2023年EASTICA第16回総会及びセミナー参加報告

国立公文書館 統括公文書専門官室
公文書専門官 太田 由紀

1.はじめに
  2023年11月28日(火)から12月1日(金)の4日間、中国広東省深センにおいて国際公文書館会議東アジア地域支部(East Asian Regional Branch of the International Council on Archives、EASTICA)[1]の第34回理事会、第16回総会及びセミナーが開催された(主催:中国国家档案局(National Archives Administration of China、NAAC)及びEASTICA、共催:深セン市档案館)。今回のセミナーのテーマは「デジタル時代におけるアーキビストとアーカイブズの役割(The Roles of Archivists and Archives in the Digital Age)」である。

  EASTICAでは毎年理事会とセミナーを開催し、隔年で総会を開催してきた。新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により対面開催が行えない年が続いたが、今回の深センでの会合は4年ぶりに対面形式で開催された。参加者数は、EASTICAに加盟する日本、中国、韓国、モンゴル、香港、マカオの4か国2地域にカナダとオーストラリアからの基調講演者2名を加え約130名である。日本からは、当館の鎌田薫館長他職員2名が出席した。以下、理事会、総会、セミナー及び視察の概要について報告する。

EASTICA理事会

EASTICA理事会

2.第34回EASTICA理事会
  初日の11月28日午後、深セン中心部から車で40分ほどのところにある緑豊かな敷地に位置する二十四史書院で理事会が開催された。理事会会場となった建物2階は全面ガラス張りで周囲の木々の緑の中に浮かんでいるかのようであった。爽やかかつ穏やかな雰囲気の中、EASTICA運営に関する討議と報告等が行われた。
  イ・サンミン(Lee Sangmin)EASTICA事務局長の司会で進行した会議の冒頭、NAACの局長で、EASTICA議長(当時)も兼ねる王紹忠(Wang Shaozhong)氏による歓迎のあいさつでは、4年ぶりに対面で理事会を開催できることへの喜び、これまでのEASTICAの継続した取組、及び今後のEASTICAの発展への期待が述べられた。
  理事会での主な決定事項は2点あり、1点目は、EASTICAの新議長と副議長の選出である。翌日の総会(11月29日)で2名とも4年の任期が満了することから、総会での選出に向けて、理事会として新議長にハ・ビョンピル(Ha Byoung Pil)韓国国家記録院長、新副議長に当館の鎌田薫館長を推薦することを決定した。また2点目として、2024年のEASTICA理事会及びセミナーの開催場所を日本とすることが承認された。
  その他の議題では、香港大学とEASTICA主催のアーカイブズコース「既卒者向けアーキビスト専門教育のディプロマコース」(Postgraduate Diploma in Archival Studies, PDAS。12か月のコース)及び「既卒者向けアーカイブズ学講座」(Postgraduate Certificate in Archival Studies, PCAS。3週間のコース)の活動報告のほか、2022年から2023年の1年間の会計報告、新規会員申込み(中国、中山大学)の承認が行われた。

総会で司会を務めるEASTICAイ事務局長 写真 NAAC

総会で司会を務めるEASTICAイ事務局長
写真 NAAC

3.開会式及び第16回総会
  11月29日午前、開会式と総会が行われた。王局長と深セン市委員会常務委員会委員の鄭紅波(Zheng Hongbo)氏が冒頭の開会挨拶を行った。
  王局長は、大会テーマ「デジタル時代におけるアーキビストとアーカイブズの役割」について発表や意見交換を通じて研究成果や経験を共有することへの期待を述べた。また、2023年がEASTICA設立30周年にあたることから、30年にわたる変遷を示す写真を背景に表示しながら、今後も東アジア地域でEASTICAというプラットフォームを通じてアーカイブズに関する協力や知識の交換を継続し、共に発展していくことへの意欲が語られた。
  総会では、新議長をハ韓国国家記録院長、新副議長を当館鎌田薫館長にすること、また、2024年のEASTICA理事会及びセミナーを日本で開催することが承認された。
  このほか理事会と同じく、PDASやPCASの活動報告、年間の財務報告などが行われた。

