愛知県公文書館-開館30周年を迎えて-

愛知県公文書館
熊澤 美佐子

1.はじめに

   愛知県公文書館は、「歴史的価値のある県の公文書その他の資料を収集し、整理し、及び保存するとともに、その活用を図り、もって学術及び文化の発展に寄与する」ことを目的とした施設として設置され、平成28年で開館30周年を迎えた。
   本県では、昭和54年、歴史資料の保存利用に関する研究機関や県民などから、県及び県議会に対して公文書の保存体制の確立を求める要望書・請願書が提出され、これを機に、公文書館発足の動きが本格化した。翌年3月には公文書館設立に関する庁内検討組織が設置され、ここでの公文書館設置に係る諸問題の調査研究などを経て、昭和61年3月に「愛知県公文書館条例」が制定され、同年7月1日、公文書館が開館した。
   本館の概要や主な所蔵資料の紹介などについては、本誌28号(2007年4月)に開館20年の近況として掲載されているので併せて参照されたい。本稿では、開館から30年を経た本館の近況や取組について紹介する。

2.公文書等の収集及び利用状況

   平成27年度末現在の所蔵状況は、公文書 90,404点、刊行物等 85,275点、古文書等 4,636点、旧公印346点、合計180,661点(原本のほか複製本やマイクロフィルムを含む。)である。このほか、平成14年度から16年度にかけてデジタルデータ化を行った地籍図・地籍帳、藩庁文書、県庁文書など約5千点の資料データをCD-ROM及びDVDに収録して保存している。これらのデジタルデータは、現在のところ館内の閲覧用パソコンでのみ閲覧に供している。
   平成27年度の入館者数は4,512人、1日平均19.2人である。ここ数年の入館者数の1日平均は16~17人であるが、平成27年度は、展示室において、愛知県庁本庁舎の重要文化財指定記念特別企画展「喜寿(77年)を迎えた愛知県庁本庁舎の軌跡」を半年間にわたり県財産管理課と共同で開催したことにより、例年に比べて入館者数が増加したものと思われる。
   公文書の収集については、当該年度をもって保存期間を満了する廃棄予定文書の中から、愛知県公文書館公文書等管理規程に定める歴史的価値のある公文書の選別基準に基づき本館が選別・収集しているが、平成24年度の完結文書からはレコードスケジュールを導入し、事案が完結した翌年度に、各所属による歴史的価値の有無の選別を行っている。本館では、各所属が総合文書管理システムの簿冊情報に登録した選別の結果を確認し、選別の判断が所属と本館で異なるものについては協議を行い、選別結果の変更等がある場合は、各所属がシステムの登録情報の修正等を行っている。

30周年記念特別展

30周年記念特別展

3.開館30周年記念特別展「厳選!公文書館の逸品」の開催

   本館では、開館以来、所蔵資料による企画展を毎年開催しており、平成28年度で42回目(平成10年度までは年2回開催)となる。例年の企画展ではテーマを設けて、そのテーマに沿った内容で資料を展示しているが、今回の企画展ではテーマを設けず、「開館30周年記念特別展」として、普段は複製でしか閲覧することができない貴重な資料の原本や初公開の資料のほか、絵図・写真を始め文字資料以外の品など、本館の特色ある所蔵資料を、愛知県の成立期から昭和にかけての幅広い年代から選び出し、「公文書館の逸品」として展示した。
   開催期間は、平成28年10月3日(月)から同年11月30日(水)までで、主な展示内容は次のとおりである。

(1) 公文書館の設立
   公文書館設立の経緯と公文書館の業務や所蔵資料などについて紹介
(2) 明治期の地籍図・地籍帳
   明治17年3月17日付けの愛知県布達により作成された地籍図の中から、名古屋城近辺の地籍図「名古屋区 天」(縦200㎝×横340㎝)の原本などを展示
(3) 愛知県の成立と愛知県知事
   愛知県成立期にかかわる藩庁文書、歴代愛知県知事の肖像画や写真などを展示
(4) 郡役所文書
   明治から大正期にかけて設置された県と町村の間に位置する地方行政機関である郡役所が作成・保管していた文書、写真などを展示
(5) 昭和期の愛知県政関係
   昭和25年に一般公募により制定された愛知県章・県民歌に関する文書、建設直後の県庁本庁舎の平面図、47年の県政100年記念関係資料の原本などを展示
(6) その他
   知多郡農具図・果樹彩色画などの絵図や記念メダルなどの物品、瀬戸市出身の元衆議院議長である加藤鐐五郎に関する資料(寄託資料)、戦中・戦後当時の様子がわかる愛知県田口農林学校に関する文書などを展示

4.所蔵資料の常設展示等

   展示室では、年間を通して常設展を行っている(企画展の開催期間中を除く。)。常設展の一部には、テーマを設定した展示コーナーを設けており、年に数回、展示資料の入替えを行っている。
   このほか、常設展のスペースの一部に、県史編さん事業及び刊行中の愛知県史の最新刊を紹介する『愛知県史』展示コーナーを設置している。

(1) 常設展示
   「愛知県の成立」、「主な所蔵資料」、「公文書館の業務」に関する展示を行っている。県の成立期にかかわる文書や地籍図の複製など、本館の特色ある所蔵資料を紹介している。

(2) 古文書コーナー
   古文書などの歴史資料に関心を持ってもらえるように、平成24年度から本館所蔵の古文書を紹介する古文書コーナーを設置している。古文書の原本と合わせて翻刻文・解説文などを展示しており、年に2回程度、展示資料の入替えを行っている。

古文書コーナー

古文書コーナー

ミニ展示コーナー

ミニ展示コーナー

(3) ミニ展示コーナー
   平成26年度から、「本館所蔵資料が語る愛知県の歴史」と題したミニ展示コーナーを設置している。これまでに行った展示のテーマは、「明治初期のあいちの宿駅」、「明治期愛知の産業と博覧会」で、その年の企画展で取り上げたテーマに関連した資料の展示を行った。


古文書講座

古文書講座

5.古文書講座の開催

   古文書の解読を通して歴史資料や郷土の歴史への関心を高め、公文書館の利用普及を図ることを目的として、平成22年度から古文書講座を開催している。
   当初は、初心者向けの入門編のみであったが、平成23年度からは、県史編さん事業の紹介を趣旨に加え、『愛知県史』に掲載された古文書の解読を行う上級者向けの応用編を設けている。
   また、入門編・応用編とも1回完結の講座で開催していたが、入門編の受講者から複数回の受講を希望する意見が多く寄せられたため、平成27年度からは入門編を2回連続講座とし、入門編(2回連続講座×4回)と応用編(1回講座×2回)で計10回の講座とした。

6.おわりに

   一般の県民にはなじみの薄い県の公文書を取り扱う公文書館にとって、常に利用者をいかに増やすかが課題となっている。本館では、企画展や古文書講座などの実施や機関誌の発行、ホームページによる情報提供などを行っているが、これらの定例事業を行うだけで十分な成果は得られないのが実状であり、新たな取組を積極的に行っていくことが必要である。そのため、今年度は、これまであまり利用されてこなかった小・中学校や高等学校を対象とした見学案内のチラシを作成・配布し、学校での利用促進を図ることを考えている。
   今後は、こうした新たな取組を実施しながら、定例事業についても内容の充実を図り、たくさんの方に足を運んでもらえる魅力ある公文書館となるよう努めていきたい。