高知県立公文書館の開館について

高知県立公文書館
館長 森下 信夫

高知県立公文書館全景

高知県立公文書館全景

1.はじめに
   高知県では、令和2年4月1日に公文書管理条例の施行に合わせて公文書館を設置しました。高知県立公文書館は、南海随一の名城と言われる高知城内にあった歴代藩主を祀る藤並神社の境内の跡地で、現在は「藤並の森」と呼ばれている緑豊かな地に開館しました。
   当県の公文書管理制度の構築に向けた取り組みについては、アーカイブズ第71号にて紹介させていただいておりますので、今回は公文書館の取り組みを中心にご紹介させていただきます。

2.公文書館設置の経緯
   当県では平成21年度に、歴史的公文書の保存や活用のあり方について検討していただくために、学識経験者で構成する検討委員会を設置し、歴史公文書を適切に管理しながら、県民の皆様に有効に活用していただくための提言をいただき、公文書の適正管理の推進と歴史公文書制度の創設に向けて取り組んでまいりました。

オープニングセレモニー(除幕式)

オープニングセレモニー(除幕式)
濵田省司知事(右)と三石文隆県議会議長(左)

   公文書館の設置についてもこの提言の中に盛り込まれており、一時は県立図書館と併設することも検討されておりましたが、平成24年度に県立図書館を高知市民図書館との複合施設として新たに整備するという方針が決定されましたことから、公文書館の設置については、見送られることになりました。
   その後平成28年度になって、この県立図書館の跡地利用を検討する中で、既存の施設を活用して公文書館を整備し、空きスペースをまんが文化を振興する拠点や生涯学習の場として活用する方針がまとまりました。
   これを受けて、同年度末には「高知県公文書館(仮称)整備基本計画」を作成し、翌29年度にはこの基本計画に基づき、施設改修の基本設計及び実施設計を行いました。
   続いて平成30年度には、「高知県の公文書のあり方に関する検討委員会」を設置し、公文書等の管理に関する法律の趣旨を踏まえ、本県における公文書の作成から廃棄、また歴史公文書制度など公文書管理のあり方をとりまとめていただきました。
   これらを踏まえ、令和元年7月に「高知県公文書等の管理に関する条例」を制定し、同月には「高知県公文書管理委員会」を設置して、同条例の施行規則や文書管理規程などについてお諮りし、運用ルールを整備いたしました。また、12月には施設の改修工事を終えました。

3.当館の役割と今後の取り組み
   公文書管理条例において、公文書館の設置目的は、「歴史公文書等を保存し、利用に供するとともに、これに関連する調査研究を行う」とされており、高知県の公文書管理のあり方に関する検討委員会の提言を踏まえ、次の事業に取り組むこととしています。
(1)歴史公文書等の選別・収集
(2)歴史公文書等の整理・保存
(3)県民の皆様の利用・閲覧
(4)普及・啓発
(5)調査・研究
(6)市町村に対する支援
(7)監査
   当県の特徴的な取り組みとしましては、歴史公文書等の選別・収集において、まずレコードスケジュールを含めたファイル管理簿を作成し公表します。そのうえで、公文書を廃棄する際には公文書館長が実施機関から協議を受け2次選別を行い、公文書管理委員会に諮るという三重のチェックを行うこととしています。なお、これらのチェックを経て公文書館長が廃棄すべきでないと判断した場合は、公文書の廃棄はできない仕組みになっています。
   また、公文書館は知事部局の公文書の管理状況について監査を行うこととなっており、公文書管理の適正化にも積極的に取り組むこととしています。

◎令和2年度 普及啓発事業計画
   ①開館記念企画「未来へのバトン―知事引継書―」(4月1日~6月30日)
   ②夏休み企画「災害との闘い―災害の記録を未来に伝えるー」(8月3日~9月30日)
   ③国立公文書館所蔵資料展「近代日本のはじまりと高知県」(1月31日~2月28日予定)
   ④開館記念講演会(2月を予定)
         テーマ:公文書館に期待される役割について(仮題)
         講師:国立公文書館 加藤館長(予定)

閲覧室

閲覧室

展示室

展示室


4.課題
(1)歴史公文書等の選別の推進、目録の充実
   新たに保存期間が満了する文書の選別と並行して、条例施行時点で選別の対象となった古い公文書の選別を進めなければなりませんが、古い公文書は、文書ファイルの綴じ方やファイル名の付し方に一貫性がないため内容の把握に時間を要することや、一次選別を行う実施機関の担当職員に選別の考え方が十分浸透しきれていないことから、確認・調整に多大な時間を要しているのが実情です。
   今後は、選別基準に基づく選別の参考事例を充実させるとともに、実施機関職員の研修や監査を通じて、一次選別がより適切かつ効率的に行われるようにしていく必要があります。
   また、歴史公文書等の目録についても、利用者の求める情報にアクセスしやすい目録の作成に努めていきたいと考えています。
(2)戦前の資料の収集
   当館は、明治4年に高知県が設置されてから作成、取得された文書の中から、県行政の推移が跡付けられる公文書を歴史公文書等として選別、収集することとしていますが、高知県の公文書は、昭和20年(1945)7月の空襲によりほとんどが焼失したため、戦前のものはほとんど残されていません。
   このため、国立公文書館に保存されている高知県関連の資料の複製を収集することとしていますが、今後、これに加えて戦前に県が発出した公文書で県内の市町村などに保存されているものの収集方法なども検討していきたいと考えています。

5.おわりに
   当館の開館に向けましては、国立公文書館の皆様、香川県立文書館の皆様に多大なご支援をいただきましたことを改めて感謝申し上げます。
   新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開館直後から1月間の閉館を余儀なくされましたが、より多くの県民の皆様に歴史公文書等の重要性や当館の存在を知っていただき、広くご利用いただくとともに、重要な公文書をしっかりと後世に引き継いでいけるよう、今後とも職員一同力をあわせて取り組んでまいります。

データシート
機関名: 高知県立公文書館
所在地: 〒780-0850 高知市丸ノ内1丁目1番10号
電話/FAX: TEL:(088)856-5024 FAX:(088)856-5014
Eメール: 110202@ken.pref.kochi.lg.jp
ホームページ: https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/110202/
交通: 【路面電車、バスご利用の場合】
         「高知城前」下車。高知城方面徒歩5分。
         「山内一豊公像」北側。
開館年月日: 令和2年4月1日
設置根拠: 高知県公文書等の管理に関する条例
組織:

人員: 13名
建物: 地上3階建物総床面積4466.09㎡うち公文書館3169.94㎡
          書架延長5.9㎞
所蔵資料: 公文書(特定歴史公文書等)2,312冊、行政資料530冊
開館時間: 午前9時から午後5時まで
休館日: 土・日・祝日及び年末年始(12/29~1/3)
主要業務: 特定歴史公文書等の選別・受入
                特定歴史公文書等の保存及び利用
                特定歴史公文書等の普及・啓発及び調査研究
                特定歴史公文書等の選別に関する職員向け研修の実施
                公文書の管理状況の監査