久喜市公文書館~開館30年を迎えて~

久喜市公文書館
丸山 謙司

久喜市公文書館全景

久喜市公文書館全景

1.久喜市の位置
  久喜市は、関東平野のほぼ中央にあたる埼玉県の北東部に位置し、東京都心まで50㎞圏内にあり、市民の多くは東京方面への通勤者で占められている。
  平成22年に久喜市、菖蒲町、栗橋町、鷲宮町の1市3町が合併、人口150,000人を超える新久喜市が誕生した。

2.施設の概要
  久喜市公文書館は、平成5年10月に開館した。本庁舎のすぐ東側に位置し、鉄筋コンクリート造2階建、延べ床面積1,680㎡である。
  主な施設は、1階中間庫334㎡、2階中間庫20㎡、一般保存庫177㎡、その他収蔵庫2室を含め収蔵施設が595㎡である。その他閲覧室63㎡、展示室87㎡などがある。
  保管資料の増加に伴い、平成29年度に施設の大規模改修を行った際、設計時より中間庫に改修できるようにしてあった3部屋の会議室を新たに中間庫とした。

3.公文書館建設に至る経緯
  公文書館建設に至るまでには、主に以下の3点が契機となった。
  ①今まで簿冊で管理していた公文書を、昭和59年にファイリングシステムを導入し、昭和61年にほぼ完了したが、文書量が増え、文書庫が狭隘化し、分散保管されていた。
  ②情報公開制度の導入を検討していたところであったが、そのためには、適切な文書の保存管理が必要であった。
  ③市史編さん事業の完了に伴い、収集した資料の受入れ、管理の問題があった。
  そのようなことから、平成元年から公文書館建設の計画がスタート
し、平成4年に開設準備室が設置され、翌年開館となった。

4.施設の目的
  施設設置の目的は、「歴史資料として重要な市の公文書その他の記録を保存し、市民の利用に供するとともに、市政に関する情報を市民に提供し、もって学術及び文化の発展と開かれた市政の推進に資するため」である。(久喜市公文書館条例)
  そのため、透明性の高い行政運営を確立し、情報公開等にも対応した公文書の適正な管理を目指している。

5.職員体制と所掌事務
  現在、公文書館は市長部局総務部に所属しており、職員は兼務の管理職2名を含め5名体制であり、専門職は配置されていない。
  所掌事務は、以下のとおりである。
    ①歴史公文書の保存及び利用に関すること
    ②公文書館活動としての調査及び研究に関すること
    ③非現用文書の管理に関すること
    ④ファイリングシステムに関すること
    ⑤情報公開制度に関すること
    ⑥個人情報保護制度に関すること
    ⑦行政資料コーナーに関すること
    ⑧審議会の会議に関すること
    ⑨施設の維持管理に関すること

6.公文書館の利用
  当館は、開館日が月曜日から金曜日まで、開館時間が午前9時から午後5時までである。
  公文書館の利用は、本庁舎に隣接している立地条件もあり、市民の方よりも職員の利用が多く、令和4年度公文書の閲覧などの利用は、市民の方が延べ312人、職員が延べ882人であった。

7.公文書の保存と歴史公文書
(1)歴史公文書
  当館で位置づける歴史公文書とは、公文書のライフサイクルの流れに位置付けられ、公文書館に正しく引継及び移管され保存年限を過ぎたものを公文書館の職員が評価選別し「特定歴史公文書」としている。
  また、市民への配布及び閲覧を目的として作成された図書、冊子、広報紙等の印刷物を「行政資料」としており、「特定歴史公文書」とあわせて「歴史公文書」として位置付けている。(久喜市公文書館における歴史公文書の取扱いに関する要綱)
  なお、行政資料は当該主管課から2部提出され、1部を閲覧室に配架し一般の利用に供し、もう1部を歴史公文書として一般収蔵庫で保管している。

