内閣府公文書監察室が行う各府省実地調査への国立公文書館職員の派遣について

統括公文書専門官室評価選別担当
上席公文書専門官 小宮山敏和

はじめに
 「公文書管理法5年後見直しに関する検討報告書」(平成 28 年3月公文書管理委員会) での提言を踏まえ、「公文書管理法施行5年後見直しの対応案」(平成29年2月同委員会)において、公文書管理に関する専門職員の各府省庁への配置について、試行的に国立公文書館から内閣府に職員を派遣するなどして検証することとされた[註1]。また、「公文書管理の適正の確保のための取組について」(平成30年7月20日行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議決定。以下「閣僚会議決定」という。)において、各府省における適正な行政文書管理を促進するため、公文書管理の専門的知識を持つ職員を内閣府・国立公文書館から政府CRO指揮の下、派遣する仕組みについて、平成30年度の内閣府を派遣先とした試行的な実施の成果を踏まえ、令和元年度より派遣先府省の拡大を含め拡充を図るとされている[註2]。
 本稿では、平成30年度に実施した当館の専門職員派遣の試行結果について概説したい。なお、本稿は、筆者の私見であり、筆者の属する組織の見解ではないことを念のため申し添えておきたい。

1.専門職員派遣の実施
 平成30年度に実施したのは、主に以下の3点である。
(1)内閣府を派遣先とし、内閣府大臣官房総務課(以下「内閣府総務課」という。)が行う内閣府本府における文書監査業務。
(2)内閣府公文書監察室が行う各行政機関への実地調査業務への同行(正確性の確保、保存期間1年未満文書への対応及び両者に共通する政策立案に係る行政文書の管理状況の調査)。
(3)内閣府総務課が行う移管又は廃棄の措置(レコードスケジュール。以下「RS」という。)確認業務を視察し助言の実施。
 それぞれの結果や今後の実施に留意が必要な点等については、内閣府大臣官房公文書管理課(以下「内閣府公文書管理課」という。)でまとめられ公表された報告書が存在するため[註3]、ここでは、主に(2)において、内閣府公文書監察室が行う実地調査に当館の職員が同行したことについて触れておきたい。
 内閣府公文書監察室の行う実地調査には、当館から統括公文書専門官付の評価選別担当職員が同行し、同室職員とともに調査を実施した。評価選別担当は、現用段階にある文書のRSや廃棄協議の確認作業を担っていることから、平成30年度の調査については試行という位置付けであったため、まずは同担当が対応した。また、同行職員についても、試行段階ということで、担当職員の役職や経験年数等は限定せずに同行することとなった。よって、日常業務として行っているRSや廃棄協議における省庁担当者を基本として、そこに経験豊富な職員が加わり、実地調査一箇所につき複数人で対応することとした。

2.実地調査における当館職員の役割
 当館職員が現用段階の文書の監査において、その特性を活かしてどのような役割が果たせるのかという点は、内閣府公文書管理課及び内閣府公文書監察室、並びに当館ともに模索しながらの調査であった。私見ではあるが、その特性について実地調査との関連で述べると、当館職員の持つ特性の一つとしては、元々アーカイブズに移管された文書を利用者として研究等で活用していた職員も多く、アーカイブズで保存すべき文書、アーカイブズに文書が移管されたのち、どのように利用される(されている)のか等を良く理解していることが挙げられるのではないだろうか。そうした特性によって、どのような文書が移管されるべきであり、また文書やファイルの作成段階において、作成されるべき文書、移管を前提とした望ましいファイル管理の在り方やファイリング等が導き出され、その観点を調査に活かすこと (各職員の専門分野・業務経験等にもよる)ができると考えられる。また、評価選別担当においては、RS確認作業等を通じて担当省庁の業務とファイル管理簿を確認しており、これまでの移管文書や過去のRS確認結果等を踏まえ、移管・廃棄の判断に係る知識の蓄積がされている点も特性として考えられるだろう。
 これらを踏まえ、(2)の試行の結果を考えると、特に政策立案に係る行政文書の管理状況調査において、専門職員としての知見を活かした助言等が行えたものと思われる。特に政策立案に係る行政文書ファイルは、経緯も含めた意思決定に至る過程が記録された文書が多く含まれており、立案から事業施行の過程等を確認しつつ、行政機関側担当者にも移管の必要性や事業に係る文書全体の中での移管・廃棄の考え方などの有益な助言等が行えたと考えている。
 また、各行政機関での実地調査を通じて、各機関の原課担当者に対し、移管・廃棄の判断に関する考え方や、経緯等も含めた文書の保存、ファイリングの在り方などを直接伝えられたことも大きいと考えられる。研修等を通じて、上記の考え方を行政機関職員へ周知しているところではあるが、RS等の設定状況を確認していると、原課担当者まで適切に理解されているかという点では若干疑問に思われる点も存在した。今回の調査が、原課の文書を例にとって具体的に説明する機会となったことは、原課担当者に文書の移管に関して理解を促す上で大きな効果があったものと思われる。

おわりに
 令和元年度においても、内閣府公文書監察室が行う実地調査へ同行する計画を含めた派遣の検討が進められている。今後も、各府省における適正な行政文書管理を促進するため、当館の専門的知識を持つ職員が各行政機関に派遣される可能性がある。求められた専門性が十分に発揮できるようにするためにも、今後も政策立案過程に関する知見や現場での経験等を深めていきたい。


註1 「公文書管理法施行5年後見直しの対応案」https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2016/20170221/shiryou2-1.pdf
註2 「公文書管理の適正の確保のための取組について」https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/koubun_kansatsu/honbun.pdf
註3 「平成30年度における専門職員派遣の試行結果(報告)」https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2019/20190423/shiryou3-2.pdf
及び「平成30年度における専門職員派遣の試行結果(報告)(概要)」https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2019/20190423/shiryou3-1.pdf