愛知県公文書館
主査 新美 里美
1.はじめに
愛知県公文書館は、1986年7月1日、本庁舎の道路を隔てたはす向かいに位置する愛知県自治センターの7・8階に開館した。公文書その他資料の収集・整理・保存のほかに、その活用を図るために、これまで、所蔵資料の公開、企画展の開催、古文書講座の開催といった事業により県民への情報発信に努めてきた。伊勢湾台風の襲来から60年目となる2019年は、過去の災害をテーマとした企画展「写真で見るあいちの地震・台風―伊勢湾台風60年―」を開催し好評を得た。
一方、2020年3月に愛知県史全58巻の刊行事業が終了し、同じ自治センター8階のフロアにあった県史編さん室が同年3月末をもって閉室した。それに伴い、刊行された県史の販売、県史編さんのために収集した112万点にも及ぶ資料とその保存・活用が、新たに公文書館の事業として引き継がれることとなった。
開館から34年目となる2020年度は、県史収集資料の担当として正規職員1名、非常勤職員9名を加え、正規職員6名(兼務2名)、再任用職員3名、非常勤職員14名、計23名の新たな体制によりスタートした。
県史編さん事業の最終年度を翌年に控えた2018年度に、公文書館に引き継がれる予定の県史収集資料112万点を、公文書館の設置目的に基づき、県民共有の財産として適切に管理、保存の上、有効に利活用することが、公文書館の活性化につながるとの認識のもとに、これまでの事業の見直しが検討された。見直しの方向性として、以下の点が強く打ち出された。
(2)県史収集資料の6割を占める江戸時代の村の運営や庶民の生活を記録した「地方文書(じかたもんじょ)」は、県史編さん事業で収集するまでは研究がされておらず、学術関係者から「学術的価値が高い」と評価されていることから、愛知の歴史に関する学術研究を推進する取り組みを行う。
4つの取り組みのうち、「④愛知の歴史資料の利活用」の目玉としたのが、県民の理解促進のために実施している企画展や古文書講座などをバーチャル上で開催する「バーチャル文書館」の開設である。
バーチャル文書館については、次項で概要を紹介する。
バーチャル文書館は、2020年3月27日に公文書館WEBサイトをリニューアルした際、愛知の歴史資料に興味を持っていただくため、WEBサイト内に新設したものである。(リンク:https://kobunshokan.pref.aichi.jp/)
県史収集資料等の「愛知の歴史資料」の紹介、過去の企画展をWEB上で楽しめる「デジタル展示室」などのコンテンツを設け、「知って」「学んで」「楽しめる」内容とした。
WEBサイトTOPページや各コンテンツの画像を見るとわかるように、キャラクターやイラスト・画像を使用し、バーチャル文書館を始めWEBサイト全体が親しみやすいデザインとなっている。
バーチャル文書館の構成は下図の図A(左上)のようになっている。以下、各コンテンツの内容を紹介する。
(1)愛知の歴史資料
ア 地籍図の部屋(図B)
過去に公文書館内で開催した企画展をWEB上で鑑賞できるように展示物の写真を掲載している。
(3)古文書講座(図F)
愛知県公文書館で所蔵している古文書をテキストに、古文書解読に挑戦することができる。単に古文書の訳文を掲載するだけでなく、資料を読み解く上で参考になる資料にまつわる時代背景や語句解説も併せて掲載している。
(4)愛知の歴史年表
原始から現代までの愛知県域で起こった出来事を、同時期に起きた国際・国内の主な出来事と並べて掲載し、歴史の中におけるこの地域の動きが分かる構成となっている。
4.おわりに
県史編さん事業の終了に伴う事業の見直しによって、画像データの閲覧ができる機能を追加した新所蔵資料検索システムへの移行、国立公文書館デジタルアーカイブの横断検索への参加(以上は2020年4月より)、公文書館WEBサイトのリニューアル及びバーチャル文書館の開設と、2019年度は公文書館にとって大きな変化のあった年であった。新たな体制となった2020年度からは、県史収集資料のできる限り早期の公開に向け本格的に取り組むことになる。
112万点もの県史収集資料が一元的に保管されているという点で他県に例がなく、再収集が困難かつ愛知県に関する歴史資料を網羅的に収集した貴重な資料を着実に整理・公開・活用していくことが、公文書館の活性化、ひいては設置目的である「学術及び文化の発展に寄与する」ことにつながるとの自覚を胸に、職員一同、力を合わせて業務に当たっていきたい。