<2023年~2026年の経営体制>
    議 長:ハ・ビョンピル(韓国国家記録院長)
    副議長:鎌田薫(日本国立公文書館長)
    事務局長:イ・サンミン(韓国)
    会計官:イム・シニョン(韓国)
    主な理事:中国、モンゴル、香港、マカオの中央アーカイブズ機関長

4.セミナー
  11月29日午後から30日午前には、セミナーが行われた。29日午後のセミナーは、2つのセッションから構成されていた。各セッションは、基調講演1本、その他の発表2本から構成されていた。また、11月30日午前は、国・地域別報告のセッションで、4か国2地域から報告がなされた。
  以下では、すべての発表の要旨を紹介する。なお、これらの発表の英語資料は、EASTICAのホームページに公開されている。原文にご興味のある方は、EASTICAのページをご参照いただきたい[2] 。

Ms. Laura Agnes Millar 写真 NAAC

Ms. Laura Agnes Millar
写真 NAAC

4.1 セッション1
4.1.1基調講演 Ms. Laura Agnes Millar(アーカイブズコンサルタント)

  「サギとハチドリ:デジタル時代における、遅くて速い記録管理」
  獲物を捕まえるまでじっくりと待つサギと、次から次へ蜜を求めて動きまわるハチドリが、それぞれ電子記録登場以前のアーキビストと電子記録登場以降のアーキビストのメタファーとして表現された。基調講演者は、電子文書登場以降にアーキビストの在り方は変化しており、現代のアーキビストは証拠となるアーカイブズやデータが収蔵されるのを待つのではなく、電子文書を真に保存し、将来の証拠とするために、作成者とも協働しながらつねにハチドリのように情報と証拠の資源から資源へと動きつづける必要があると説明した。重要なのはいかに証拠の源を取得し、保存し、利用できるようにさせるかであり、その源が真正で、信頼できるものであり、正確であるための行動をとることである。アーキビストの戦略は変わるがミッションは変わらない、と結んだ。

4.1.2 プレゼン1 Ms. Park Eunjung (韓国郵便局済州地域事務所)
「デジタル時代の生存者指向アプローチに向けて:済州島四・三事件のアーカイブ実践」
  冷戦期の1948年4月から1954年9月まで韓国済州島では、共産主義者一掃を目的に米国陸軍、韓国軍、韓国警察などにより約3万人の住民が虐殺された。犠牲者や残された者は長年沈黙を余儀なくされたが、1999年に特別法が施行されて以降、韓国の3機関がNARA(米国国立公文書記録管理局)において、この事件に関する記録を収集し、NARAの整理方法に従って文書の公開をしている。しかし公開方法に課題がある。同じ場所で起きた事件の記録が、国務省、統合参謀本部、米国中央情報局などの文書作成者の各資料群に分散しているだけでなく、記録の記述方法もNARAの方法に依拠しており、歴史研究者ではない多くの犠牲者や生存者は知りたい情報に容易にアクセスできない。この課題に挑戦するため、生存者中心のアプローチを適用する方法を提言した[3]。

4.1.2 プレゼン2 Dr. Jo Minji(韓国外国語大学)
「成長から成熟へ: デジタル変革時代のアーカイブズとアーキビスト」
  デジタル技術は、インターネットとモバイル機器によるネットワークの統合により、通信速度に革命をもたらした。もはや現代は速度が力となる時代である。さらに、デジタル技術が社会のあらゆる面で活用されることにより社会構造の変化が起こった。こうした第4次産業革命の時代のアーキビストの役割は、記録のもつ見えない情報を体系化し、アーカイブズが持つ本来の価値を見出すことであり、アーキビストは記録やアーカイブズ管理者でなく知識のキュレーターになる必要がある。同様にアーカイブズ機関は記録保管場所としてよりも記録の価値を扱う機関と位置づけられるべきである。以上の説明に続けて、発表者は、アーキビストは技術に追いつくだけではなく、デジタルコミュニティにどのような感情的なつながりが必要なのか、人間中心のデジタルアイデンティティについて考えていく必要がある、との展望を語った。

4.2 セッション2
4.2.1 基調講演 Mr. Adrian Edward Cunningham(オーストラリア)

