高松市公文書館の開館

高松市総務局総務課公文書館 本多広実

1.はじめに
 香川県の県庁所在地である高松市は、人口約42万人、面積約375k㎡の穏やかな気候のまちで、四国の玄関口として発展してきた。平成11年に中核市に移行し、平成17年度に塩江町、牟礼町、庵治町、香川町、香南町、国分寺町の周辺6町と合併して、現在の規模となっている。

高松市公文書館入口

高松市公文書館入口

2.経緯
 本市の公文書の取扱いについては、文書規程(昭和42年制定)により行政文書の収受、作成から廃棄までの管理ルールを定めていたが、行政運営上の必要がなくなれば史料的価値の有無にかかわらず廃棄されてしまうことや、旧6町が合併前に作成した文書の大半が未整理のまま各支所の書庫等に保管されており、その整理・保存のあり方などの課題があった。
 このような中、公文書等の管理に関する法律が平成21年に制定され、地方公共団体においては、公文書の適正な保存・活用に関して必要な施策を講じるよう努力義務が課された。これを踏まえ、本市においても、行政文書のみならず、歴史資料として重要な公文書のうち非現用であるもの(以下「歴史公文書等」という。)を含めた新しい文書管理体制の構築と、歴史公文書等の保存・利用の場である公文書館の整備が不可欠と判断し、①文書管理等に関する条例・規則等の整備、②公文書館の整備、③長期保存文書の保存方法の見直しの3つの取組を柱とする文書管理体制再構築事業を平成23年度にスタートした。この事業については、アーカイブズ第49号で紹介させていただいたので、今回は、その後の経過や公文書館の整備について述べることとする。

3.文書管理体制再構築事業
① 文書管理等に関する条例、規則等の整備について
 条例、規則等の例規の整備については、市長、行政委員会、地方公営企業の管理者、議会等の各実施機関において統一的な文書管理を行うため、平成25年3月に、公文書等の管理に関する基本的事項を定める「公文書等の管理に関する条例」(以下「公文書管理条例」という。)を制定した。主な内容としては、第1条に本市の自治基本条例の前文に掲げる「市民主体のまちづくりの推進に資すること」を目的としたほか、文書保存期間のうち、「永年」の区分をなくし、最長30年としたこと、レコードスケジュールの導入等、文書のライフサイクルを通じた文書管理の厳格化、歴史公文書等の選別・保存・利用、歴史公文書等の利用請求権の設定、公文書等管理審議会の設置等である。また、同時に「公文書館条例」を制定し、公文書館の設置目的を達成するために必要な事業等を定めた。
 公文書管理条例に基づく関連例規として、本市の市長部門を含む各実施機関が定める、行政文書の管理に関する細目事項である「行政文書管理規程(平成25年制定)」、公文書館に移管された歴史公文書等(以下「特定歴史公文書等」という。)の保存等に関する細目事項である「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関する規則(平成27年制定)」、公文書管理条例に基づき設置する公文書等管理審議会の組織及び運営に関する細目事項を定める「公文書等管理審議会規則(平成27年制定)」、さらに「公文書館条例施行規則(平成27年制定)」を制定した。
 また、「歴史公文書等選別基準」を定めたほか、公文書管理条例で行政文書の保存期間は原則30年を最長とし、関連のある文書を簿冊単位で管理することとしたことから、文書分類表の改正を行い、歴史公文書等の利用請求についての審査基準である「公文書等の管理に関する条例に基づく利用請求に対する審査基準」を定めた。
 さらには、新たな文書管理体制に移行するに当たり、平成25年度に行政文書管理や歴史公文書等の移管などについて職員を対象とした研修を実施したほか、平成26年度以降は毎年1回、公文書管理条例に基づく文書管理研修として、各実施機関の職員を対象に実施している。

館内の様子

館内の様子

② 公文書館の整備について
 また、公文書館に収蔵する特定歴史公文書等の目録をインターネットで検索できるシステムを平成25年度に構築し、平成26年度から運用している。この目録検索システムは、既存の文書管理システムからの電子文書を一括して登録でき、文書本体の電子データを公開できるものとした。本市の有識者及び公募市民で構成する「歴史公文書等の保存および利用に関する懇談会」から御意見をいただきながら、平成24年5月に「公文書館整備基本計画」を策定し、この計画に基づき、平成25年度に国分寺支所(市中心部から南西9㎞に位置する)の2階及び別棟書庫約900㎡を改修して、受付カウンターや検索コーナーを備えた閲覧室のほか、開架書架や展示スペース及び作業室3室を新設し、既存の倉庫及び書庫を保存機能の高い書庫とした(改修に要した費用は、実施設計及び工事監理を含め約3,700万円)。
 平成26年度は、公文書館への歴史公文書の受け入れや文書目録の整備のほか、公文書館の開館に向けた準備に取り組み、平成27年3月26日の開館を迎えた。

