横手市公文書館について

横手市公文書館
館長 三浦 淳

1 はじめに
   横手市公文書館(以下、「当館」という。)は、令和2年5月1日にオープンしました。秋田県内市町村における公文書館の設置は大仙市アーカイブズに次いで2館目となります。
   当館は、空き校舎を改修して整備したもので、前身は旧横手市立鳳(おおとり)中学校です。

公文書館正面入口

公文書館正面入口

外観

外観



2 設置の背景
   横手市は平成17年10月、いわゆる平成の大合併により秋田県内唯一の郡市(8市町村)一体合併により誕生しましたが、合併前の公文書等は、旧8市町村にそれぞれ分散して保管・保存されており、大量に存在する長期保存資料の保存場所の確保と保存書庫の老朽化並びに容量不足に加え、必ずしも十分ではない資料の保存状態や管理実態の課題のほか、公文書等の年限設定や廃棄における担当者レベルでの判断の恣意性などから、資料の紛失や劣化が懸念され、公文書等を整理して管理する必要性が明確になりました。
   他方で、少子化の進行による、学校統合の進展と遊休管理施設(普通財産)の増加を受けて、平成27年度にその利活用を図る横手市財産経営推進計画(ファシリティマネジメント計画、以下「FM計画」という。)が策定され、遊休施設の利活用を視野に入れた公文書館の必要性が認識されていきました。

3 建設までの経緯
   当市では、合併時から文書取扱規程等の文書例規の整備とともに文書管理システムを導入し、文書資料の登録、保管、保存、廃棄の一連のサイクルの徹底を図りました。平成29年度からは電子決裁も本格導入しており、資料の登録、保存又は廃棄のサイクルというソフト面が確立され、保存施設設置の必要性がより明確になりました。
   また、前述のとおり、FM計画の推進や、施設整備事業費の有利な財源として市町村合併特例事業債の活用が見込めることから、早急に事業を起こすべきことと判断し、公文書館整備事業を進めてきました。
   公文書館の設置については、合併後の早い時期から検討しており、平成19年度の(仮称)横手市公文書館設置検討会を皮切りに、公文書館設置検討委員会及び公文書館設置プロジェクト会議等を立ち上げて鋭意検討を行い、建設の段階に至ったものです。

4 当館の概要
   当館は、平成29年度に基本及び実施設計を行い、校舎の一部解体や外構整備も含め、平成30年度及び令和元年度の2か年で整備しました。工事費は決算ベースで約4億4千5百万円です。
   当館の敷地面積は17,900㎡、延床面積は4,815㎡です。施設は鉄筋コンクリート造地上3階建てです。駐車スペースは区画分として41台が収容可能です。
   館内配置としては、1階に事務室、閲覧・レファレンススペース、貸室2室、ホール、文書選別室4室及び中間書庫4室を配置しています。2階には保存書庫を16室、3階には保存書庫を6室配置しています。
   2階及び3階の保存書庫には、約93,000冊の収納が可能です。
   また、バリアフリー対応として、車いす用のスロープ、多機能トイレ、点字入場案内等を設置しています。
   当館までの所要時間は、いずれも車で、JR奥羽本線・北上線横手駅から約8分、秋田自動車道横手ICから約13分、横手北スマートICから約11分、秋田空港から約50分であり、市街地に位置し、アクセスは比較的容易です。

5 当館の特徴
   当地域は秋田県の南東部に位置する横手盆地の中部にあり、奥羽山脈に源を発する成瀬川、皆瀬川が合流した雄物川及び横手川が貫流し、中央部には肥沃な水田地帯が形成されています。県内でも有数の豪雪地帯ですが、豊かな自然に恵まれており、当館も、史跡である高台の一角の、緑豊かで閑静な場所にあります。
   当館の特徴として、原則として市の全ての機関の全ての業務で作成された公文書、市史等の刊行物(行政資料)等を保存対象とすることとしており、近世以前の古文書は保存対象としておりません。これは、横手市民にとって歴史的に重要な公文書等を継続的に後世に伝えるため、その散逸や廃棄を防止し、適切に保存し、市民等にできるかぎり公開していくことを目的としているためで、保存対象は、明治4年の廃藩置県以降の近・現代の公文書等としています。
   また、国土交通省による空き家対策総合支援事業費補助金を活用して整備したことから、市民等が利用できる有料の貸室(名称はルーム1及びルーム2)を設置しています。ルーム1が面積96㎡、収容人数40人、ルーム2が72㎡、収容人数30人です。
   前身が中学校校舎であったことから敷地は広く、隣接した跡地をグラウンドとして整備し、市民にご利用いただいています。
   館内のホールには、前身である旧横手市立鳳中学校の関係資料をメモリアルコーナーとして展示しており、来館者に楽しんでいただいています。

