東北の市町村初!大仙市アーカイブズ開館

大仙市総務部総務課アーカイブズ
主査 蓮沼 素子

1 はじめに

大仙市アーカイブズ(全景)

 平成29(2017)年5月3日、全国で73番目の地方自治体立のアーカイブズ施設として[1] 、大仙市アーカイブズが誕生しました。市町村立施設では東北初となります。
 大仙市は、秋田県内陸南部に位置し、平成17(2005)年3月22日に大曲市、神岡町、西仙北町、中仙町、協和町、南外村、仙北町、太田町の8市町村が合併して生まれた自治体です。合併後の平成19(2007)年に、太田町史編さんに携わった市民からの「アーカイブズ設置」を要望する声に大仙市が応える形でアーカイブズ構想を立ち上げ、10年をかけて準備してきた経緯があります。
 本稿では、このような準備期間を経て開館した本市アーカイブズの現状と課題について取り上げていきます。なお、これまでの経緯については、当館職員が『アーカイブズ55号』で詳細をまとめていますので併せて御参照ください。

2 公文書管理適正化への取組

 大仙市では、合併と同時に大仙市文書取扱規程を定めて統一の文書管理システムを導入し、合併後の文書管理の統合を図っていましたが、市民から挙がったアーカイブズ設置の提案を受け、平成19年度より公文書の全量保存を指示し、総務課を中心にアーカイブズ制度構築とさらなる公文書管理の適正化に向けた具体的な取組をスタートさせました。同時に、文化財保護課による地域史料の悉皆調査も行われ、これらの取組の指針として平成22(2010)年度末に「大仙市アーカイブズ構想」を策定しました。
 このような流れを受け、平成23(2011)年度より、全量保存を指示していた有期限文書の評価選別を開始し、翌年度より旧市町村永年文書の目録化等に着手して、地域史料業務についても総務課へ移管することで、総合的に大仙市のアーカイブズ事業に取組むことになりました。
 また、現用文書管理については、旧大曲市役所時代からの集中書庫を本庁集中書庫として引継ぎ、旧大曲市役所永年文書は中仙支所に文書庫を設置、その他の旧町村役場の文書庫は各支所の文書庫として運用してきました。それとは別に、保存期間満了後に評価選別された文書は、統廃合された旧小種小学校の教室を文書庫として活用し、そこへ保存しています。
 平成27(2015)年度には、職員向けのアーカイブズ研修を4回実施し、職員の理解と協力を促し、アーカイブズ設置後のスムーズな移管の実現を目指してきました。
 そして、アーカイブズ開館に合わせる形で、平成29年4月に文書取扱規程から公文書管理規則に改め、将来的な条例制定に向け、より一層の適正な公文書管理を図ることにしています。それに伴い、10月11日、12日の2日間(計4回)文書主任会議をアーカイブズで開催し、文書主任及び文書整理員への研修機会を設け、毎月21日を文書整理日とすることで定期的に文書管理の点検と見直しを実施しています。

3 アーカイブズの開館

大書庫

 平成25年度に旧双葉小学校を改修しアーカイブズとすることが決定すると、国交省の「社会資本整備総合交付金小規模住宅地区等改良事業(空き家再生等推進事業(活用事業タイプ))」を活用して[2] 、翌年度より基本設計、実施設計、改修工事と進み、平成29年3月に設置工事が完了しました。
 旧双葉小学校の校舎と体育館は面積4,464.18㎡、木造一部RC造2階建ての構造で、そのうち体育館と校舎2階部分を書架延長7,369.31m(A4判厚さ25mmファイル約27万冊収納可能)の書庫としました。体育館は特定歴史公文書を排架する大書庫、2階は空調設備のある特別貴重書庫2部屋を含む地域史料の書庫としています。そのほか事務室、会議室、閲覧室、展示室、研修室、作業室等を備えた施設となっています。
 改修工事の完了までには、平成26(2014)年度と28(2016)年度に合わせて2回の市民向けのシンポジウムを開催し、平成27年11月の全国歴史資料保存利用機関連絡協議会全国(秋田)大会を誘致するなど、アーカイブズ設置の機運を高めていきました。
 そして平成29年5月3日、10年の準備期間を経て念願の大仙市アーカイブズが開館しました。オープニングセレモニーには、市内、県内の関係者及び関係機関職員だけでなく、国立公文書館長をはじめ全国のアーカイブズ関係者に御参加いただき、東北の市町村立アーカイブズ第1号の当館への注目の高さを感じました。4日、5日は一般市民への公開日とし、普段は見ることの出来ない作業室や書庫、開館記念企画展や旧双葉小学校に関する常設展「双小アーカイブズ」を見学していただき、旧双葉小学校の卒業生も多く御来館くださいました。

