発目標(SGDs)
6月10日(水) デジタルデータの長期保存
6月11日(木) 証拠と信頼
6月12日(金) 気候変動と文化遺産
6月13日(土) オープン・スタンダードとオープン・ツール
6月14日(日) 専門職の未来

 

2.国際アーカイブズ週間中のICAの取組
2.1 SNSによる活動
   ICAが独自のアカウントを持っているSNSにはTwitter、Facebook、LinkedIn及びYoutube等があり、日頃からイベントの告知や各国の機関の活動や出版物等の紹介が行われているが、本稿では特に、TwitterとFacebookに限って紹介することとする。
   前述のとおり、国際アーカイブズの日/週間において、ICAではこれまでもSNSを使った広報活動を行ってきたが、今年は取組の実施が全面的にオンライン化することを受け、上述の4月24日のFricker会長による告知以降、ほぼ連日、英語・フランス語・スペイン語の3か国語により、アーカイブズの重要性を喚起するバナーの投稿、期間中の開催イベントに関するプロモーション、また「#AnArchiveIs」への投稿の呼びかけが行われた。4月24日から同週間の終了14日の翌日[12]までのICAによるSNSへの投稿数は、Twitterで全662ツィート(リツィートを含む)、Facebookで全337ポスト(シェアを含む)に及んだ。TwitterがFacebookのほぼ倍になっているのは、その多くが、他機関によるTwitterへの投稿をICAがリツィートしたことによるものである。各機関における広報ツールとして利用されているSNSは、現状ではFacebookよりもTwitterの方がはるかに多いことが見て取れる。なお、6月8日~14日までの同週間期間中のICAのアカウント上に投稿された内容を、ICAによるイベント告知、各国の「ポスター」(後述)の紹介、動画のシェア、各機関のシェア/リツィートに分けてカウントした結果は以下のとおりである[13]。

Twitter

Twitter

Facebook

Facebook


   また、ICAでは、同週間の期間中に個人や機関による様々な「#AnArchiveIs (アーカイブとは)」の意見をSNSで発信してもらうため、自由にカスタマイズして利用可能なテンプレートを作成、画像シェアサービスの「Trello」上で公開した[14]。それらを利用した画像(通称「ポスター」)がタイムラインに次々に流されるのを受け、各国のアーキビスト達も、様々な「アーカイブとは」を独自に作成・投稿を行い、ICAが紹介あるいはリツィート/シェアしたものは80[15]を超えた。
   なお、この#AnArchiveIs(スペイン語、フランス語版のハッシュタグ含め)の投稿は、ICA事務局によると、4月24日の告知後からあわせて4,244件におよび、期間中のICA webサイトへのアクセスも、前年度の3倍となる約55,000ビューをカウントしたとのことである[16]。

ICAによる「アーカイブズとは」のテンプレートをもとにした「ポスター」

ICAによる「アーカイブズとは」のテンプレートをもとにした「ポスター」

(同左)

(同左)


ベトナム国家アーカイブズ局

ベトナム国家アーカイブズ局

スヴェトラーナ・パンフョーロヴァ氏(ロシア)

スヴェトラーナ・パンフョーロヴァ氏(ロシア)


アルゼンチン国立公文書館

アルゼンチン国立公文書館

インドネシア国立公文書館

インドネシア国立公文書館


2.2 国際アーカイブズ週間2020ウェビナー・プログラム
   ウェビナー(Webinar)とは、ウェブ(Web)とセミナー(Seminar)を合わせた言葉で、オンライン上で動画を使って行われるセミナーを言う。国際アーカイブズ週間中、ICAは他機関との共催で以下のとおり計7回に及ぶウェビナーを実施した。本稿では、英語によって開催されたもののうちの3件を紹介する。なお、各ウェビナーはICAのYoutubeチャンネル上で視聴可能である(表内の各「タイトル」のリンク先) 。

