東京都公文書館の移転開館について

東京都公文書館 事業調整担当
相原 宏美

1 はじめに
 東京都公文書館は昭和43年10月に港区海岸に開設され、公文書等の総合的、統一的な管理を行うとともに、東京都に関する修史事業を行ってきました。その後、再開発に伴い、世田谷区玉川に仮移転していましたが、令和2年4月1日、国分寺市泉町に新公文書館が建築され、移転開館しました。
 今回の移転に当たっては、公文書館の所在地の変更のみならず、移転に併せて、東京都公文書館条例の制定や、利用請求制度の導入等、東京都の諸活動や歴史的事実の記録である重要な公文書等の適切な保存及び利用を図るための規定整備もなされました。
 ここでは、新たにスタートした東京都公文書館の特徴について、ハード面、ソフト面の観点から述べていきます。

新公文書館外観

新公文書館外観
~歴史的資料の集積を表現した外観になっています~

2 公文書館のハード面について
 新公文書館は、最新の省エネ、再エネ技術を導入した都有建築物初のZEB化実証建築です。ZEB(Net Zero Energy Building)とは、省エネ基準よりもエネルギー消費量を50%以上削減した上で、積極的に再生可能エネルギーの利用を図った建物のことです。外壁の二重化や太陽光発電設備等により環境負荷を抑えつつ、24時間365日の温湿度管理等により最適な資料保存環境を創り出す工夫がなされています。

3 公文書館のソフト面について
 公文書館の移転開館に併せて、東京都公文書の管理に関する条例(平成29年条例第39号)の改正とともに、東京都公文書館条例(令和元年条例第24号)が制定されました。

(1) 東京都公文書の管理に関する条例の改正について
 ア 条例の目的等
 公文書等が都民共有の財産であること、その適正な管理が情報公開の基盤であることを明記し、都政の透明化を推進し、現在及び将来の都民に対する説明責任を果たすことを目的としています。
 イ 改正のポイント
 (ア) 歴史公文書制度の創設
 歴史公文書等について、条例に明確に位置付け、さらに、歴史公文書等が確実に公文書館に移管されるため、実施機関は、公文書の保存期間満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものは、移管の措置を、それ以外は廃棄の措置をとるべきことを定めなければならないと規定されています。
 これまでは、主に公文書の保存年限に着目して公文書館への引継文書を決めていたのに対し、令和2年度以降、公文書それぞれの歴史的価値に着目して移管又は廃棄の措置を決めていくことが大きな違いとなっています。
 (イ) 利用請求制度の創設
 公文書館が保存する歴史公文書等(特定歴史公文書等)について、現用文書を対象とする情報公開制度における開示請求と類似の制度である「利用請求制度」が創設されました。
 知事は利用請求があった場合には、利用制限事由を除き、閲覧や写しの交付による利用を認めることとなります。利用請求された特定歴史公文書等に利用制限情報が記録されているか否かの判断に当たっては、当該特定歴史公文書等が公文書として作成又は取得されてからの時の経過を考慮するとともに、当該特定歴史公文書等の移管時に移管元実施機関が利用の制限を行うことが適切であるとして、その旨の意見が付されている場合には、当該意見を参酌しなければならないとされています。
 また、利用請求に係る処分又は不作為について不服がある者は、知事に対して行政不服審査法に基づく審査請求を行うことができます。
 なお、利用請求制度の創設後も同制度によらずに一部の特定歴史公文書等その他資料を閲覧、複写することのできる簡易閲覧制度は継続しています。
 (ウ) 東京都公文書管理委員会の設置
 公文書等の管理に関する重要な事項について、審議し、実施機関に意見を述べるため、東京都公文書管理委員会が設置されました。
(2) 東京都公文書館条例の制定について
 公文書館の事業、休館日や開館時間のほか、新たに行う館内施設等の貸出し等公文書館に関する基本的事項について規定されています。令和2年度からは新たに土曜日も開館することとし、より多くの方に御来館いただきたいと考えています。
(3) 新公文書館の取組み
 公文書館は、利用者の方に更に親しんでいただける公文書館となるべく、利便性の向上に向けた取組みを行っています。
 ア 最新の展示施設の設置
 (ア) 常設展示室
 常設展では、江戸から今日の首都東京に至る歴史の流れと主な出来事をグラフィックやタブレットなどを活用して、御紹介しています。公文書館が所蔵する貴重な公文書や歴史資料に触れながら、東京の軌跡をたどれるように構成しています。
 (イ) 企画展示室
 重要文化財を含む所蔵資料による企画展を年2回程度開催します。
 イ 情報発信の強化
 重要文化財に指定された東京府市文書や江戸期古文書類をインターネットに画像データで提供するデジタルアーカイブサービスを導入し、お持ちのパソコンなどから簡単にアクセスできるようなりました。また、SNSを活用した資料情報の発信をより活性化し、利用者層を拡大していきます。
 ウ 研修室等を活用したサービス向上
 館内施設を研修室として一般の方へ貸し出すほか、職員(都職員等、国や自治体等の職員を含む)向けの研修や説明会にも利用できるようにしています。また、研修室を活用した都民向けの古文書講座の開催等も検討しています。さらに、館内には行政利用室を設置し、都職員等(国や自治体等の職員を含む)が公務で機密性の高い公文書等を閲覧できるようにも対応しています。

4 おわりに
 現在、東京都公文書館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、休館させていただき、郵送等による利用請求、電話等によるレファレンス等一部のサービスのみを実施しています(令和2年4月30日時点)。
 通常開館となった折には、当初予定していました開館記念所蔵資料展「守る・伝える “東京のアーカイブズ”」を開催する予定となっていますので、皆様の御来館をお待ちしています。

守る・伝える東京のアーカイブズ

守る・伝える “東京のアーカイブズ”

データシート
機関名:東京都公文書館
所在地:〒185-0024 東京都国分寺市泉町2-2-21
電話/FAX:042-313-8460/042-313-9105
Eメール:S0000015■section.metro.tokyo.jp
         (■を@にかえてください)
ホームページ:https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/01soumu/archives/
情報検索システム:https://www.archives.metro.tokyo.lg.jp/
交通:1.JR中央線・武蔵野線「西国分寺」駅 徒歩8分
   2.京王バス・寺85系統「いずみプラザ前」 徒歩4分
   3.ぶんバス・万葉けやきルート、北町ルート、
    日吉町ルート「西国分寺駅東」 徒歩5分
開館年月日:昭和43年10月
設置根拠:東京都公文書館条例
組  織:総務局-総務部-公文書館
人  員:館長1名、担当課長1名、常勤職員14名、
     会計年度任用職員30名
     (専門職17名、アシスタント職13名)
     【令和2年4月1日時点】
建  物:【1階】閲覧室、研修室、事務室等
     【2階、3階】書庫等
所蔵資料:東京都文書、東京府市文書、
     東京都の行政刊行物(庁内刊行物)、
     江戸・東京に関する歴史資料・図書、地図等
開館時間:9:00から17:00まで
休 館 日:日曜日、国民の祝日及び振替休日
     毎月第3水曜日(祝日の場合は翌日)及び年度末日(日曜日の場合は前日)
     年末年始(12月28日~1月4日)
     臨時の休館日として公示した日
主要業務:歴史公文書等の移管等に関すること
     特定歴史公文書等を整理し、及び保存すること
     特定歴史公文書等を一般の利用に供すること
     東京都に関する修史事業を行うこと     等