(2)公文書の発生から廃棄まで
  現用公文書は発生から2年目で、1年保存及び事業が継続しているものなど一部の文書を除き、すべての主管課から公文書館に引継がれる。その際には、主管課と公文書館でファイル基準表を基に保存年限やファイル数等を確認のうえ、引継を行い中間庫に保管される。
  公文書の保存年限は1・3・5・10・30年、すべて保存年限が決められている。
  本館の特徴的な保存方法として、30年保存を除き、評価選別に至るまでには、3年保存はさらに3年、5・10年保存はさらに5年を経てから評価選別を行っていることである。その理由としては、社会や市政の情勢等時代の変化に対応することができるようにするためである。この間については、非現用公文書となるが、情報公開条例に基づき、公開の対象としている。
  また、レセプト、会計の伝票類、定例的な申請書など、一つの主管課で大量に発生する文書で、歴史公文書として評価選別の対象としないと判断した文書は、「別置文書」とし、保存年限満了後に延長保存はせず廃棄するものとしている。

「公文書のライフサイクル」

「公文書のライフサイクル」

(3)評価選別
  「別置文書」以外の上記年限を満了したものは、評価選別の対象となる。
  選別には、1~2名の職員が当たり、「久喜市特定歴史公文書評価選別のためのガイド」を基に行うが、当該年度の社会情勢や市政における特徴的、重要な出来事を踏まえ、総合的に判断する。
  その方法は、文書1点ずつの内容を確認し、評価選別する。最終的には、特定歴史公文書と廃棄文書の一覧表を庁内で公開し、主管課の意見を聴取し、必要に応じて見直しを図っている。
  選別されたものは1点ごとに中性紙製の個別フォルダーに保存し、登録番号を付し、目録を作成する。また、まとまったフォルダーは中性紙製保存箱に収納する。その後、くん蒸を行い一般保存庫に収蔵する。
  当館の特徴の一つは、文書の発生から保存・廃棄までのライフサイクルに公文書館の職員がすべて関わることである。
  なお、特定歴史公文書と行政資料を合わせた歴史公文書数は、41,867点である。(令和5年4月1日現在)

(4)平成の合併時の公文書の取扱い
  平成22年の合併時には、旧久喜市以外でも3町すべてにおいてファイリングシステムが導入されてはいたが、公文書館施設や公文書館的機能はなかった。
  そのため、合併時の各市町との調整で、旧久喜市の方式を採用することとし、公文書館がその役割を担うこととなった。しかしながら、3町すべての公文書は公文書館には保管しきれないため、各総合支所となった旧町役場の書庫に保管されている。
  なお、旧町の公文書も保存年限の満了に伴い、公文書館職員が赴き、評価選別を行い、歴史公文書として選別したものは公文書館で収蔵している。
  また、旧町で永年保存文書とされていたものは30年保存と改め、少しずつ評価選別を進めている。

8.公文書館の普及事業
  公文書館の大きな使命に市民への公文書の利用・普及に関することがある。
  主な利用や普及に関する事業として、閲覧室における行政資料の閲覧、展示室の公開、申請に応じた歴史公文書の公開等がある。
  閲覧室では、公文書館が収集した行政資料を、自由に閲覧することができる。
  展示室では、常設展と企画展を行っている。常設展示は、「公文書館へようこそ-久喜市公文書館案内-」と題して収蔵資料を活用し、公文書館の業務の紹介を行い、館活動への理解を深めることをねらいとしている。
  企画展は年1回実施している。現在は、評価選別した歴史公文書を中心に、その成果を発表する機会としている。令和2年度からは、平成22年に合併した1市3町における昭和の合併に焦点を当て、毎年1地区ずつ合併前後の資料を展示し、その成り立ちを振り返っている。
  市民の閲覧や展示等を見た者は年間約300人余りである。

9.今後の課題
  今後の課題として、収蔵庫の狭隘化に伴う公文書の保存年限の見直しや保存資料の電子データ化、新たな公文書の電子化等を含め、公文書の取扱いに関する検討が必要である。
  また、大きな課題として、全国的に問題となっている公共建築物の老朽化について、当館も建築後30年が過ぎ、施設の改修や建てかえの時期を迎えることから、「久喜市公共施設個別施設計画」に基づき、公文書館のあり方についての見直しが求められている。

10.おわりに
  すでに、公文書の発生から評価選別に至るまでのシステムが定着していたため、13年前の市町合併に対しても、混乱もなく組織的、体系的な公文書館の運営を継続することができている。
  今後、益々公文書館の重要性が求められていく中、公文書館職員として、常にスキルアップし、公文書を通じて開かれた市政を目指し、市民の要請に的確に対応できる館活動に努めていきたいと考えている。