「デジタル時代の新たな需要と新たなサービス:デジタル時代におけるアーカイブズの持続可能な発展」
  まず、デジタル時代に向けた新たなサービスの設計をしようと考えるアーキビストにとって、押さえておくべき具体的な流れ(所蔵資料のデジタル化、ビッグデータの登場、ソーシャルメディアの登場、「Archives 2.0.」、メタデータ、レコード・イン・コンテクスト(RiC))を概観した。続いて、将来的な方向性として、「十分な」記録保持の成果を達成するためには、挫折や後退に直面することが避けられないとしても、即効性のある「銀の弾丸」のような解決策は存在しないが、さまざまな優れた標準、ツール、モデルが存在する中で、アーキビストは弾力的で柔軟な、現実的で断固とした態度で臨まなければならない、と挑戦的な態度をとることの重要性を訴えた。

4.2.2 プレゼン3 Ms. Liu Yuenan(中国人民大学)
「ブレークスルーを待つ:中国における電子記録の移管と受入の現状調査」[4]
  アーカイバル・データ・リソース・システムの構築には、電子記録の移管と受入れが、根本的な任務になる。これに関連して中国には、2012年の「電子記録の移管及び受入れのための規則」[5]、2021年に改正された「中華人民共和国档案法」[6]、2023年に施行された「電子記録の移管及び受入れに関する作業手順」[7]があるが、現実にはどのように電子記録の移管がなされているのか。この発表では、中国人民大学情報資源管理学院の研究グループが2021年4月から6月にかけて175の省、市、県レベルの档案館を対象に実施したアーカイブズの移管と受入れに関するアンケート調査の結果に焦点を当てた分析と考察が報告された。調査の結果、省レベルでは電子記録の移管と受入れが進んでおり、2014年以降に電子記録の移管が増大したこと、市レベルでも同様に2014年以降に電子記録の移管が増えていること、受入の量には档案館ごとに大きな差があることなどが明らかになった。また、2012年の「電子記録の移管及び受入れのための措置」では、電子記録はその作成から5年以内に移管するよう規定されたが、その年限以内に移管する省や市もある一方で、作成と同時に移管するところや紙の記録と同じスケジュールで移管するところもあることが明らかになった。最後に、2023年7月に「電子文書保存及び電子記録管理に関する措置[8] 」が発行されたという最新の動向を背景に、今後中国においては速やかなブレークスルーが必要であると結んだ。

4.2.3 プレゼン4 Mr. Simon F.K. CHU(EASTICAアドバイザー)
「伝統的なアーキビストはデジタル時代に生き残れるか」
  発表者によると「伝統的なアーキビスト」とは、主に紙媒体のアーカイブズを扱う人々を指す。アーキビストの責務は、記録を証拠として保存・管理することである。アーカイブズが「証拠」として保存され、説明責任を果たすためには、記録が「コンテンツ」、「構造」、「コンテキスト」の3つの基本的属性を持つよう保存しなければならない。だが、デジタル革命はアーカイブズの作成方法を永遠に変えてしまい、バーチャル又は概念上の存在となった。システムが変わると記録の中身を確認できなくなる恐れがある。伝統的なアーキビストの役割は、この潜在的な危機に対して警告することであると結んだ。

Mr. Zhou Kehu 写真 NAAC

Mr. Zhou Kehu
写真 NAAC

4.3国・地域別報告
  11月30日午前の国・地域別報告のセッションでは、中国、香港、日本、韓国、マカオ、モンゴルの順に、各国・地域から報告が行われた。以下、簡単に各報告を紹介する。

4.3.1 Mr. Zhou Kehu(NAAC)
「中国のアーカイブズのデジタル変革」
  はじめに、伝統的な紙のアーカイブズのデジタル化の進展が説明された。例えば、省レベルでは平均して50%の紙のアーカイブズがデジタル化されている。デジタル化は、原本の保存、労働集約削減とアーカイブズ利用のコストの削減、アーカイブズのデジタルサービスの基盤にすることができると整理された。次に、デジタル時代における利用者のニーズへの対応として、2022年にNAACが中国全土のアーカイブズが一つのサイトから登録のうえ利用できる「全国アーカイブズ申請利用サービスプラットフォーム」[9]を稼働させたことが説明された。最後に、電子文書/アーカイブズの法的効果を法律、規則において明文化してきた変遷[10]や電子記録に係る現行の基準等について説明がなされた。

