仙台市公文書館の開館について

仙台市公文書館
主幹兼館長 庄子 淳

仙台市公文書館の外観

仙台市公文書館の外観

1 はじめに
  仙台市公文書館は、歴史資料として重要な公文書等を適切に保存し、利用に供するための施設として、令和5(2023)年7月3日に開館しました。当館は、「仙台市公文書等の管理に関する条例」に基づく公の施設として、また、公文書館法に規定する公文書館として設置されました。今回は、仙台市公文書館の開館までの歩みと今後の課題についてご紹介したいと思います。

2 公文書館設置の経緯
  仙台市では、公文書館設置の重要性について、議会や郷土史研究団体等からの指摘もあったものの、長らく具体的な検討に至らずにいました。平成20(2008)年12月に、当時進められていた仙台市史編さん事業に携わっている仙台市史編さん専門委員会より、仙台市長に対し「公文書館設置に関する提言」がなされ、平成25(2013)年12月にも、再度「公文書館的機能を持つ施設設置に関する提言」「東日本大震災に関する資料の保存に関する提言」が重ねて行われました。それらでは、仙台市史編さん事業において収集されてきた歴史資料として重要な公文書等の散逸を防ぎ、その活用を市として行っていくべきであること、さらに後者では東日本大震災の被災自治体として、その記録を保存していく必要があることが述べられていました。
  それまで、保存期間が満了した公文書から歴史資料として重要なものを仙台市史編さんのための資料として収集し保存していましたが、仙台市史の編さんは平成26年度をもって終了することになっていました。そこで、市長部局において、保存期間が満了した公文書から引き続き保存すべきもの(歴史的公文書)の選別基準を、先行自治体の事例を参考に制定し、歴史的公文書を選別、保存していくこととしました。
  一方で、施設については、既存施設を改修して整備することを前提に検討を進め、平成27(2015)年3月に閉校した旧仙台市立貝森小学校の校舎を利活用することについて、地元住民の方々や庁内と協議を重ね、平成29(2017)年2月、正式に、旧貝森小学校校舎を公文書館に整備することが決定しました。

3 施設整備
  公文書館の建物については、平成30(2018)年度の基本設計、令和元(2019)年度の実施設計を経て、令和2(2020)年9月に改修工事に着工、翌令和3(2021)年7月に竣工しました。改修にあたっては、元の小学校校舎のつくりを活かした設計にしています。2階から4階までの教室部分は部屋をそのまま書庫にしましたが、窓や扉などの開口部分が大きいことから、部屋に内壁を設置することで日光や外気を遮断することにしました。建物にはエレベーターがありませんが、給食の配膳に使用していた小荷物昇降機がありましたので、書庫からの資料の入出庫を、これを使用して行うことができるよう整備しました。給食の食材搬入口はそのまま資料搬入口に、閲覧室や展示室は1階の広い元特別教室に配置し、資料を落ち着いて閲覧していただけるよう整えています。
  建物を改修、整備する間、資料は民間企業の書庫に保管委託し、建物の整備終了後に施設に搬入しました。搬入後に資料を燻蒸し、整理のうえ目録を整えていく予定でしたが、書架への配架が終わった数日後、大きな地震が発生し、大半の資料が書架から落下してしまいました。竣工して間もない建物にもひびが入るなどの被害が生じたため、急ぎ補修工事を施工することになりました。補修工事前に、床に落ちた資料を課の他の係の職員にも協力してもらい人海戦術で書架に戻し、補修工事もすぐに手配していただくことで、当初予定していた時期に資料の燻蒸を間に合わせることができました。

閲覧室の様子

閲覧室の様子

展示室内

展示室内


4 公文書館目録検索システムの構築
  仙台市公文書館へは公共交通機関を利用することもできますが、決してアクセスがいい立地とはいえません。利用者の利便性を考慮すると、目録検索システムを整備し来館せずに利用請求できるようにする必要があると考え、開館時に利用を開始できるよう、施設整備と並行してシステムの構築を進めました。
  一方、公文書の保存は、公文書館設置事業を開始するまでは文書所管課がそれぞれ行っていました。仙台市では文書管理システムを導入して日頃の業務を遂行していますが、同システムが導入された平成19年度より前に完結した公文書については、その所在を把握することも難しい状況にありました。また、「保存期間が満了した公文書を、それ以後も歴史的公文書として永久に保存していくことの意義」を市役所内に理解し、歴史的公文書の選別や移管に協力してもらうようになるまでには一定の時間がかかりました。現在も折に触れ庁内に呼びかけを行うことで歴史的公文書の収集を進めています。さらに、各歴史的公文書の概要をまとめたものもなかったため、目録作成も一からの作業となり、資料を整理しつつ、一点一点確認しながら、目録検索システムに登録していきました。

