建築を見る

国立公文書館
理事 中田 昌和

  本年、まだ雪がちらつく季節に東北大学を訪問した。関係の先生方と認証アーキビストに関する打ち合わせ等をさせていただいたのだが、その際、東北大学資料館とその展示をじっくり拝見する機会をいただいた。非常に親しみやすく工夫され、興味深い資料が展示されていて、もちろん、魯迅に関する展示も拝見できた。また、この建物については、同史料館HP[1]によると「1924年(大正13年)に東北帝国大学附属図書館本館として建設された建物」で、「設計者は当時文部省の技師であった小倉強氏(のち東北大学工学部建築学科教授)。ネオ・ルネッサンス様式と呼ばれる様式」とされており、外から見ても、中に入っても、非常に魅力ある建物である。
  まことに個人的な話で恐縮だが、明治以降の日本の名建築を見ると、なぜか心が落ち着くような気がする。先日、ふと思い起こして『明治大正昭和建築写真聚覧』(藤井恵介・角田真弓編 平成24年 文生書院)を改めて眺めてみた。建築ごとに一枚の写真で、必ずしも鮮明なものばかりというわけではないが、このような形でさまざまな日本の建築をまとめて見ることができるのはありがたい。この本は、「序文」にもある通り、昭和11年に建築学会が刊行した『明治大正建築写真聚覧』[2]をもとにしつつ、昭和初期の建築の写真も合わせて収録して刊行されたものである。
  この『明治大正昭和建築写真聚覧』に載っている建築達は、既に地震火災、戦災、解体等により現存しないものも多い。建築は、建物自体が失われてしまうと、写真や図面等で往時を偲ぶしかないのだが、東京駅舎や日本橋辺りの銀行、デパートなどなお現存する建築の周りを歩いてみると、新たに手を加えられつつ立派に利用されている建物からは、歴史の重みも感じることができる。
  最近では、迎賓館赤坂離宮に赴き、庭園からの壮麗な姿に改めて感銘を受け、またかつて、皇居前の第一生命ビルのマッカーサー記念室[3]の特別公開を見に行ったときには、想像より小さな部屋で驚いたものである。当館関係でも、新館に向けて、建物だけでなくさまざまな検討が進められているが、そういう時期にあって、改めて博物館明治村(愛知県犬山市)を訪れ、移築された「内閣文庫」[4]をじっくりと見てみたいと思う次第である。

[1] 東北大学史料館/史料館概要
http://www2.archives.tohoku.ac.jp/gaiyo.html
[2] 「明治大正建築写真聚覧」(国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1223059
[3] 第一生命保険株式会社/マッカーサー記念室
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/public/event/public_open.html
[4] 博物館明治村/「内閣文庫」
https://www.meijimura.com/sight/%E5%86%85%E9%96%A3%E6%96%87%E5%BA%AB/