広島市公文書館
館長 向久保 亨
広島市公文書館では、利便性の向上や業務の効率化、また、最近ではコロナ禍の対応も包含し、電子公文書館(デジタルアーカイブ)に向けた取組を進めています。その概要をご紹介します。
1 管理運営要綱及び利用申請に係る審査基準の制定
電子公文書館に向けた取組のベースとなる管理規程等を、それまでの管理要領を廃止し、公文書等の保存、利用及び廃棄に関する管理運営要綱及び利用申請に対する処分に係る審査基準を新たに制定し、本年2月に大幅に当館のルール改正を行いました。その主な特徴は次のとおりです。
(1) 利用制限の行政処分上の位置づけの明確化
(1) 利用制限の行政処分上の位置づけの明確化
当館のこれまでの規程においては、公文書管理条例が制定されていないこともあって、歴史公文書等の利用決定等が行政処分に当たるか否かなど、いくつかのことについて不明瞭な規程となっていました。こうした中、公文書管理条例の制定が見通せない中で、国及び先進自治体の規程を参考に、歴史公文書等の適切な保存及び利用に関する基本的事項を定めた管理運営要綱を新たに制定し、歴史公文書の定義、利用の制限、利用の方法などを詳らかにするとともに、利用申請に対する処分に係る審査基準を策定し利用決定を行政処分として、その位置づけを明確にしました。
(2) 利用手続の簡略化
歴史公文書等の保存に重きを置く観点から、これまでは煩雑な手続を踏んだ上で審査の上、その利用を許可するというものでした。こうした中、5種類あった利用申請書を一本化し、利用目的や掲載先等の確認は不要とし、申請書に記入していただく項目は、申請者名、利用する公文書等の名称等、利用方法(閲覧、撮影、複写、データ送信等)の三点に絞りこみました。また、これまで年間約300件を事務処理していた撮影・掲載・放映等の許可書の交付を全て廃止しました。一度お渡した資料データを別途利用される場合の手続は一切不要としています。許可書を発出する際には、別棟の本庁舎まで出向いて公印の押印をしていた職員の事務の削減にもつながりました。
所蔵資料を掲載・放映等に利用される場合は、利用目的や利用先の審査、成果物がある場合には後日それを提供していただくといった一連の流れが、公文書館等の通例とされている中、公文書館の所蔵資料は公の財産、市民の財産という基本的な考え方の基これらの制限や手続を廃止しました。
所蔵資料を掲載・放映等に利用される場合は、利用目的や利用先の審査、成果物がある場合には後日それを提供していただくといった一連の流れが、公文書館等の通例とされている中、公文書館の所蔵資料は公の財産、市民の財産という基本的な考え方の基これらの制限や手続を廃止しました。
(3) デジタルデータの電子メール送信
資料のデジタルデータについても、容易に複製ができることなどからこれまで慎重な取り扱いをしていました。要綱制定後は、電子メールによる資料のデジタルデータ送信を解禁しました。これにより、資料が特定されている場合には、利用者は来館の必要なく、資料データを入手することが可能となりました。現在のところ、デジタル化した資料は少なく、受注生産的な対応でお届けするまでには少し時間を要していますが、遠方の利用者の方からは、「コロナ禍のなか、訪れることなく資料データをもらえるのは大変有難い。」とお礼の言葉をいただいていります。
また、広島市では、これまで販売していた書籍としての職員名簿を本年度から廃止し、職員一覧等の有料複写(紙)サービスへと移行しました。こうした中で、この職員一覧等を当館で電子メールで無料提供しています。申請書は不要で電子メール一本でご要望に応じています。
本年4月から8月末までに来館して資料の複写サービス等を利用された方は209人で、同期間に来館されず電話や電子メールで資料を利用された方は190人となっており、館の利用者の増加につなげることができました。
また、当館では、情報開示請求事務を年間3,700件余り取り扱っていますが、市民サービスの向上や事務負担の軽減を目的に、開示請求手続に寄らない情報提供化への移行を進めています。こうした中で、この電子メールによるデータ提供サービスを利用して、建設リサイクル法に係る届出書の開示請求を情報提供化へと移行しました。請求者の利便性の向上とともに、年間約700件にも及ぶ事務処理を約80件に減らす事務の省力化を図っています。
※管理運営要綱https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/108239.pdf
利用申請書https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/123461.pdf
また、広島市では、これまで販売していた書籍としての職員名簿を本年度から廃止し、職員一覧等の有料複写(紙)サービスへと移行しました。こうした中で、この職員一覧等を当館で電子メールで無料提供しています。申請書は不要で電子メール一本でご要望に応じています。
本年4月から8月末までに来館して資料の複写サービス等を利用された方は209人で、同期間に来館されず電話や電子メールで資料を利用された方は190人となっており、館の利用者の増加につなげることができました。