開催日 タイトル 共催
6月8日(月) ワークショップ「ラジオ・TVアーカイブズにおける仮想技術」の経験を再訪する フランス国立視聴覚研究所
6月9日(火) アーカイブズの社会的機能 ICAラテンアメリカ地域支部
AIとアーカイブズ 図書館情報資源振興財団「最先端技術・ビッグデータとアーカイブズ」プロジェクト[17]
6月10日(水) 私がデジタル保存で知りたいことは… デジタル保存協議会(Digital Preservation Coalition)
6月12日(金) 気候変動と文化遺産:いますぐ行動をはじめよう! 国際記念物遺跡会議(ICOMOS)[18]及び国際図書館連盟(IFLA)
6月13日(土) ソーシャル・ネットワークをアーカイブする:オープンデータと社会的アーカイブズ カタルーニャ・アーキビスト/レコードマネジャー協会
6月14日(日) 新規専門職 サンデーコーヒー(と紅茶) ICA 新規専門職プログラム

 

2.2.1 6月9日:「AIとアーカイブズ」(Anthea Seles ICA事務総長)
   Seles ICA事務総長が、イギリス国立公文書館でデジタル・移管チームを率いていた際に行ったAI(人工知能)に関するリサーチ等をもとにしたプレゼンテーション[19]。AI導入により起こり得る、情報専門職が認識しなければならない様々な点を提起するもので、1) 記録の大量作成により評価選別や機密情報の審査に、今後AIの導入は不可欠となること、2) 複雑化する社会において政府が意思決定にAIを使用する可能性が出てくるなか、AIの学習に使用したデータによって、社会に既存の偏見や不平等が反映される危険性があることがわかっており、アカウンタビリティの確保のため当該データそのものから保存する必要があること、また、3) 大量の情報が公開されるなか、分析のため研究者側がAIを使うことで、情報と情報が結び付けられ思わぬ形で秘匿情報が公になってしまう可能性があることなどが述べられた。
   講演後は、参加者とのQ&Aセッションが設けられ、今後アーキビストがAIに関わる際に必要な知識や能力は何か、アーキビストはAI導入に当たり政府や組織にどのように助言すべきかといった質問が寄せられた。前者には、我々はエキスパートになる必要はないが、基本的な情報処理、データ・サイエンスや統計に関する知識のほか、使用する情報/データに対する深い理解や当該ツールが及ぼす影響を見通す能力は必要になること、また後者の問いには、政策決定においてまだ実験的な技術であるAIを使用することの問題と、それに対するアカウンタビリティを果たさなければならないのは政府側という認識を持たせること、その上で、行った手続きや経過の記録、使用したデータとアルゴリズムを確保することの大切さ等が説明された。

2.2.2 6月10日(テーマ:デジタルデータの長期保存):「私がデジタル保存で知りたいことは・・・」
   デジタル情報の保存を行っている諸研究機関が加盟する国際的な非営利団体、デジタル保存協議会(DPC)に加盟する機関やICAから5人[20]の実務担当者を招き、視聴者からの問いに答える機会とするイベントである。
   まず、5人の実務担当者がデジタル保存に関わった経緯が紹介され、誰もが情報学をバックグラウンドに持っていないなか、技術的知識がないことを不安に思いながらも、現実的な解決に向けた実践的な課題に焦点をあてるようにしたこと、ひとりの人間が全てのスキルを持って取り組むというよりは、専門家とのコミュニケーションを大切にしながら様々なスキルを持った人で集まってチームを作ることが必要であること、また100%整備されたツールや予算、環境を必要とするベストプラクティスを目指すのではなく、人材や予算とリスクのバランスを考慮した上での、その機関にとって「十分なこと(doing enough)」の実践が重要であることが説明された。
   全てをPDFで保存すれば解決するのでは、という問いには、スプレッドシートで作成したものはスプレッドシートにしかないメタデータやユーザエクスペリエンスがあり、将来的によりよい保存方法が出てくる可能性もあるため、オリジナルの形式は保存する必要があるとされた。また電子的に作成された記録の真正性を保つためにはどのようなツールが必要かとの問いには、デジタル保存はツールだけが問題になるのではなく、記録が作成される環境から、保存に至るプロセスや手続き、そして記録を保存する方針等の総体によって確保されるものと回答があった。さらに、日々進化する技術に対応していくためには、ネットワークを作り、コミュニティに属して学び続けることの重要性が助言されていた。
   その他、ステークホルダーへの働きかけやIT技術者との交渉の仕方など、様々な問いがあったが、時間内で回答できなかったものについては、DPCによるブログで後日回答されている[21]。