4 集中豪雨による被災資料レスキュー

被災資料レスキューの様子

 平成29年度は7月、8月に、秋田県内に大きな被害をもたらした集中豪雨が連続して発生しました。特に、7月22日~23日の豪雨災害は、家屋への床上浸水や田畑の冠水、土砂崩れなど、市民生活に関わる甚大な被害となりました。これにより、農作物や交通網へも多大な影響が出ています。そうした中、被災3日後の26日、被災資料について社会福祉法人大空大仙が運営している淀川保育園(旧協和町立保育園)から市子ども支援課に相談があり、総務課を通してアーカイブズが連絡を受け、急遽、淀川保育園へ資料レスキューに向かいました。被災した法人文書やアルバムなど約30箱を園からアーカイブズへ運び出し、翌日より本格的な乾燥作業に入りました。
 文書の乾燥には、東日本大震災の際の津波による水損資料の保全方法を参照し、新聞紙と段ボールにキッチンペーパーを巻いたものを大量に用意し、被災した文書に挟み込んでビニルテープで立てる方法を採用しました。当初は床のビニルシートに新聞を敷き、直接立てて扇風機で送風していましたが、釜石市及び国文学研究資料館の御厚意で工業用扇風機をお借りすることができ、8月14日より会議用テーブルに被災資料を立てて、扇風機を当てる方法に変更しました。
 写真は箱の中で重なって貼り付いた状態で搬入されましたが、多くが白黒写真だったため、水を張ったたらいの中で剥がすことでほとんど傷めることなく処置できました。1枚ずつ上向きで乾燥させたあと、スノコの上にキッチンペーパーで挟んだ状態で、数枚重ねで保管しています。
 アルバムはすべて、フィルムをめくって糊付けされた台紙に写真を貼っていく形式のアルバムで、フィルムごと剥がして乾燥する方法を取りましたが、すでにフィルムと写真の間に水が入って画像が溶けている部分が多く、乾燥段階での状態を維持する方向で処置を進めています。印刷された卒園アルバムは、頁を開いた状態で乾燥させていますが、綴じ目の糊が剥がれるなど形状が破壊されているものも多く、泥の付着も顕著です。
 7月から8月にかけての作業であったため、被災からまもなく作業を開始しましたがカビ被害が見られ、70%に薄めたエタノールで洗浄もしくはスプレーすることで対応しました。
 作業には大量の資材や労力が必要となり、社会福祉法人大空大仙から多くの資材を御支援いただきました。市内印刷業者からは段ボール、市内図書館からは新聞紙を御提供いただき、新聞紙を折ってキッチンぺーパーを巻く作業は市民ボランティアのみなさまから御協力いただきました。
 現在は乾燥が進み、被災資料のドライクリーニング作業に入っています。ドライクリーニングが終了次第、順次綴じ直しや保存処置を行い、写真はスキャニングデータでも復元した上で園へ返却予定となっています。
 開館まもなく、このような災害を経験し、地域の記憶のストッパーとしての役割を果たす重要性を実感することとなりました。まさに地域の記憶と記録を守るアーカイブズとして、一部ではありますが機能できたと考えています。

