【令和6年度アーカイブズ研修Ⅱ特集】
「電子公文書の管理・保存・利用」をテーマにした研修を実施して

国立公文書館
統括公文書専門官室 研修連携担当

はじめに
  国立公文書館(以下「当館」という。)は、令和7年2月6日(木)、7日(金)に、「令和6年度アーカイブズ研修Ⅱ」を開催しました。アーカイブズ研修Ⅱは、「「アーキビストの職務基準書」が示す個別の知識・技能の向上」を目的とし、「特定のテーマに関する講義や共同研究、実習による発展的研修」と位置付けられます。令和6年度は、「電子公文書の管理・保存・利用」をテーマに完全オンラインで開催し、国の機関をはじめ、地方公共団体の公文書館等34機関から46名の参加がありました。本稿は、研修の概要を報告するものです。

1.テーマ選定・研修プログラム検討の経緯
  電子公文書をテーマとしたアーカイブズ研修Ⅱは、令和4年度から継続的に実施し、今回で3年目になります[1]。また今回は5年ぶりに、受講者同士のグループ討論を研修のプログラムに組み込みました。コロナ禍以降、講義や事例報告を中心とした「座学」形式が続きましたが、元々、アーカイブズ研修Ⅱは、「共同研究」を一つの特色としています。今回の研修では、グループ討論による「共同研究」をオンライン形式で「復活」させたことになります。「電子公文書」の取組状況や関わり方は各機関で様々ですが、電子公文書をめぐる全国の公文書館等の現状や課題を把握・共有し、解決の方向性を探る場となるよう研修を企画しました。

2.研修の概要
  以上の経緯を踏まえ、今回は下記のとおり2日間のプログラムで研修を実施しました.

令和6年度アーカイブズ研修Ⅱのプログラム

2月6日(木)
講義①電子文書の管理・保存をめぐる基本的考え方 創価大学 坂口貴弘
講義②電子公文書管理に係る最新の動向 聖学院大学 塩崎亮
事例報告① 広島県立文書館 新原淳弘
事例報告② 札幌市公文書館 高井俊哉
ガイドブック作成の取組の報告 国立公文書館 篠原佐和子
2月7日(金)
自己紹介・グループ討論①  
グループ討論②  
報告  
講評  

  

  1日目は講義、事例報告を中心に実施しました。
  まず、創価大学の坂口氏から、令和5年度に引き続き、「電子文書の管理・保存をめぐる基本的考え方」について講義いただきました。坂口氏には、国際標準化機構(ISO)が発行している電子文書管理に関する国際標準類、アメリカ連邦政府における電子文書管理の要求事項など、最新の標準化活動の動向や成果を踏まえた講義をいただきました。
  続いて、聖学院大学の塩崎氏から、「電子公文書管理に係る最新の動向」について講義いただきました。塩崎氏には、電子メールやウェブ、ソーシャルメディアのアーカイビングなど、新しい技術やサービスの登場によって生じる課題や対応について、アメリカとイギリスを中心とした海外事例を踏まえ、講義いただきました。
  次に、広島県立文書館の新原氏、札幌市公文書館の高井氏から事例報告をいただきました。それぞれの機関における文書管理システムや電子公文書の保存・利用業務の現状や課題、課題解決に向けた取組、今後の展望について報告をいただきました。
  そして1日目の最後に、当館の篠原係長から、「ガイドブック」に関する報告がありました。当館では、電子公文書の長期安定的な保存と利用の観点から、国や地方公共団体の文書管理業務を行う担当者、公文書館の実務担当者等を主な読者として想定し、電子公文書の作成や保存の基本的な知識や留意点を取りまとめたガイドブックを作成しましたので、その取組を報告しました。
  2日目は、午前中に受講者によるグループ討論を実施し、午後に各グループから討論の結果を報告いただきました。事前に受講者が有している課題ごとにグループを分け、グループごとで討論をいただきました。具体的には、「1.移管元機関における現用文書(電子公文書を含む)の管理に係る課題」、「2.電子公文書等の移管・保存に係る課題」、「3.電子公文書等の利用(閲覧)に係る課題」、という3つのテーマに基づき、7つのグループに分けました。討論では、各機関で抱える共通の課題、問題意識を抽出し、討論の具体的なテーマを決定し、そのテーマについての対応策、解決方法等を検討し、討論結果を報告いただきました。なお、今号(第96号)では、各班で行われた討論報告を掲載しています。

おわりに
  本研修は、毎年度、各機関にご協力いただいているアンケート結果等を踏まえて、テーマを決めています。3年連続で、「電子公文書」をテーマにしたことは、それだけ各機関の関心の高さを示すものと考えています。そして、今後も取り組むべき極めて重要なテーマであるとの認識で、今回のプログラムとさせていただきました。来年度以降も、皆様のご希望を踏まえつつ、充実した研修となるよう図ってまいります。引き続き、当館の研修連携業務へのより一層のご協力・ご指導の程何卒よろしくお願いいたします。最後に、改めまして、お忙しい中、この2日間、本研修を受講いただきました皆様に、お礼申し上げます。

  
  

[注]
[1]令和4,5年度アーカイブズ研修Ⅱの概要は以下をそれぞれ参照。国立公文書館研修連携担当「【令和4年度アーカイブズ研修Ⅱ特集】電子公文書の保存・利用」に関する研修を企画して」『アーカイブズ』第88号、2023年、https://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no088、国立公文書館研修連携担当「【令和5年度アーカイブズ研修Ⅱ特集】電子公文書の管理・保存・利用」をテーマにした研修を実施して」『アーカイブズ』第92号、2024年、https://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no092