研修の重要性等について

国立公文書館
公文書管理分析官 小林 真一郎

1.はじめに
  国立公文書館開館50周年、公文書管理法施行10周年となった昨年(令和3年)は、いわば「節目」の年でもあり、国立公文書館においては文書管理の歴史に関する連続企画展も開催されました。
  同時に、社会におけるデジタル化の急速な進展など、公文書管理・公文書館制度をとりまく状況が近年大きく変化しつつあることも随所で指摘されるようになりました。
  このような変化に的確かつ適切に対応するためには、文書管理に従事する職員一人ひとりに必要とされる知識・技能の習得・向上のための「研修」がより一層重要なものとなるとともに、高度の専門的知見を蓄積している国立公文書館等がそのような場面において果たす役割も今後益々大きくなっていくものと考えられます。
  本稿においては、こうしたような認識に立ち、関係法令等における研修関連規定に関して、国立公文書館等が果たしている役割に力点を置きつつ、その概要を要点のみ略述するものです。

2.行政機関の長及び独立行政法人等による研修
  行政機関の長及び独立行政法人等は、それぞれ、当該行政機関又は当該独立行政法人等の職員に対し、公文書等の管理を適正かつ効果的に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとされています(公文書管理法第32条第1項)。
  このうち行政機関における研修の実施に関しては、総括文書管理者は、各職員が少なくとも毎年度1回、研修を受けられる環境を提供しなければならないとされています(行政文書の管理に関するガイドライン 第9研修 1研修の実施)。
  また、文書管理者は、各職員の受講状況について、総括文書管理者に報告しなければならないとされています(同上)。
  「令和3年度における公文書等の管理等の状況について」(令和4年11月内閣府大臣官房公文書管理課)によれば、行政機関は延べ60,834回の研修を実施しており、参加職員数は延べ898,325人であった旨の記述がなされています。

3.国立公文書館等による研修
  国立公文書館は、行政機関及び独立行政法人等の職員に対し、歴史公文書等の適切な保存及び移管を確保するために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとされています(公文書管理法第32条第2項)。
  これに加えて、国立公文書館等は、その職員に対し、歴史公文書等を適切に保存し利用に供するために必要な専門的知識及び技能を習得させ並びに向上させるために必要な研修の機会を与えるものとし、必要に応じて、その研修を行うこともできるとされています(特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン 第30条第1項)。
  また、その職員以外の職員(移管元行政機関等の職員)に対しても、歴史公文書等の適切な保存及び移管を確保するために必要な知識及び技能を習得させ並びに向上させるために必要な研修の機会を与えるものとし、必要に応じて、その研修を行うこともできるとされています(特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン 第30条第2項、同留意事項)。
  「令和3年度における公文書等の管理等の状況について」によれば、国立公文書館等は、57回の研修を実施しており、各関係機関から9,758人が参加した旨の記述がなされています。
  また、国立公文書館等においては、研修の実施のみならず、関係機関からの要望に応じて、各種会合等に講師を派遣し、歴史公文書等に対する理解を深めるための取組を行っており、計31回の講師派遣の旨の記述がなされています。

4.研修・講師派遣における高度の専門的知見の活用
  これまでの公文書管理委員会においては、国立公文書館から、地方に勤務する職員や多様な働き方に対応するため、集合研修に加えて、eラーニング教材の提供や研修のインターネット同時配信などを行っている旨、また、各行政機関が実施する公文書管理研修に、評価選別担当の専門官を講師として派遣した旨の説明もありました。
  高い専門性を有する国立公文書館等が蓄積している高度の専門的知見を、関係諸機関とも連携しつつ、研修・講師派遣の場面においても活かしていくことが今後より一層重要になってくるものと考えられます。

※本文関連の参考
【内閣府ウェブサイト】
○ 関係法令・通知等(上記引用条文の詳細は、こちらを参照願います)
 https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/hourei.html
○ 公文書管理委員会(2022年度)開催状況等(「行政文書管理状況報告」等配布資料掲載箇所)
 https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2022.html
【国立公文書館ウェブサイト】
○ 展示会情報
 https://www.archives.go.jp/exhibition/
○ 過去の展示会
 https://www.archives.go.jp/exhibition/past.html
○ 連続企画展3「近現代の文書管理の歴史-記録を守る、未来に活かす。-」(令和4年1月15日~3月13日)解説動画
 https://www.archives.go.jp/news/20220304.html
 (これらのウェブサイトは、展示構成・展示資料の紹介はもとより、閲覧室やデジタルアーカイブなどの利用につながる契機ともなり得る内容にもなっています)