ホール(旧鳳中資料展示)

ホール(旧鳳中資料展示)

閲覧スペース

閲覧スペース


展示スペース

展示スペース

6 運営状況等
   当館は、午前9時から午後5時までの開館です。休館日は、日曜日、月曜日、国民の祝日及び年末年始です。
   令和2年度のスタッフは7名で、内訳は再任用職員2名(うち1名館長)、会計年度任用職員5名です。
   令和2年度の当初予算額は、1,524万円で、報酬、光熱水費等の需用費、委託料が主な内訳です。
   館内には、展示スペースを設けており、保存資料を核としてテーマを設定して企画展示を催しています。現在の企画展示は、「1960年代~1970年代 当時の横手・平鹿 時代の変遷と人々の暮らし」として、旧市町村の広報写真を中心に展示しています。この企画展示は、上半期、下半期に分けて行う予定です。(現行展示は10月31日までです。)

7 新型コロナウイルスの感染症対策
   当館は、新型コロナウイルス感染症対策のため、令和2年5月1日にオープンし、その後直ちに5月20日まで休館とし、5月21日から実際の開館運営を行っています。
   感染症対策として、スタッフはもとより、来館者にもマスク着用、手指消毒等をお願いしているほか、テーブル、手すり等の消毒の徹底、室内換気の徹底、館内のソーシャルディスタンスの確保などを行っており、来館者のみなさんが安心して利用できる運営に努めています。

8 今後の課題
   当館の運営等において、以下の内容が今後の課題であると捉えています。
①現在、旧市町村庁舎等に保管されている公文書等の計画的な回収かつ可能な限り早期の完了
②「永年」保存文書の公文書館閲覧制度適用への調整
③電子データの保存及び閲覧対応
④劣化の進む保存資料の補修
⑤資料評価選別におけるノウハウの向上(文言解読等)
⑥資料閲覧請求対応におけるスキルの向上
⑦施設のハード整備(リフトの設置、保存書庫の室温管理等)
⑧アーキビスト配置の検討
   短期的な課題、中長期的な課題の双方がありますが、十分に協議調整しながら、着実に課題の解消を図っていきたいものと考えています。

9 終わりに
   「横手市の記録を未来へ引き継ぎます」を、当館のキャッチコピーとしております。
   公文書館の主要な役割である、歴史資料として重要な公文書等を着実に保存すること及び資料の公開を前提として、可能な限り閲覧希望者へ提供することの2点を確実に進めるとともに、入館される方々が気兼ねなく、気持ちよく利用できるような施設運営を目指します。
   当館は開館したばかりですので、常に改善向上を念頭に置いて、試行錯誤を行いながら望ましい公文書館の確立を図ってまいります。

データシート
機関名: 横手市公文書館
所在地: 〒013-0006  秋田県横手市新坂町2番74号
電話/FAX: TEL: (0182)23-9010  FAX: (0182)23-9025
Eメール: somu■city.yokote.lg.jp  (■を@に替えてください。)
ホームページ: https://www.city.yokote.lg.jp/somu/page0000034.html
交通: 【鉄道をご利用の場合】
            JR奥羽本線・北上線横手駅から車で約8分
          【車をご利用の場合】
            秋田自動車道横手ICから約13分
            横手北スマートICから約11分
            秋田空港から約50分
開館年月日: 令和2年5月1日
設置根拠: 横手市公文書館設置条例
組織: 横手市総務企画部総務課内
人員: 7名(再任用職員2名(うち1名館長)、会計年度任用職員5名)
建物: 敷地面積17,900㎡、延床面積4,815㎡、保存書庫約93,000冊収納可能
所蔵資料: 行政文書、行政資料、その他の記録及び左記資料の複製物
開館時間: 午前9時から午後5時まで
休館日: 日曜日、月曜日、国民の祝日及び年末年始
主要業務:公文書等の評価選別、資料の登録及び保存、資料の閲覧公開、貸館対応