5 (仮称)仙台市公文書館運営検討会議
  公文書館の整備を進めるにあたって、新しい施設を設置、運営していくための知見が担当部署にはなかったため、一つ一つ勉強しながら作業を進めていましたが、公文書館や歴史的公文書制度の運営事項について、有識者の知見による検証や提言が必要ということになり、国立公文書館、大学アーカイブ、県公文書館の職員の方などに委員になっていただいて、「(仮称)仙台市公文書館運営検討会議」を令和2年7月に設置しました。
  会議では、(1)歴史的公文書収集選別基準の見直し、(2)歴史的公文書の利用における審査基準、(3)展示企画、(4)公文書館の事業内容について主に検討、提案をしていただきました。特に歴史的公文書収集選別基準の見直しにおいては、東日本大震災に関する文書の選別をどうするかという被災自治体独自の課題について、他自治体における先例を参考にしながらどのような文書を選別していくか、改めて見直しを行い、「選別ガイドライン」の形にまとめました。同じく新型コロナウイルス感染症対応に関する文書についても、どのような文書を保存していけばよいのか課題となっていたことから同様にガイドラインにまとめています。これらは仙台市公文書等の管理に関する条例の施行後、附属機関である「仙台市公文書等管理・情報公開審議会」に改めて諮られたのち選別基準とともに制定されており、選別作業やレコードスケジュールの場で拠り所として運用されていくことになります。
  加えて委員の方々自身の経験や知見から、今後の所蔵資料の利用の在り方や他施設との連携などへの意見も色々といただくことができました。

6 当館の業務内容と今後の課題について
  仙台市公文書館は、公文書館法に基づく公文書館として、(1)歴史的公文書等を保存し、一般の利用に供すること、(2)歴史的公文書等の保存及び利用に関する調査研究を行うこと、(3)歴史的公文書等の普及活動に関すること、の3点を主な業務内容としています。
  歴史的公文書の選別、移管、保存にあたっては、条例に基づき、実施機関が作成した公文書ファイルにレコードスケジュールを登録し、公文書館がそのチェックを行うこととしています。また、公文書の廃棄前には、条例に基づき設置された附属機関である「仙台市公文書等管理・情報公開審議会」に廃棄対象の公文書ファイルの一覧を諮ってチェックを受ける、外部の目による誤廃棄を防ぐ仕組みを取り入れています。
  しかしながら、歴史的公文書の選別作業は一部の実施機関にとどまっていることや、実施機関の職員に選別についての理解、ひいては歴史的公文書や公文書館についての情報が行き渡っているとは言いがたいところもあり、今後、仙台市における歴史的公文書の選別、移管の制度がより適切に運用されるよう、研修や移管協議以外にも公文書館が実施機関に積極的に情報発信していく必要があると考えています。
  また、仙台市公文書館は認証アーキビストも職員にいないことから、その設置準備において外部の専門家の方々に色々な面でご協力いただきました。今後の運営にあたっても、仙台市内外のアーカイブとも積極的に情報交換し、情報収集や連携に努めていくことが必要だと考えています。

7 おわりに
  現在、仙台市公文書館では、明治の仙台市の黎明期から現在までの公文書、仙台市史編さん事業から引き継いだ資料などを保存しています。東日本大震災に関する公文書も含め、これらの市民共有の財産を、広く市民の皆さんに知ってもらい、利用してもらえるよう、運営してまいりたいと思います。

【データシート】
機関名: 仙台市公文書館
所在地: 宮城県仙台市青葉区貝ケ森五丁目6番1号
電話/FAX: 022-303-6074/022-279-8811
Eメール: koubun■city.sendai.jp(■を@に替えてください)
ホームページ: https://www.city.sendai.jp/kobunsho/koubunsyo/koubunshokan.html
交通: 1.JR仙山線「東北福祉大前駅」下車 徒歩15分
2.仙台市営バス「貝ケ森三丁目」下車 徒歩5分
3.仙台市営バス「貝ケ森五丁目」下車 徒歩5分
開館年月日: 令和5(2023)年7月3日
設置根拠: 仙台市公文書等の管理に関する条例
組織: 仙台市総務局総務部文書法制課公文書館
人員: 主幹兼館長1名 主事2名 会計年度任用職員(学芸員)5名 会計年度任用職員(事務)1名
建物: 鉄筋コンクリート造5階建 延床面積3,698.45㎡
所蔵資料: 歴史的公文書 約8,200点 刊行物 約4,300点 図面、写真等 550点(令和6年1月31日現在)
開館時間: 午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日: 土曜日、日曜日及び休日
年末年始(12月29日から翌年1月3日まで)
主要業務: 歴史的公文書等の保存及び利用
歴史的公文書等の保存及び利用に関する調査研究
歴史的公文書等の普及活動