企画展

平成28年度 第4回企画展 「漂流ものがたり」

平成28年度 第4回企画展 「漂流ものがたり」


【展示会】 【関連イベント】ギャラリー・トーク

概要

四方を海で囲まれた日本に暮らす人びとは、中国、ベトナム、ロシア、アメリカ、さらには無人島と、数多くの漂流・漂着を体験してきました。一方、その逆もしかり。島国日本には異国から多くの船や人が流れ着きました。 本展示では、アジアや欧米へ漂流した日本人の体験や、日本に漂着した異国人への幕府の対応、現地の人々とのふれあいの記録などを、当館所蔵資料からご紹介いたします。

主な展示

ほくさぶんりゃく

北槎聞略(ほくさぶんりゃく)
 天明2年(1782)、江戸への航海中に遭難、漂流の後ロシアに渡り、寛政4年(1792)に帰国した伊勢国白子の神昌丸の船頭大黒屋光太夫等の体験を、蘭学者で幕府奥医師の桂川甫周(かつらがわほしゅう)が幕府の命を受けて聴取したロシアの地誌・見聞録です。 ロシアの政治・経済・社会・物産・文字・言語などが詳細に記録されているほか、器物の写生図、地図の模写も含まれています。寛政6年(1794)8月に完成し、幕府へ献上されました。平成5年(1993)、重要文化財に指定されました。



かんかいいぶん

「環海異聞」(かんかいいぶん)
 寛政5年(1793)11月に陸奥国石巻を出航した若宮丸は、翌年アリューシャン列島の島に漂着。津太夫ら乗組員たちは、ロシアに8年滞留したのち、レザノフに伴われて、世界周航をめざす船に乗り込み、マゼラン海峡、ハワイ、カムチャッカを経て長崎へ帰国しました。  本書は津太夫ら帰国者の見聞を、蘭学者の大槻茂質(しげかた、玄沢)が聞き取り、まとめた書です。ロシアの社会や風俗等を絵入りで紹介するほか、長崎における日露間のやりとりについても記しています。



ひろかたずいひつ

「弘賢随筆」(ひろかたずいひつ)
 幕臣で能書家、故実家、蔵書家の屋代弘賢(やしろひろかた、1758〜1841)の手もとにあった雑稿を取りまとめて、編綴したものです。  その大部分は毎月15日、弘賢の知友が会合して、持ち寄りの文章を披露し合った、三五会の会員たちの草稿からなっています。今回展示するのは第55冊目に所収の「うつろ舟の蛮女」。  享和3年(1803)2月22日、常陸国の沖を漂流していた奇妙な船と、船中にいた異国女性の絵が描かれています。



じゅんかいろく

巡海録(じゅんかいろく)
 宝暦3年(1753)12月10日、八丈島の南岸大賀郷(現在の八丈町大賀郷)に唐船が漂着しました。八丈島側は島役人が対応し、船主2名を上陸させました。言葉が通じないため、筆談で会話しました、船主2名は高山輝、程剣南と名乗り、信牌(しんぱい、長崎への入港許可証)を役人へ提示しました。その後彼らは下田を経由して長崎へ送還されました。  「巡海録」は当時下田代官所書記役を勤めていた関修齢(せきしゅうれい)が記した唐船漂流の見聞録です。本書には唐船の漂着から長崎への送還までの経緯や、漂流した清国商人、漂流船が描かれています。