③ 長期保存文書の保存方法の見直しについて
 長期保存文書は、本来、総務局総務課において一括して保存・管理すべきものであるが、総務課が管理する本庁舎地下書庫は既に飽和状態にあるため、各出先機関や各課の空きスペースにも長期保存文書を保存している状況で、文書保存スペースの確保は喫緊の課題となっている。今後、保存期間を過ぎた行政文書等のうち歴史公文書等は公文書館に移管し、それ以外の文書は廃棄するなど適切に対応することにより、確保できた空きスペースを活用した効率的な保存方法等について検討することとしている。そのため、今年度、各課における文書量を調査し、今後の対策を検討する資料としたいと考えている。

4.公文書館の管理運営について
 開館後は毎年度、各実施機関から移管される文書を受け入れ、目録を整備し、保存・利用のために必要な措置を施すほか、調査研究、普及啓発事業を実施し、特定歴史公文書等の適正な保存・利用等に努めている。
 なお、平成27年度の普及啓発事業は次のとおりである。
①  開館記念展
期間 平成27年3月26日~6月30日
内容 「『こうぶんしょかん』ってどんなところ?高松市の125年を公文書からみてみよう」
②  親子体験教室
日時 平成27年7月30日(木)
内容 小学生と保護者10組を対象に、公文書館見学や体験を組み合わせた教室を実施した。
③  高松市合併10周年記念企画展
期間 平成28年1月~平成28年3月末(予定)
内容 合併に関わる歴史公文書等を集めた展示を行う。

5.課題
① 旧町保存文書整理
 各担当課による一次選別、総務課公文書館による二次選別を経て文書を廃棄・移管する、合併した旧6町の保存文書の整理、歴史公文書等の選別及び移管に継続して取り組んでいる。しかしながら、なじみのない作成方法や保存方法の文書を見て判断しなければならないので、時間を要することが多い。また、各町の文書は、保存期間や簿冊の作り方などの取り扱いが異なっているため、旧6町間の選別結果に差異がないように、また、目録の記載方法を統一していくことを念頭に作業を進めている。
 当初の計画では公文書館の開館までに支所保存文書の整理を行う予定であったが、選別作業に想定以上の時間を要し、作業が大幅に遅れているため、より良い作業手順やスケジュールとなるよう見直しを行いながら、早い段階で公文書館への移管が完了するよう努めている。

② 職員の理解の促進
 旧町保存文書整理を実施していく中での各担当課職員の率直な反応は、「自分たちが業務のために作成した文書を史料的価値という視点で見たことがないので戸惑っている」、また、「通常の業務で忙しく、文書管理に手間をかけられない」といったものであった。毎年実施する文書管理研修において制度をわかりやすく説明し、職員に文書管理についての理解を深めてもらい、さらなる協力を得ていきたいと考えている。

 6.まとめ
 平成23年度から取り組んできた文書管理体制再構築事業は、平成26年度に公文書館が開館したことで、一応の区切りがついた。しかし、先ほど述べた課題はアーカイブズ第49号で触れたものと同じで、2年経っても解決には至っていない。また、文書保存スペースの確保も課題であり、公文書館を運営しつつ、これらの課題に取り組んでいく必要がある。
 当館は、開館してまだ4か月程度だが、市の他の施設に比べ、来館者数は多いとは言えず、また、ほとんどの方が興味を示すのは、展示の内容や市の古い広報誌などの行政資料であり、何かを調査する目的で訪れる方はまだ少ない。今後は当館の認知度を上げ、レファレンスを充実させることにより、本市の諸活動を市民に知っていただき、本市の目的である、市民主体のまちづくりに貢献できる施設にしていきたいと考えている。

データシート

機関名:     高松市公文書館
所在地:     〒769-0192 香川県高松市国分寺町新居1298  高松市国分寺支所2階
電話/FAX:  087-874-4147 / 087-874-4151
Eメール:     soumu2181@city.takamatsu.lg.jp
ホームページ: http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/24260.html
交通:       JR端岡駅から徒歩約20分、国分寺町コミュニティバス「国分寺支所前」下車
開館年月日:  平成27年3月26日
設置根拠:    高松市公文書館条例
組織:       市長―総務局―総務課―高松市公文書館
人員:       館長1名、担当職員2名、非常勤嘱託職員2名
建物:       高松市国分寺支所の2階の一部及び別棟書庫約900㎡
所蔵資料:    公文書約7,700冊、行政資料(刊行物等)約6,000冊
開館時間:    午前9時~午後5時
休館日:      土・日・祝日、年末年始(12月29日~1月3日)、
           その他市長が特に必要と認める日
主要業務:    ○歴史公文書等に該当する公文書を選別し、保存期間が満了したものから移管
           ○移管又は寄贈・寄託された歴史公文書等を利用に供するための作業を実施
           ○各実施機関の職員を対象とした文書管理研修の実施
           ○合併した旧町の支所に保存している文書の整理
           ○普及啓発及び調査研究