2.2.3 6月12日(テーマ:気候変動と文化遺産):「気候変動と文化遺産:いますぐ行動をはじめよう!」
   ICA(Emilie Gagnet Leumas、ICA専門家グループ「危機管理と防災」議長)、ICOMOS(Andrew Potts、気候変動と文化遺産ワーキンググループ)、IFLA(Stephen Wyber、ポリシー/アドボカシー担当マネジャー)からそれぞれ専門家を招き、各分野における気候変動と文化遺産についての報告とディスカッションが行われたイベントである。
   ICAのLeumas氏からは、防災対策に重要な4つの要素とそのサイクルとして、対応→復旧→(リスク)緩和→準備/対策があり、通常は災害が起きてからの「対応」から始まることになるが、我々は「(リスク)緩和」、すなわちリスク管理から始めるべきであること、災害に当たって最初の対応者になる消防や防災関係者とは日頃から交流し、所蔵品の内容や重要性を共有しておくことの重要性等が述べられ、「準備して生きる(Live prepared)」ことが大切とした。
   ICOMOSのPotts氏は、ICOMOSは近年の気候変動による文化遺産の被害が拡大していることを受け、気候変動を人々や文化遺産に対する最も急速に拡大する脅威と位置づけ取組を開始しており、文化関連施設は、それに対する活動を自身の中核的使命ととらえなければならないとした。また、国、自治体、民間などの機関のレベルを超えて、問題の共有や連携した活動のため様々な文化関連機関が参加する“Climate Heritage Network”の紹介があった。
   IFLAのWyber氏からは、文化遺産セクターは気候変動の被害者と考えがちだが、我々は「変化へのベクトル」になれるとして、自機関の持つ様々な過去の記録(近年、気象データの残っていない地域の様子を伝える古い旅行記や航海日誌、古地図等が注目を集めているという)を気候変動対策に積極的に「投資」する必要があること、また地域単位に所在する図書館を緑化活動のセンターとして利用する「緑の図書館活動(Green Library Movement)」の取組などが紹介された。
   視聴者より、自然災害のリスクを減らすにはどうすればよいか、グッドプラクティスはあるかといった質問が寄せられるなか、未来に起こる災害は過去に起こったものとは異なる可能性があることから、自機関の所在地や建物周辺の気候モデルのダウンスケーリング(現在の気候予測は広域データによるものが多いため、より狭い地域での気候予測が課題になっている)を行うことが必要であり、専門機関との連携が重要とされた。

2.3 その他の取組
   上記以外でも、ICAでは国際アーカイブズ週間の各曜日のテーマにあわせたブログ記事が連日更新され、ICA会長はじめとするICA役員や、Laura Millarといった世界的研究者が寄稿し、期間中の投稿は、26本の記事に及んだ。また、各国で開催されたオンラインによるイベントマップには、134件のイベントが登録された。なお、デジタルマップ「アーカイブズはすぐそばに(“Archives are accessible”)」は、2020年7月時点で779機関が登録している(日本からは11機関が参加)。

