多様化、複雑化する情報のルート

国立公文書館
理事 中田 昌和

  あらためて考えてみると、電車やバスの中で新聞を読んでいるという方は、本当に少なくなっている。文庫本や雑誌を読んでいるという方を見ることも減っていて、多くの方がスマホの画面を見つめているという印象が強い。いちいちどんな画面を見ているのかを横から覗くわけにもいかないが、ニュースや記事などの文字を見ている方、動画を見ている方、ゲームをされている方、メールやSNSでやりとりしている方、人それぞれのような印象である。
  一日の時間は誰にとっても24時間である。同じ時間でも使い方の工夫は人によりけりだが、デジタル化の進展、通信手段の発達に伴い、世の中に流通する情報量は増え続けており、どういうルートで、どういう情報や娯楽に接するかが多様化、複雑化しているようだ。
新聞やテレビのようないわゆる伝統的なメディア業界への影響は大きい。新聞紙の購読部数は減り続けているようであり、ニュース配信のネット活用への挑戦が続いているようである。また、テレビについても、その物理的な画面に表示する中身として、これまでの放送局作成の番組と、ゲーム機や通信による動画コンテンツが取り合っているとの指摘もある。その中では、これまでパソコンやスマホで見ていたような動画コンテンツを、高画質のものは茶の間の大型画面で見るというようなことも増えつつあるようだし、見逃し配信等といって放送局の番組をそのままネットで配信する動きもある。
  国立公文書館でも、ホームページ、TwitterやFacebookといったSNS、広報誌『国立公文書館ニュース』のほか、デジタルアーカイブ、新型コロナの感染状況などに対応した閲覧や展示会などを組み合わせて、多面的、積極的な情報発信、利用とその促進に取り組んでいるところである。公文書等が「民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」として、適切に利用されるよう、また、これまであまり公文書等を身近に感じてもらえていない方々には、公文書のもつ意味、魅力や楽しみ方なども含めて、時代や相手にふさわしい情報発信が求められている。

現在開催中(令和3年3月14日までの予定)の企画展「最後の殿様 ―廃藩置県から府県制へー」についても、紹介用の短い動画を配信しています。これまでの企画展の紹介動画もありますので、ご笑覧いただければ幸いです。
https://www.youtube.com/watch?v=wXnyvuv7GjI