4.3.2 Ms.Jessica LAU(香港特区政府档案館)
「未来を受け入れ、過去を守る:政府記録サービス業務のハイライト」
  2022年に開館50周年を迎えた同館では、2020年にデジタル収蔵庫が設立され、2021年に電子記録の長期保存についての包括的な研究を終え、2023年には、電子記録の長期保存に関するタスクフォースを設置した。こうした近年のデジタル保存に合わせ、2028年に開館予定の新館について準備が進められている。土地が狭い香港で構想されている新館は、山肌の岩盤をくりぬき、その中に構造物も構える。さらに、革新的な技術と実践により、サービスの向上やアクセシビリティの改善等を目指し、また、利用者の様々なニーズに応えることができる、オンライン/オンサイトのリソースを発展させるなどにより質の高いアーカイブズサービスを提供できる施設にするという。

筧上席公文書専門官 写真 NAAC

筧上席公文書専門官
写真 NAAC

4.3.3 筧雅貴(日本国立公文書館)
「デジタル時代におけるアーキビストと行政職員の育成」
  デジタル時代における当館の取組として、アーキビストの職務基準書を踏まえデジタル時代にも対応できるアーキビストの育成を進めていること、国の行政文書の管理の動向、特に電子的管理への取組に合わせて、行政職員向けの研修を充実させていることが紹介された。

4.3.4 Ms.Park Minyea(韓国国家記録院)
「発展途上国におけるアーカイブ記録の保存とデジタル化を確実にするためのキャパシティ・ビルディングに対する韓国国家記録院の情熱と行動」
  記録遺産は人類にとってかけがえのない遺産であるという考えのもとに同院が行っているODA(政府開発援助)を用いた国際貢献について、ミャンマー、コートジボワール、モロッコ、カンボジアでのデジタル化の事業を中心に発表がなされた。同院はこれらの国における文書のデジタル化と同時に人材育成も行っている。このうちミャンマーのプロジェクトは、新型コロナウイルス感染症と現地の政治情勢により現地で行えなくなっているため、ユネスコと協力をしてオンラインでのワークショップを検討中とのことであった。また、カンボジアでは、カンボジア上院でデジタルアーカイブの構築を支援するプロジェクトの実施可能性を評価するための準備調査を行っており、2024年にこのプロジェクトの実施を支援する予定であるという。韓国のアーキビストはこうした協力を通じてデジタル時代に国際コミュニティに貢献していると説明がなされた。

4.3.5 Ms.Chan Veng Ian(マカオ档案館)
「マカオ档案館における記録のデジタル化と活用の現状」
  マカオ档案館が1990年代に文書のバックアップを終えたが、主にマイクロフィルムで複製を作成した。その後、同館は2001年にデジタル化プロジェクトを本格的に開始し、現時点でマイクロフィルムコレクションのデジタル化率は70.1%、紙のアーカイブズのデジタル化率は45.06%である。近年、マカオ特別行政区政府が推し進める「電子政府」[11]の中で、電子記録の移管のための移管管理システムを開発する計画が生まれた。新しい档案法[12](2023年3月公布)が2024年3月に施行されるが、同館は、これらの施行にあわせて標準やガイドラインの準備をすすめている。

4.3.6 Ms. Rinchinnorov Battogokh(モンゴル公文書管理庁)
「デジタル時代におけるアーキビストとアーカイブズの役割」
  モンゴル政府は、長期目標の「ビジョン2050」と「デジタル統合の政府サービス」などを通して、政府のサービスをデジタルにより統合しようと努力をしている。2020年には「Eモンゴル」システムが導入された。さらに、モンゴル政府は2021年から2030年のアクションプランにおいて、通信技術を活かしたサービスの推進をうたっている。こうした環境下でアーカイブズに関して文書のデジタル化をさらに進めるとともに、アーキビストはデジタル技術の能力とスキルを高める必要がある。モンゴル政府事務総局は「アーカイブズインフラと技術整備の集中建設」プロジェクトを実施し、2024年までにアーカイブズ情報管理サービス集中システム、政府アーカイブズシステム、アーカイブズ登録・保存・利用システムのデジタル化、アーカイブズ登録・管理システムなどが完全に統合される予定である。これらのシステムの導入により、デジタル変革によるアーカイブズ、行政、管理活動の強化が目指されている。

