金沢市公文書館の開館について

金沢市公文書館
主査 山口 涼子

建物外観

建物外観

1 はじめに
  金沢市公文書館は、市制施行(明治22年)以後の歴史資料として重要な公文書等を保存し、閲覧に供するとともに、これに関連する調査研究を行う施設として、令和4年4月17日に開館しました。
  当館は、学校規模の適正化等を目的とする教育施設等再整備事業の一環として、小学校や図書館と一体的に整備を行い、児童図書を中心に取り扱う図書館に併設されました。

2 公文書館設置の経緯
  金沢市では、公文書等の管理に関する法律の施行を踏まえ、平成23年度に有識者による金沢市公文書選別基準策定委員会を設置し、当市の公文書で保存年限を経過したものの中から、引き続き保存すべき歴史公文書を収集するための選別基準を策定しました。また、公文書館の設置について研究を進める必要があるとの提言も受けました。
  平成24年度からは、公文書選別基準に基づく歴史公文書の選別を試験的に実施するとともに、平成25年2月に有識者による金沢市歴史公文書保存・公開検討委員会を設置し、公文書館の役割、必要性等について検討を行い、同年12月に提出された審議結果報告書において、極力早期に全庁的な選別を実施すること及び公文書館を設置すべきであるとされました。
  これを受けて、平成26年度から全庁的な歴史公文書の選別を開始しました。また、当市の令和4年度までに取り組むべき施策を取りまとめた「世界の交流拠点都市金沢重点戦略計画」(平成26年2月策定)において計画期間の中期(平成30年度まで)での公文書館整備を位置づけ、既設施設の有効活用を念頭に設置場所等の検討を行うこととしました。しかし、全庁的な歴史公文書の選別の結果、永年保存文書からの選別、効率的かつ適正な文書管理体制の確保等が必要であることから、整備スケジュールを見直し、平成28年2月の計画改訂により後期(令和4年度まで)で整備を行うこととしました。

施設の配置図

施設の配置図

  その後、公文書館の整備に向けた基本計画について、平成29年度に設置した有識者による金沢市公文書館(仮称)整備基本計画検討委員会で検討を行いました。また、同時期に、教育委員会において学校規模の適正化等を検討する中央地区教育施設再整備検討懇話会が開催され、小中学校の移転改築と併せて、玉川こども図書館の改築についても議論されていました。これを受けて、公文書館を玉川こども図書館と同一建物内に設置することが望ましいとの意見があり、それぞれの委員会又は懇話会での議論を踏まえた上で、玉川こども図書館の改築に併せて公文書館の整備を行うことが、平成30年2月に策定した金沢市公文書館(仮称)整備基本計画に盛り込まれました。その内容は、市制施行以後の歴史公文書を取扱う公文書館を、古文書を保存する近世史料館や郷土資料を保存する玉川図書館に隣接した玉川こども図書館に併設することで、知的資源の集積を図り、施設間の連携協力を推進するというものでした。
  建設工事は、中央小学校と玉川こども図書館と一体的に実施し、平成30年度に基本設計、令和元年度に実施設計を行い、令和2年7月に着工、令和4年3月に竣工しました。
  公文書館の設置に先立ち、公文書等の管理に関する基本的事項を定め、行政文書を適正に管理し、歴史公文書等を適切に保存、利用できるよう金沢市公文書等の管理に関する条例を令和3年3月に制定し、同年4月1日(特定歴史公文書等の保存・利用等に係る部分は令和4年4月1日)に施行しました。あわせて、金沢市文書管理規程を制定し、文書の管理体制の明確化、保存期間の設定ルールの見直し、歴史公文書等の移管ルールの設定等を行いました。行政文書の保存期間として、これまで永年保存がありましたが、公文書館に移管し、永久保存するルール整備ができましたので、このタイミングで、最長で30年保存を原則とすることに改めました。
  また、令和4年3月に金沢市公文書館条例を制定し、公文書館法の規定に基づく設置であることを明記しました。

閲覧室の様子

閲覧室の様子

3 公文書館の取り組み
  当館の所蔵資料は、主に市制施行以後の特定歴史公文書等と行政刊行物になります。目録検索システムを導入し、インターネットから当館の所蔵資料を検索できるようにしています。特定歴史公文書等は、金沢市公文書等の管理に関する条例に基づく利用請求の対象となり、利用請求を受けて審査を行い、原則15日以内に利用決定を行います。行政刊行物は、閲覧室において自由に閲覧できるようにしています。なお、所蔵資料はまだ多くはなく、順次、選別と移管を進め、資料を増やしていく段階にあると考えています。また、今後、利用者の利便向上のため、特定歴史公文書等の簡便利用として、当日利用ができるように利用審査をあらかじめ実施することも必要になると考えています。
  また、限られたスペースですが、閲覧室内に展示コーナーを設置し、歴史公文書等や市政について紹介を行っています。開館時には、市制施行について紹介し、関連する資料の展示を行いました。
  当館の特色としては、児童図書を扱う玉川こども図書館と併設している点が挙げられます。図書館が実施する児童招待事業等と連携しながら、未来を担う子供たちに公文書館について知ってもらうとともに、当市の歴史や市政に興味関心を持ってもらえるような取り組みを行いやすい環境にあると考えています。開館後まだ日が浅く、実績は多くありませんが、図書館で受け入れを行った小中学生に、公文書館の案内を行い、歴史公文書等を後世に残していく事業について知ってもらう機会がありました。今後も、施設間での連携協力を図りながら、普及活動を行っていきたいと考えています。

4 終わりに
  当館には、アーキビスト等の専門職がいないため、設置目的にも掲げた調査研究のほか、様々な面で手探りの状態ではありますが、先進の公文書館での取り組み等を参考にさせていただき、前進していきたいと考えています。
  重要な歴史公文書等を後世に残し、市民の皆様に利用していただくという使命のもと、公文書館を適切に運営してまいります。

データシート
機関名:金沢市公文書館
所在地:金沢市玉川町2番2号
電話/FAX:076-254-0611/076-222-0610
Eメール:koubunsyokan■city.kanazawa.lg.jp(■を@に替えてください。)
ホームページ:https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/bunshohoseika/gyomuannai/archives/archives.html
交通:JR金沢駅から徒歩約15分
開館年月日:令和4年4月17日
設置根拠:金沢市公文書館条例
組織:金沢市総務局文書法制課-公文書館
人員:館長(文書法制課長兼務)1名、主査2名、会計年度任用職員4名
建物:鉄骨造(一部鉄筋コンクリート造) 地下1階地上3階建て
        延床面積3,187㎡のうち、公文書館専用面積409㎡
所蔵資料:特定歴史公文書等、行政資料
開館時間:午前10時から午後5時まで
休館日:月曜日(祝日は開館)、年末年始、その他市長が定める日
主要業務:特定歴史公文書等の選別、受入、整理及び保存
特定歴史公文書等の利用
特定歴史公文書等の調査研究及び普及啓発