国立公文書館
理事 中田 昌和
かれこれ7、8年になるだろうか、その時あるいはそれまでの仕事や趣味にかこつけて、セミナーや講演会などのイベントに、意識的に出かけるようにしている。司会や講師にもよるのだが、その中には、たまたま隣り合わせ、あるいは前後に座ったりしている何人かのグループで、自己紹介的なことを行ったり、扱っているテーマについての意見や感想などを話し合って発表してください、というグループワーク的な時間を設けるイベントが増えてきた。
参加者はわざわざそのイベントに申し込んで来ているという共通性を有している訳だが、知っている人と出かけたのでなければ、お互い初対面であり、参加の動機や属性なども知らない中で始まるわけで、こちらだけでなく、同じグループになった相手の方も、手探りでとまどいも多かったようにみえた。
ただ、場数を踏むうちに、いわゆるコンフォートゾーンから出て少しでもその機会から多くのことを持ち帰りたいと思えるように前向きになったのか、ただ度胸がついただけなのか、徐々にスムーズにやりとりできるようになっていった。それによって、他の参加者の新鮮なお話に感心できるような余裕も生まれてきた。また、その場のご縁で、SNSでもつながってもらったりして、自分のタイムラインがより多彩で豊かになったように感じている。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、リアルイベントは一旦なくなってしまったが、今度は、新たにオンラインイベントが増えてきて、気軽に参加させてもらうようになった。今では、単純に講演やプレゼンを聞くスタイルのものだけでなく、バーチャルでも何人かのグループに分かれて少人数で話し合うような場面をつくるイベントも増えてきたというのは皆さんもお感じだと思う。
ただ、リアルでは初対面の方と急にお話をすることに多少は慣れていたつもりであったが、バーチャルの方はまだ落ち着かない感じも持っている。やはり、会話の中での相手の仕草や、表情の醸し出す微妙な雰囲気などを見ながらコミュニケーションをとっていたということに改めて気づかされた。また、往々にして、端末画面の中で複数の参加者の正面の顔を見ながら、というスタイルが「自分対他の参加者」的な状況に見えて、皆でテーブルを囲んで話をするというのとは違って感じるせいなのかもしれない。最近では、画質・音声も良くなってきて、さらには、VRヘッドセットをかぶって、それぞれがアバターを用いて仮想空間の中でテーブルを囲んで話をする(身振り手振りなどもアバターの動きに反映できるようなものも)というものも出始めているようなので、ツールの進化に伴い、よりリアルと変わらないようになっていくのかもしれない。
リアル、バーチャルあるいはハイブリッド、いずれの場であっても、参加の動機に応じて、交流の機会を積極的に活用し、インプット/アウトプットの場としてフラットに楽しむとともに、新たな知見、視座を得る、場合によっては人的ネットワークの拡張を図る、というような気持ちで、ライフ&ワークの充実につなげていきたいものである。出会いを大切に。