質疑応答 写真NAAC

質疑応答
写真 NAAC

4.3.7 質疑応答
  達成ばかりが語られたが、それぞれの課題は何か、という本質的な質問が全報告者に投げかけられた。中国のZhou氏は、つねに技術が変わり続けているため、業務に終わりがないと回答。当館の筧上席公文書専門官は、電子的な記録は様々な形式で作成され、保存されているが、時間の経過により将来利用できなくなるものも出てくる。それを防ぐために、現在、長期的な保存に適したフォーマットについて調査研究を行っていると回答した。


5.視察
  11月30日午後に深セン市档案館及びArton美術センターを、12月1日午前に、福田マングローブ自然保護区及び南頭古城を視察した。

深セン市档案館が入る深セン档案センター

深セン市档案館が入る深セン档案センター

5.1 深セン市档案館
  1階エントランスの大画面を使った概要説明のあと、館内視察を行った。この档案館の特徴としては、深セン経済特区の開発にともなう設計図面などを開発業者に求めて提出させ、保管していることである。館内視察では、映像フィルムの媒体変換作業が興味深かった。
  館内の各作業場所の視察の後に、「深セン経済特区档案文献展」を観覧した。深センの開発計画について、整地され建物がまったくない更地から、現代に至る開発と発展の変貌を、複製の文書パネルや写真を十分に用いた展示がなされていた。

5.2 Arton美術センター
  美術に関する高画質データを用いて、書籍、図録のほか様々な複製品をつくる企業の展示施設と作業現場を見学した。高精細データは、深センと上海にストレージされており、いずれかがダウンしても稼働できるような仕組みとのことであった。

5.3 福田マングローブ自然保護区
  渡り鳥の南北移動通路における重要な「経由地」であるマングローブ(紅葉樹)の保護地域を見学した。同地には世界初の「国際マングローブセンター」の設立が決まっている。

5.4 南頭古城
  福田マングローブ自然保護区の訪問後に、西安県のかつての行政の中心地にある歴史的町並みを視察した。2020年8月に改修工事を終えた街区には、カフェ、お土産屋が軒を並べていたが、小規模ながらスタイリッシュな展示施設も併設され、かつての街の賑わいを立体的に楽しめる空間演出がなされていた。

6.おわりに
  東アジアのアーキビストが、同じテーマのもとで語り合う場に参加し、各国の最新情報に触れる機会を得ることができた。
  4年ぶりに対面で開催された本会合では、多くの参加者が対面で会えること、交流を深めることができることへの喜びを語りあっていたのが印象的である。筆者は国際業務を担当するようになりまだ1年弱だが、それでも、日ごろメールでのみやりとりをしていた各国の国際担当者と直に挨拶をして会話をすることができたのが何よりもうれしく感じられた。
  中国国家档案局と深セン市档案館の入念な準備と、あたたかいもてなしの中、アーカイブズについてだけでなく、深センの歴史や文化、自然に触れることができた。本稿で報告したとおり、2024年は日本でセミナー等を開催する。多くの方にとって得るものがあるような会合としたい。

