平成29年度アーカイブズ研修Ⅱについて

国立公文書館

統括公文書専門官室

1.はじめに

講義風景

   平成30年1月16日(火)から18日(木)までの3日間にわたり、国立公文書館(以下「当館」という。)では、「平成29年度アーカイブズ研修Ⅱ」を開催しました。
 本研修は、受講者が公文書等の保存及び利用に関する特定のテーマに係る共同研究を通じて、公文書館における実務上の問題点等の解決方策を習得することを目的に毎年度開催しています。
 平成29年度の研修は、「公文書等の評価選別-保存期間満了時の移管又は廃棄の措置等について-」というテーマで開講しました。前半では、講義及び各館の事例報告から、評価選別の仕組みや基準、運用方法を学び、後半のグループ討論では、評価選別基準等の在り方や公文書館等を設置していない自治体における評価選別の仕組みの構築等について議論しました。
 本研修には、国立公文書館等に指定される機関を始め、県や市が設置する公文書館のほか、将来的に公文書館設置を検討している県や市を合わせた、計24機関・31名の参加がありました。

2.講義と事例報告

グループ討論の様子

   本研修では、まず元広島県立文書館副館長の安藤福平氏より、公文書等の評価選別における基本的な考え方について講義がありました。
 つづいて、当館の栃木智子上席公文書専門官、神奈川県立公文書館の薄井達雄公文書管理総括、久喜市公文書館の齋藤英行館長、鳥取県立公文書館の森田佳代係長、公益財団法人沖縄県文化振興会(沖縄県公文書館指定管理者)の大城博光公文書管理課長から、それぞれ国や県、市における公文書等の評価選別について事例報告がありました。
 グループ討論は、本研修に先立って当館が実施した、「受講者の所属機関における『公文書等の評価選別』事前調査」に基づき、館の規模や実務経験が均等になるよう4つの班に分かれて行い、最終日には、班ごとに討論内容や成果等を発表しました。今号では、研修でご講義いただいた安藤氏による「公文書等の評価選別-基本的考え方-」の論考と、グループ討論で各班代表者が報告した、討論の内容・成果を掲載します。

3.まとめ

 本研修では、各班による報告後、全体討論に移り、活発な意見交換が行われました。特に今年度は、公文書等を作成する移管元機関との連携に係る、具体的な実践例として、武蔵野市立武蔵野ふるさと歴史館から新採用者向けや文書管理担当者向け、課長級向け等の段階別研修について、広島県立文書館から文書館を知ってもらうきっかけとして県庁舎や戦後復興の歴史をテーマとした庁舎内パネル展示についてそれぞれお話しいただきました。イントラネットを使った例としては、香川県立文書館よりQ&A方式で文書管理を学ぶ実例を、また埼玉県立文書館より、文書館からの連絡や展示にかかるギャラリートークのお知らせ等、積極的な取組事例を報告いただきました。意見交換を通して、現在の評価選別には、移管元との共同作業が不可欠になってきており、アーキビストが移管元をサポートしつつ、より両者が連携協力していく必要があることを全体で共有しました。また、今後の課題としては、移管元との連携に加え、電子公文書等の扱いや人材の養成が挙げられました。最後に、様々な媒体で情報発信に努め、これからも良い事例や案があれば広く情報共有していくとよいとの意見もありました。

グループ発表風景

全体討論の様子


 研修終了後に実施した受講者アンケートでは、「事例報告が多く、大変参考になりました。」、「討論メンバーが、行政職、博物館、元教員など多様なバックグラウンドを持った方々だったので、想定外のアイデアをたくさん聞くことが出来て、とても有意義で楽しい時間でした。」、「非常に有意義でした。今回の研修を自らの仕事に生かし、何らかの形ある成果を出したいと思います。」といった感想が寄せられました。