5 現状と課題

 当館所蔵資料の中心は公文書と地域史料からなる特定歴史公文書等です。公文書については、合併前市町村文書から順次移管予定としており、5月3日の開館時には大曲市役所文書1,188冊が利用可能でした。現在、大曲市役所文書の移管及び整理を進めており、9月末時点での排架数は1,461冊、平成29年度移管済文書の約45%となっています。合併前市町村文書全体の移管率は約15%であり、大仙市アーカイブズの根幹である公文書の移管を、限られた人員と時間を有効に活用して積極的に進めていく必要があります。
 地域史料については、市民ボランティアのみなさまとこれまでも史料整理・解読などを行い、デジタル化事業を実施してきましたが、今後はデジタルデータでの公開や原本の受入が課題となっており、所蔵者のみなさまの御協力のもと順次公開していく予定です。
 当館への来館者は、平成29年9月末時点で952名となっており、多くが市内各団体の視察・見学です。そのほか、県内だけでなく東北地方の市町村からの視察もあり、東北各地でも市町村レベルのアーカイブズ設置の機運が高まってきていることを感じています。さらに、常設展のほか開館記念企画展、秋田わか杉国体開催10周年記念企画展などを開催し、アーカイブズに興味を持ってもらい利用につなげていきたいと考えています。
 閲覧申請者は、市民の方はもちろん、東京都や京都府など遠方からも御利用いただいています。さらに、未来の利用者としての子どもたちに興味をもってもらうよう、大仙市教育委員会が実施している「ふるさと博士育成」事業による「大仙ハローパスポート」[3] の対象施設とするなど、学校教育との連携を図っています。視察・見学や展示の開催など、大仙市アーカイブズを知ってもらい、何度も足を運びたくなるアーカイブズとなるよう工夫していきたいと思っています。
 秋田県は自然豊かな環境であり、夏は東北の中でも比較的暑く、冬は雪が多く寒い気候のため、温湿度管理や生物被害対策が重要となっています。現在、12箇所で温湿度を計測、2箇所で紫外線・照度を計測していますが、昼夜の温湿度差が大きく、10台の除湿機を稼働させながら1年間を通した特徴の分析と具体的な対策を検討しているところです。生物被害についても、20箇所のトラップ設置により、進入経路の特定やその対策を行っており、今後は季節による特徴を分析しながら、より的確な対応をとる必要があります。

6 おわりに

 このようにスタートしたばかりの大仙市アーカイブズですが、これからも市民のみなさまが気軽に相談できる身近な存在として、「ふるさとの記憶と記録を守り活かす」役割を果たすために、所蔵資料の充実を図り、利用しやすい環境を整えていきたいと思っています。そのためには、今後も国立公文書館をはじめ、全国の関係者、関係機関のみなさまからのお力添えが必要ですので、御指導御協力をお願いします。

基本情報
施設名:大仙市アーカイブズ
所在地:〒019-2335 秋田県大仙市強首字上野台1-2
電話/FAX:0187-77-2004
Eメール:archives@city.daisen.akita.jp
ホームページ:http://www.city.daisen.akita.jp/docs/2014040200045/
交通:JR奥羽本線利用の場合→峰吉川駅もしくは刈和野駅下車、車で10分
設置年月日:平成29年5月3日
設置根拠:大仙市アーカイブズ条例
組織:市長-総務部-総務課-アーカイブズ
人員:館長(再任用1)/職員(4)/臨時職員(1)
利用時間:火曜日から土曜日まで午前9時から午後5時(申請時間は午後4時30分まで)
休館日:日曜、月曜、祝日、年末年始、臨時休館日
主な所蔵資料:公文書、地域史料、刊行物、参考図書


[1]国立公文書館,“関連リンク”,国立公文書館HP http://www.archives.go.jp/links/
[2]平成28年度は「空き家対策総合支援事業補助金」に変更となりました。
[3]「大仙ハローパスポート」とは、大仙市の産業や文化財などの見学や体験を通して、ふるさとのよさを再発見するとともに、発見したことや疑問を自分で調べていくためのものです。訪問した際に、パスポートを提示し、活動が終わった後などに認印(サインやシール)をもらい、体験内容によってポイントをためて「ふるさと博士」に認定される取組です。