大分県公文書館
館長 釘宮 治行
1.はじめに
最近、地球温暖化の影響と思われる集中豪雨等の異常気象による自然災害が頻発しています。
また、平成23年3月の東日本大震災、28年4月の熊本地震と大地震が続いており、南海トラフで今後30年以内にマグニチュード8~9クラスの地震が発生する確率は70~80%とも言われています。
このような状況の中、県民(国民)の共通財産である公文書等の歴史資料を将来の世代に残すために来るべき災害に備え、準備しておくことが、公文書館に課せられた大切な役割の一つではないでしょうか。
ここでは、十分とは言えませんが、これまでの大分県公文書館における災害対応の取組についてご報告します。
少しでも皆さんの取組の参考になれば幸いです。
2.大分県歴史資料保存活用連絡協議会での取組
(1)協議会の設置
本県では、歴史資料の保存活用に関する研修会の開催や情報交換、課題の検討及び各種調査研究等を通じ、県内の市町村に対し、歴史的に重要な公文書の収集、保存の重要性を啓発するとともに、公文書等の適正な保存、利用に関する技術的な支援を行うことを目的に、平成22年10月に、大分県歴史資料保存活用連絡協議会を設置しました。
(構成団体)
・県関係…公文書館、先哲史料館、県立図書館、県政情報課、文化課
・市町村…18市町村の担当課(行政文書関係、古文書関係)
・その他…別府大学(文学部史学・文化財学科)
(2)協議会の事業での災害対応の取組(行政文書関係)
平成28年4月に発生した熊本地震を受けて、協議会で災害対応の取組を開始しました。
①記録史料保存セミナー(H28.10)
毎年一回、市町村の担当者や一般県民の方々、別府大学の学生を対象に、講演と意見交換の機会を設けており、この年は、公文書が被災した場合どのような状況になるのか、またどのようなレスキュー活動を行うのかをテーマとした講演を行いました。
【講演】「東日本大震災における被災公文書のレスキュー活動」
講師:神奈川県立公文書館 木本洋祐 氏
②分科会
毎年一回、総会の開催にあわせて、行政文書関係、古文書関係に分けて分科会を開催しており、行政文書関係の分科会のテーマに災害対応の取組を取り上げました。
○H28.7.7開催分
・各市町村の公文書の保管及び災害対策の現状について
・被災公文書等の救済事業について
○H29.7.21開催分
・会員(市町村)が保管している公文書が被災した場合のレスキュー要請について
→ 公文書被災時の連絡体制の確認
○H30.6.21開催分
・平成29年の台風18号により発生した津久見市の公文書の被災とレスキュー支援について
○R3.7.9開催分
・公文書が被災した場合のレスキュー要請について
・公文書が水害などで水に濡れた場合の応急処置について
3.大分県公文書館における被災公文書救済の状況
(1)平成29年9月の台風18号による津久見市被災公文書の救援
平成29年9月に到来した台風18号により、津久見市では河川が氾濫し、冠水等の被害を受けました。これにより、津久見市役所でも庁舎1階が浸水の被害を受けました。
この状況を受けて、当館では、津久見市を訪問し被災状況の確認を行うとともに、市からの要請に基づき、事前に定めておいた公文書の被災時の連絡体制にしたがい、国立公文書館と全国歴史資料保存利用機関連絡協議会に対し支援要請を行いました。
・大分県歴史資料保存活用連絡協議会(大分県公文書館)→公文書被災状況の現地確認(9/20)
・全国歴史資料保存利用機関連絡協議会→乾燥作業方法等の指導(10/2~5)
・国立公文書館→クリーニング作業方法等の指導(11/1~2)
(2)令和2年7月豪雨による日田市役所天瀬振興局被災公文書の救援
令和2年7月7日に発生した豪雨災害により、大分県西部の日田市で河川が氾濫し、日田市役所天瀬振興局で庁舎の一部が浸水するなどの被害を受けました。
この状況を受けて、当館では被災状況を確認するため、現地を訪問し、現地での作業の後、一部簿冊を当館に持ち帰り、汚れ除去、乾燥等の作業を行いました。
なお、今回は、被災の規模が小さかったため、国立公文書館等への応援要請はせず、当館のみで対応しました。
4.おわりに(今後の被害発生に備えて)
今後、当館で取組の強化を目指す項目について列挙して、報告を終わらせていただきます。
・公文書等被災時の連絡体制の周知徹底
・ドライクリーニングボックス、プラスティックコンテナ等必要な資機材の計画的備蓄
・公文書等被災時に支援を行う国立公文書館や全国歴史資料保存利用機関連絡協議会との連携強化