巻頭言 国立公文書館理事就任のご挨拶

国立公文書館
理事 山谷 英之

  本年6月28日に国立公文書館の理事に就任いたしました山谷と申します。
  平成3年に省庁再編前の総理府・総務庁に入庁して、30年超の公務員生活となりますが、公文書館や公文書管理の業務に直接携わることは今回が初めてです。
  これまで、「公文書館」のイメージとしては、大学時代によく読んでいた近現代の外交史などの本の中で、アメリカの公文書館の資料を使って、意思決定過程を研究していたものがあったことを覚えておりますが、日本の国立公文書館については、歴史的な公文書を保管しているところ程度の認識しかありませんでした。
  ただ、これまで担当した業務の中でも、特に公文書の重要性が感じられる業務もあります。
  例えば、沖縄関係の担当していた時に、位置境界明確化事業といって、太平洋戦争による破壊などによって土地の形質が変更されたり、戦前の土地登記簿、公図等が滅失したため、土地の位置境界が明らかでなくなった地域が広範囲に存在していたことから、その解決を図るという事業を担当していたことがあります。これはまさに公文書の滅失が原因の1つとなっており、公文書の重要性が実感される例だと思います。
  また、北方領土問題に関する啓発活動を行う業務を担当していたことがありますが、国や地方公共団体では、啓発活動の一環として、日本が北方領土を統治していた時の文書や写真などの展示をしております。北方領土問題を実感するには、実際に根室の更に東の先にある納沙布岬や知床半島の東側の羅臼などから北方領土の島を見て、その近さを実感することに加えて、こうした実際に日本が統治していた時の「生の」証を活用して北方領土問題を身近に捉えていただくということが重要であると思います。
  この10年間ほど、私自身も、勤務していた様々な部局で、公文書管理制度実施のための作業を行ったり、研修を受けたりして、公文書管理の重要性に対して関心が高まっていることを感じてきました。公文書管理法施行後、間もなく15年を迎えます。この間、様々な制度の見直しが行われてきたと承知していますが、まだまだ課題が山積みであると存じます。
  国立公文書館でも、新館の建設、アーキビストの育成、電子化への対応など課題はたくさんあります。私も、我が国の公文書館及び公文書管理制度の発展に貢献できるよう尽力する所存ですので、よろしくご指導・ご鞭撻をたまわりますようお願い申し上げます。