図3 日本語版コミュニケーション・ツールキット

図3 日本語版コミュニケーション・ツールキット

3.国立公文書館の取組
   当館では、2008年に「国際アーカイブズの日」が始まった年から、普及ポスター[22]の作成や、記念大会を開催[23]して以降、毎年「国際アーカイブズの日/週間」記念講演会を、国や地方自治体の公文書館の館長が一堂に会する「全国公文書館長会議」にあわせて開催するなどの取組を行ってきた。
   2020年は、新型コロナウィルス感染症拡大に対する対応[24]により、2月末より臨時休館の措置をとっていた当館でも、「国際アーカイブズ週間」記念講演会の開催が中止されることになったが、記録やアーカイブズを保存し利用を図ることの大切さを考える年に一度の機会と位置づけ、ICA事務局と連携しながら、積極的にSNSを活用して取組を行っていくこととした。
   まずは今年の国際アーカイブズ週間がオンラインによって開催されることを広く伝えるため、4月24日に公開されたFricker ICA会長のビデオメッセージに日本語字幕を付け、当館の“Youtubeチャンネル”での発信をした[25]。続いて、同週間の開催要領を日本語に翻訳し、当館HPに掲載するとともに、ICA事務局に許可を得て、今年のコミュニケーション・ツールキットの日本語版を作成し(図3)、ダウンロードして利用してもらうこととした。
   また、当館にとっての「アーカイブとは」を#AnArchiveIsのハッシュタグとともにSNSで発信するため、「ポスター」の作成を行った。これにあたっては、ICAが提供している「#AnArchiveIs」のロゴをそのまま使うよりは、ロゴ自体を日本語にしたデザインを独自に作成[26]し、ICAのテンプレートの日本語版を作る試みを行った(図4)。加えて、ICAのテンプレートが欧米圏のアーカイブズをイメージする図柄が多かったため、当館の書庫の写真を利用した独自の「ポスター」も作成した(図5)。
   さらに、国際アーカイブズ週間期間中の取組としては、最終日のテーマ「専門職の未来」にあわせ、当館の加藤館長からのビデオメッセージを公開した。メッセージは、今年から始まる「認証アーキビスト」の仕組みを紹介するとともに、新型コロナウィルス感染症による困難や課題をこれからも互いに連携して乗り越えていくことを伝えるものである。ビデオメッセージは英語字幕を付けて発信しており、当館のYoutubeチャンネル上で視聴可能である。

図4 当館の52/8付SNS投稿ポスター

図4 当館の5/28付SNS投稿ポスター

図5 当館の6/3付SNS投稿ポスター

図5 当館の6/3付SNS投稿ポスター


おわりに
   ICAによる国際アーカイブズ週間の取組は、これまでもSNSを利用する形で進められてきたが、非常事態における全面的オンライン化の結果とはいえ、様々な情報がいかにSNS上に集まり、拡散し、そして国を超えた交流がたやすくなっているかをあらためて見たように思う。新型コロナウィルス感染症の世界的拡大に伴い、アーカイブズ機関や文化関連機関におけるオンラインでの情報発信は加速度的に進んでいる。今後ますますその活動が広がっていくことが予測されるなか、各機関がSNSを広報ツールとして持ち、効果的に利用することは、より常態化していくだろう。
   当館の発信を受けて、国内の複数のアーカイブズ機関や地方自治体の公文書館が、日本語版のコミュニケーション・ツール等を利用して情報発信をしてくださった。国際アーカイブズ週間の普及は、国内ではまだ一部にとどまっているが、この先社会に日常が戻ってからも、オンラインによる活動の呼びかけは、今後も引き続き努めていきたいところである。

