新潟市文書館の開館について

新潟市文書館主幹(学芸員・認証アーキビスト)
長谷川 伸

新潟市文書館の外観と正面玄関

新潟市文書館の外観と正面玄関

はじめに
  新潟市では、令和4(2022)年1月8日(土)に待望の「新潟市文書館」が開館しました。これに先立つ令和3年3月26日に新潟市公文書管理条例が公布され、新潟市(以下「当市」という。)は名実ともにアーカイブズの時代を迎えました。当市のこれまでの歴史資料・公文書等の保存・公開に関する事業の取り組みについては、『アーカイブズ』第49号の拙稿に譲ることとし[1]、今回は、新潟市文書館(以下「文書館」という)の設置に至る経緯と文書館の特徴を中心にご紹介いたします。


閲覧室の様子

閲覧室の様子

1.文書館の設置まで
  新潟市(文化スポーツ部歴史文化課)は、平成25(2013)年3月、「(仮称)新潟市文書館整備基本計画」を策定しました。本整備基本計画では文書館の基本目標を定めるとともに、資料保存、調査研究、歴史編さんと情報発信、資料・歴史情報の公開・提供の4つの基本機能を文書館の中核に位置づけ、施設の設置に当たっては、既存施設の有効活用等の考え方を示しました。
  文書館は、当市の公共施設の再編などの動きの中、地域ごとの公共施設のあり方について策定された実行計画において、廃校となる小学校校舎を有効活用して整備されることとなり、令和元年度に基本・実施設計、令和2年度に施設の改修工事を行い、令和3年度中の開館を目指して準備してきました。
  また文書館の設置とあわせ、「新潟市公文書管理条例」が、現用文書所管課の総務部総務課で整備され、文書館開館に先立って令和3(2021)年10月1日に基本施行されました(特定歴史公文書に係る部分は文書館開館時、行政文書の整理に係る部分は令和4年4月1日より施行)。この条例の制定により、職員は文書の作成が義務付けられ、現用から特定歴史公文書の利用に至るまで、文書の一体的な管理が可能になりました。とりわけ、条例施行後作成される行政文書については、これまで歴史文化課職員が担ってきた歴史公文書としての評価選別を、実施機関の職員が判断することが大きな変更点です。
  文書館施設となった旧太田小学校は、明治7(1874)年10月、村内の寺のお堂を借りて創立されました。明治15(1882)年新潟県第二中学区第八番公立葛塚校から分離独立し太田校と称し、その後太田尋常小学校、戦後は(豊栄町立→豊栄市立→新潟市立)「太田小学校」として歴史を重ねた学校でした。しかし、少子化の波により統合されることとなり、平成30(2018)年3月末で閉校となりました。145年の歴史を重ねた太田小学校は、地域の人々にとってかけがえのないものであることから、文書館の整備に際しては、歴史的な価値のある学校資料の保存の観点はいうまでもなく、地域の人々と学校の思い出や歴史を紡いでいけるように、太田小学校の校歴資料の展示を行うこととしました。

校歴展示の一部

校歴展示の一部

2.新潟市文書館の特徴
  文書館が所蔵する資料は、市政を検証するために後世に残すべき重要な文書の内、保存期間満了後評価選別を行って残した行政文書や、個人の方などから寄贈を受けた文書などの「特定歴史公文書」のほか、図書・刊行物・その他複製資料等を含めると、約41万点になります。
  このような大量の資料群の中から、1点・1件の必要な資料を探し出すことは大変な作業です。これまでは、歴史文化課の専門職員が蓄積された資料情報の中から、レファレンス経験を生かして、来館者の求める資料を各種の資料目録を使って探し出していました。このたび文書館の開館に合わせて、「新潟市文書館所蔵資料検索システム」を稼働させ、日本国中どこからでも所蔵資料が検索できるようになりました。なお、本システムは国立公文書館デジタルアーカイブの横断検索とも連携しています。
  文書館には文書収蔵庫を中心に、温湿度管理の可能な各種の書庫・収蔵庫を備えました。特にフィルム・ネガ・テープなどを大量に収蔵していることから、低温管理室を設けました。2階には資料公開室という名称の展示室があります。資料公開室1は、文書館の常設展示の役割を持たせ、文書館の機能や「新潟市の歴史」の概要を紹介しています。資料公開室2には大型ハイケースを設置して実物資料の展示ができるようにし、収蔵資料を使ったテーマ別企画展示室の役割を果たせるようにしました。
  1階には講座室を設け、文書館による講座を開催しますが、施設の有効活用の観点から、事業で使用しない時間は貸室も行います。さらに講座室とロビーには、地域の人々がすでに閉校した太田小学校の歴史や学校の思い出と触れ合えるように、太田小学校の校歌や校旗などの校歴展示コーナーや、写真アルバムの閲覧コーナーを設け、地域とともに歩む文書館を目指しています。

結びにかえて
  『アーカイブズ』第49号で述べたとおり、文書館には大正年間の旧版『新潟市史』の編さんに始まり、平成の新『新潟市史』編さんを基軸として、明治・昭和・平成各時代の合併市町村の資料、公文書及び、市民から寄贈を受けた古文書等歴史資料を保存・活用してきた前史があります。今後は、新たな「文書館」としての役割を果たしていきます。

〔注記〕
[1] 長谷川 伸「新潟市におけるアーカイブズ事業の展開と文書館設置の課題」(国立公文書館『アーカイブズ』第49号 2013年3月、17p~19p所収)

データシート
機関名:新潟市文書館
所在地:新潟市北区太田862-1
電話/FAX:025-278-3260/025-278-3328
Eメール:bunshokan■city.niigata.lg.jp (■を@に替えてください。)
ホームページ:https://www.city.niigata.lg.jp/smph/kanko/bunka/rekishi/niigatasibunshokan/index.html
交通:JR白新線黒山駅下車西南へ徒歩15分程度
開館年月日:令和4(2022)年1月8日
設置根拠:新潟市文書館条例
組織:新潟市文化スポーツ部歴史文化課新潟市文書館
人員:館長1、主幹(学芸員)1、主査1、副主査1、再任用3、会計年度職員4
建物:鉄筋コンクリート3階建て。昭和47年建設(耐震補強済み)
(1)書庫・収蔵庫、(2)事務室、(3)資料公開室、(4)講座室、(5)資料調査室
所蔵資料:特定歴史公文書、図書・刊行物・その他複製資料 約41万点
開館時間:午前9時~午後5時
休館日:日曜日・月曜日・祝日・年末年始
主要業務:歴史公文書等の収集・保存管理
              特定歴史公文書(所蔵資料)の閲覧公開・レファレンス。
              特定歴史公文書等の展示・講座等普及事業