鳥取県の災害時における関係機関の連携・協力実施計画について

鳥取県立公文書館
島谷 容子

1.はじめに
 鳥取県では、災害により地域の歴史的資料が失われるのを防ぐため、「災害時等の県立公文書館、図書館、博物館等の市町村との連携・協力実施計画」(以下「災害時の連携計画」という。)を、平成29年9月に策定しました。この計画は、市町村や県民等が所蔵する歴史的に重要な資料に滅失・破損のおそれがあり所蔵者等から要請があったときは、県の関係機関が連携・協力して資料救出・整理・保存等の支援を行い、県内関係機関が所蔵する資料の滅失・破損が懸念され県から市町村に要請したときは、市町村が支援するという基本ルールを定めたものです。ここでは、この計画の策定に至った経緯と、計画策定後の取組についてご紹介します。

2.計画策定に至った経緯
 きっかけとなったのは、平成28年2月定例県議会の一般質問でした。市町村の文書管理の状況が十分ではないため、県として市町村をリードして適切な公文書の管理を進めていくことはできないかという指摘があり、これを機に、翌平成28年度は、鳥取県立公文書館の在り方を見つめ直すとともに、市町村との関わりについて検討する1年となりました。県内の全市町村訪問による公文書管理の状況調査から始まり、平成28年5月には、有識者による「県立公文書館在り方検討会議」(以下「検討会議」という。)を設置して、公文書館の果たすべき役割について検討を行いました。検討会議では4回の会議を開催して報告書を取りまとめ、平成28年10月に知事へ提出しています。報告書は、県及び市町村の公文書管理の現状と課題、公文書館の役割・機能の在り方と、それを発揮するために求められる取組がまとめられています。以下、災害時の連携に関する部分のみ抜粋してご紹介します。

 【提言内容(一部抜粋)】
 歴史公文書等や古文書は、公文書館にとってのみならず博物館、図書館にとっても価値がある場合があり連携が重要
 → 災害発生時の市町村への協力・連携の基本ルールの策定が望まれる

日本海新聞 平成29年9月6日付 災害時の連携計画策定記事(クリックで大きくなります)

日本海新聞 災害時の連携計画策定記事(クリックで大きくなります)

 この提言が出された同じ10月の下旬、鳥取県中部を震源とするマグニチュード6.6、最大震度6弱の鳥取県中部地震が発生しました。県関係機関では、地震により被害を受けた市町村や個人所有の歴史資料等の被災状態の確認及び救出を行いました。しかし、県内では被災歴史資料等のレスキュー実績が伝承されておらず、対策が定められていなかった等の理由から、地震発生後の対応は決して十分かつ効率的とは言えませんでした。そこで、県関係機関や民間団体が連携しながら、改めて震災等発生時の歴史資料や文書等の保全・レスキュー対策の検討を進めました。これが災害時の連携計画のベースとなっていきます。
 翌年の平成29年度には、上述の検討会議の提言を受ける形で、保有主体の歴史公文書等の保存や活用に関する責務等を明記した新条例「鳥取県における歴史資料として重要な公文書等の保存等に関する条例」が施行となり、この条例の中にも災害時等の措置を明記しました。
 そして、平成29年9月、検討会議の提言及び実際起きた地震災害への対応という実務経験を踏まえて検討を進めてきた災害時の連携計画も成案となり、関係機関連名で常任委員会への報告を行いました。

3.計画の概要と取組内容
 本県の災害時の連携計画は、実際に災害が起きた時の対策、平常時の対策をそれぞれまとめています。災害時と平常時で分けて対策を記載しているのが一つの特徴です。


災害備蓄材

災害備蓄材

 平成29年の計画策定後、鳥取県では大きな災害は起きていないため、現在は平時の対策を中心に取り組んでいます。
 例えば、支援活動物品の整備に関しては、平成29年度6月補正予算で260万円余りの予算が計上され、災害時救援に必要な資機材を購入しました。現在、これらの資機材は公文書館内の一室に備蓄しています。県内での被災資料救出を想定して備蓄したものですが、平成30年度の西日本豪雨の際には、広島県立文書館からの支援要請を受けて、折り畳みコンテナを貸出した実績もあります。

災害時の連携計画フロー図

災害時の連携計画フロー図

4.おわりに
 災害時の連携計画を定めておいたとしても、災害時には様々な想定外の事態が発生することが考えられるため、計画に定めたルールどおり動けるかどうかは検証が必要です。ただ、災害などの非常時に備えて、日頃から関係機関との連携を密にし、救援対象となる重要文書の所在を調査しておいたり、資料救出のための資機材を備蓄したりするなど、平時にできる対策を積み重ねておくことが初動体制確保に繋がると考えられます。今後も関係機関との連携を図りながら取組を進めていきたいと考えています。

<参考>災害時等の県立公文書館、図書館、博物館等の市町村との連携・協力実施計画
https://www.pref.tottori.lg.jp/269967.htm