〔注記〕
[1] 国際アーカイブズの日の設置については、2004年ICAウィーン大会にてUNESCOにその設置を求めることが決議されたが、翌2005年のユネスコ総会で決定されたのは「世界視聴覚遺産の日」(10月27日)のみであった。保存への関心を喚起すべき記録は視聴覚記録にとどまらないことから、ICAは広くアーカイブズ一般に対する関心を呼び起こすための包括的な記念日として、独自に「国際アーカイブズの日」を設置することに至ったという。(ICA webサイト“About the International Archives Day”:https://www.ica.org/en/about-international-archives-dayより。access: 2020/07/22)
[2] ICAのwebサイトで紹介される、毎年の国際アーカイブズの日にかかるイベント開催状況を追ってみると、2011年頃までは10に満たない国々での開催例が掲載されるのみだが、2012年は17か国、2013年は25か国と事例が増えていき、さらに2015年には26か国語による開催の呼びかけが掲示されるにいたっている(https://www.ica.org/en/international-archives-day-2009など。access: 2020/07/22)。なお、2015年頃までの国際アーカイブズの日にかかるICAの取組は、中山貴子「世界の流れから―ICAによる連携の取組み」(情報誌『アーカイブズ』54号、http://www.archives.go.jp/publication/archives/wp-content/uploads/2015/03/acv_54_p01.pdf access: 2020/07/22)に詳しい。
[3] ICA webサイト“IAD 2016 Events organized”: https://www.ica.org/en/iad-2016-events-organized?page=1(access: 2020/07/22)
[4] それぞれ、各年の双方向交流マップより(https://www.ica.org/en/international-archives-day-programme-s-mapなど。access: 2020/07/22)。
[5] 2020年11月15日~20日の開催を予定していたが、2021年10月19日~22日への延期が決定している。(https://www.ica.org/en/icaabudhabi2020-congress-postponed, access:2020/07/22)
[6] これに先立ち、ICAでは、現実のアーカイブズ施設は休館中でも、記録資料へのアクセスは可能であることをつたえるため、オンラインでアクセスできるツールを持つ機関をデジタルマップ上で紹介する“Archives are accessible”(アーカイブズはすぐそばに)ページを開設。https://www.ica.org/en/what-archive/archives-are-accessible-search-the-map?fbclid=IwAR3DmGhSsMueF56M9N_IaJgbRtrMW5avwCM5SZ1FHkgjuTwIEC2Dm6IHDhY (access: 2020/07/22)
[7] フリッカーICA会長のビデオメッセージは、日本語字幕付きで当館のYoutubeチャンネルから視聴可能。https://www.youtube.com/watch?v=A8kzHHrxcAo (access: 2020/07/22)
[8] “International Archives Week: 8-14 June 2020” https://www.ica.org/en/international-archives-week-8-14-june-2020 (access: 2020/07/22)。なお、このページは発表当時のページとは情報がすでに更新されている。
[9] これにあたりICAが参考にしたのが、ICAラテンアメリカ地域支部(Asociación Latinoamericana de Archivos、ALA)の取組である。国際アーカイブズの日を記念するために2016年からスペインを含むALA加盟各国で開催されていたもので、「#UnArchivoEs(アーカイブズとは)」とともに、各自のアーカイブズへの思いをSNSで発信するというものである。“Día internacional de los archivos”: https://www.alaarchivos.org/dia-internacional-archivos/ (access: 2020/07/22)。ICAでは、「#AnArchiveIs」に加え、このスペイン語による「#UnArchivoEs」、フランス語の「#UneArchiveCest」の3つのハッシュタグを用意し、発信を呼びかけた。
[10] International Archives Week 2020 events: https://www.ica.org/en/search-international-archives-week-2020-events-worldwide (access: 2020/07/22)
[11] 注6参照。
[12] 翌日を含めたのは、15日に国際アーカイブズ週間への協力への感謝を伝える投稿があったため。