また、当館では、情報開示請求事務を年間3,700件余り取り扱っていますが、市民サービスの向上や事務負担の軽減を目的に、開示請求手続に寄らない情報提供化への移行を進めています。こうした中で、この電子メールによるデータ提供サービスを利用して、建設リサイクル法に係る届出書の開示請求を情報提供化へと移行しました。請求者の利便性の向上とともに、年間約700件にも及ぶ事務処理を約80件に減らす事務の省力化を図っています。
※管理運営要綱https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/108239.pdf
利用申請書https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/123461.pdf
2 デジタルアーカイブに向けて
デジタルデータの電子メール送信のほかに、インターネットを通じて、いつでも、どこでも、誰でも、自由に資料データにアクセスできる「デジタルアーカイブ」を目指して、ホームページ上で次のような取組を行っています。
デジタルデータの電子メール送信のほかに、インターネットを通じて、いつでも、どこでも、誰でも、自由に資料データにアクセスできる「デジタルアーカイブ」を目指して、ホームページ上で次のような取組を行っています。
(1) Web展示会
当館では館内のロビーを利用して、時機を捉えた企画展や新たに収集した資料の紹介などをテーマに小規模な展示会を年に3・4回開催しています。本年7月27日から9月14日にかけて、「被爆75年企画展示「あの日」の記録―広島原爆戦災誌編さん資料から振り返る―」を開催しました。これに併せて、ホームページ上ではWeb展示会を開催しました。展示資料12点の全ての写真とともに、一部の資料については、現在もウェブブックやPDFファイルのデジタルコンテンツをキャプションとともに掲載しています。展示会では、ケースの中で資料の表紙などその一部しかお見せすることができませんが、Web展示会では、資料簿冊の中のページを画像でお見せすることができます。損傷がひどくお見せできないような資料であっても、デジタル化できれば画像でお見せできるのもWeb展示会のメリットの一つです。
※Web展示会https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/5/177636.html
※Web展示会https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/5/177636.html
(2) デジタルギャラリー(フリーダウンロード・サービス)
ホームページ上に、掲載・放映等に適した容量のデジタルコンテンツをフリーダウンロードできるサービスを始めました。
最初にデジタルコンテンツ作成に最初に着手したのは、戦前の広島の様子を伝える絵はがき100枚です。原爆によりほとんどの歴史的な資料を失った広島市においては、こうした画像資料は大変貴重で、これまで多くのデータ提供依頼があります。ホームページにアップロードすることにより、フリーダウンロードしてフリーに活用していただける環境を整えました。
今後はこの一連の絵はがきをさらにアップロードする一方で、ニーズの高い戦後間もない頃の広報課撮影写真や市勢要覧等の行政資料、さらには、歴史公文書にも範囲を広げ、フリーダウンロードできるデジタルコンテンツの拡充を図ってまいります。
※デジタルギャラリーhttps://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/5/188576.html
最初にデジタルコンテンツ作成に最初に着手したのは、戦前の広島の様子を伝える絵はがき100枚です。原爆によりほとんどの歴史的な資料を失った広島市においては、こうした画像資料は大変貴重で、これまで多くのデータ提供依頼があります。ホームページにアップロードすることにより、フリーダウンロードしてフリーに活用していただける環境を整えました。
今後はこの一連の絵はがきをさらにアップロードする一方で、ニーズの高い戦後間もない頃の広報課撮影写真や市勢要覧等の行政資料、さらには、歴史公文書にも範囲を広げ、フリーダウンロードできるデジタルコンテンツの拡充を図ってまいります。
※デジタルギャラリーhttps://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/5/188576.html
3 結び
新型コロナウイルの感染防止策の一環として新しい生活様式への転換があらゆる分野で求められており、公文書館においても、人と人とが接触することなくサービスを提供することが求められています。図書館ではインターネット上での電子書籍の貸出しが始まるとともに、利用者は文献のコピーを電子メールで受信して自宅や研究室等のパソコンで見られるようにすることが、国において著作権法の改正を含め実現に向けた取組が始まりました。時代の変化に対応しながら電子公文書館として更なるサービスの向上に努めてまいります。