ライトショー 写真NAAC

ライトショー
写真NAAC

EASTICA30周年のケーキカット

EASTICA30周年のケーキカット


〔注〕
[1] アーカイブズに関する国際的な非営利かつ非政府の組織として1948年に設立された国際公文書館会議(International Council on Archives 、ICA)には、ICAの目的を世界の各地域で遂行するために設立された13の地域支部がある。EASTICAはその1つとして1993年に設立された。構成国と地域は、日本、中国、韓国、北朝鮮、モンゴル、香港、マカオ(5か国2地域)である。昨年2023年は、EASTICA設立30周年にあたる年であった。
[2] http://www.eastica.net/home/sub.php?menukey=30090
[3] 質疑応答時に、生存者中心のアプローチについて具体的に質問を受けた発表者は、整理方法を変えるのではなく、目録記述を修正、あるいはキーワードを追加することで、容易な検索を促すという解決策を回答した。
[4] Liu氏の英語原稿において「records」と表現されたところは「記録」、「document」は「文書」、「archives」は「アーカイブズ」と訳出した。
[5] 「電子記録の移管及び受入れのための規則」(2012年9月5日発行)
https://www.saac.gov.cn/daj/tzgg/201212/fe663e208cf544c8a49632db04567b83.shtml(2024.01.16 アクセス)
[6] 「中華人民共和国档案法」(2020年6月20日公布、2021年1月1日施行)
https://flk.npc.gov.cn/detail2.html?ZmY4MDgwODE3MmI1ZjI0ZjAxNzJlNGVmMDVlMjE4ZDQ%3D(2024.01.16 アクセス)
[7] 「電子記録の移管及び受入作業手順」(2022年4月7日発表、2022年7月1日施行)
https://www.saac.gov.cn/daj/hybz/202206/b3f09b7a7c8744b2a5aa94c9f61fd4e0/files/2f523ce74ccf4b799f65bf955fee8115.pdf(2024.01.16 アクセス)
[8] 「電子文書保存及び電子記録管理に関する措置」(2023年7月30日成立、2023年8月22日公表)
https://www.gov.cn/zhengce/content/202308/content_6899493.htm(2024.01.16 アクセス)
[9] https://cxly.saac.gov.cn/(2024.01.16 アクセス)
[10] 以下は言及された法律等のうち主なもの。
「中華人民共和国民法一般原則」(2017年3月15日公布、2017年10月1日施行)第百三十七条がデータメッセージの有効性について言及。
https://flk.npc.gov.cn/detail2.html?MmM5MDlmZGQ2NzhiZjE3OTAxNjc4YmY4NDc5YjA5ZGQ%3D(2024.01.16 アクセス)
「中華人民共和国電子商取引法」(2018年8月31日公布、2019年1月1日施行)第十四条が電子請求書と紙の請求書が同じ法的有効性を持つと規定。
https://flk.npc.gov.cn/detail2.html?MmM5MDlmZGQ2NzhiZjE3OTAxNjc4YmY4YWYwNTBiODE%3D (2024.01.16 アクセス)
「オンライン政府サービスに関する国務院のいくつかの規定」(2019年4月30日公布・施行)第十条が電子証明書と紙の証明書は同じ法的有効性を持つと規定。第十二条が、管理要件を満たす電子記録は、紙の記録と同様の法的効力を持つと規定。
https://flk.npc.gov.cn/detail2.html?ZmY4MDgwODE2ZjNjYmIzYzAxNmY0MTQ2OGNlODFmYjg%3D(2024.01.16 アクセス)
「中華人民共和国档案法」(2020年6月20日公布、2021年1月1日施行)第五章(第三十五条から第四十一条)に記録の情報化の章がはじめて設けられ、第三十七条で電子記録は伝統媒体の記録と同じ有効性を持つと規定されただけでなく、第三十五条で電子記録の安全な管理と利用をはじめて規定。
https://flk.npc.gov.cn/detail2.html?ZmY4MDgwODE3MmI1ZjI0ZjAxNzJlNGVmMDVlMjE4ZDQ%3D(2024.01.16 アクセス)
 本档案法の改正については次の紹介記事がある。湯野基生「立法情報 【中国】アーカイブ法の改正」(国会図書館『外国の立法』No.287-1(2021年4月:月刊版))
 https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11659068_po_02870112.pdf?contentNo=1(2024.01.16 アクセス)
「電子文書保存及び電子記録管理に関する規則」(2023年7月30日成立、2023年8月22日公表)第四条で信頼できる情報源、処理の標準、準拠した要素を備えた政府サービスの電子文書は、電子形式でアーカイブしてアーカイブズ部門に移管でき、法律及び行政規則で別途規定されている場合を除き電子文書は紙形式でアーカイブ及び移管はしないと規定。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202308/content_6899493.htm(2024.01.16 アクセス)
[11] 「電子政府」(マカオ特別行政区第2/2020年法律) https://bo.io.gov.mo/bo/i/2020/13/lei02_cn.asp (2024.01.16 アクセス)
[12] 「档案法」(マカオ特別行政区第3/2023号法律)https://bo.io.gov.mo/bo/i/2023/11/lei03_cn.asp (2024.01.16 アクセス)