[13] ICA 公式Twitter(https://twitter.com/icarchiv)、ICA 公式Facebook (https://www.facebook.com/ICAInternationalCouncilonArchives/)からそれぞれカウント。投稿日については、Twitterが正確な投稿日時が表示されないため、数字を合わせるためFacebook、Twitterともに日本時間によってカウントしている。なお、ICA事務局のあるフランスとは7時間の時差がある。
[14] テンプレートはTrello上に現在も公開されている:https://trello.com/c/lfWiZHI9/19-customize-your-template-english (access: 2020/07/22)
[15] 投稿数については、期間外に投稿されたものを6月9日の「国際アーカイブズの日」に再度投稿されたもの、シェア/リツィートされたものを含む。実際の種類としては60前後である。
[16] 投稿数のカウント期間は、4月24日~6月30日まで。#AnArchiveIs, #UneArchiveCest, #UnArchivoEsのうち、最も多かったのはスペイン語の#UnArchivoEsの約2,800件。なお、日本語によるTweetについては、全部で38件あったとのことである。
[17] 2020年6月から7月にかけ、オクラホマ州立大学最先端技術創造研究所との共催により、全3回にわけて開催されたウェビナー。各講師の講演の記録やパワーポイント資料も公開されている。(https://sites.google.com/view/emergtechbigdatarchives/project-home, access: 2020/07/22)
[18] なお、ICOMOS Japanのサイトはコチラ:https://icomosjapan.org/ (access: 2020/07/22)
[19] 当館が2019年11月25~27日に開催した国際公文書館会議東アジア地域支部(EASTICA)セミナーで同氏を講師として招いた際の講演とほぼ同じ内容。ただし、EASTICAでは50分弱の講演であったが、今回は1時間30分にわたるものとなっており、より具体的な事例や詳細な説明を聞くことができる。本ウェビナーでのパワーポイントは以下に掲示:https://drive.google.com/file/d/1Dr4_r-74XKrjCAsujdQAksR4jQeqp9S3/view なお、EASTICAセミナーにおけるセレス氏の発表メモは以下のURLで公開しているので参考にされたい:http://www.archives.go.jp/about/activity/international/pdf/20191125_27_01.pdf (access: 2020/07/22)
[20] 5人の実務担当者は以下のとおり。Adrian Brown(英国議会文書館)、Angeline Takawira(国連国際刑事裁判所残余メカニズムUN International Residual Mechanism for Criminal Tribunals)、 Anna McNally(英国ウェストミンスター大学)、Dorothy Waugh(ヨーク大学)、Margaret Crockett(ICA 研修担当官)。なお、司会はDPCコミュニケーション担当のSarah Middleton。
[21] Sarah MiddletonによるDPCブログ “What I wish I knew about Digital Preservation: Part II”(https://www.dpconline.org/blog/wiwik-webinar-pt2, access:2020/07/22)
[22] 当時の情報誌『アーカイブズ』33号の裏表紙には「国際アーカイブズの日」の誕生を記念するポスターが見える。http://www.archives.go.jp/publication/archives/wp-content/uploads/2015/04/acv_33_p00_01.pdf (access: 2020/07/22)
[23] 2008年6月9日、東京都にて第1回「国際アーカイブズの日」記念講演会が開催され、「第1回『国際アーカイブズの日』記念に本大会アピール」が採択されている(『平成20年度国立公文書館年報』より)。
[24] 新型コロナウィルス感染症拡大に対する当館の具体的な対応は、本号の「新型コロナウイルス感染症拡大防止に係る国立公文書館の対応」に詳しい。
[25] この取組はICAにも注目され、ICAのSNSでも紹介されたほか、日本語字幕付きビデオメッセージは現在ICAのYoutubeチャンネルに掲載されている。https://www.youtube.com/channel/UC-SakaQQ_FV7EFL_4fAp7yw/videos (access: 2020/07/22)
[26] 日本語版ロゴについては、ICAのテンプレートを集めたwebページ「Trello」上からもダウンロードできるよう、ICA事務局がとりはかってくださった。https://trello.com/c/JA7jylN1/7-download-logos-in-english-fran%C3%A7ais-espa%C3%B1ol-and-portugu%C3%AAs (access: 2020/07/22)