(巻頭エッセイ) お客さまを大切に

国立公文書館
館長 加藤 丈夫

平成29年11月1日 つくば市にて

 国立公文書館を利用する人たちは、一人ひとりが私たちの大切な“お客さま”であり、そのお客さまに満足していただくことが私たちの最も重要な仕事であることは言うまでもありません。
 国立公文書館に来るお客さまには、おおよそ次の三つのタイプがあります。
 一つは、国の機関での仕事の必要上、国の機関から公文書館に移管された公文書を“業務利用”として調べようとする人たち、二つは、特定のテーマについて公文書館が収蔵する資料を調査・研究しようという人たちで、これにはその分野の専門家である学者もいればアマチュアだがそのテーマに強い関心を持っている人もいます。そして三つには、公文書館が開催する展示会を観にきたり、館内見学会などのイベントに参加しようといういわゆる“一般の”お客さまです。
 その中で、一と二のタイプの人は来館の目的がはっきりしているので、その対応の仕方も(上手くいっているかどうかは別にして)分かり易いのですが、三のタイプには初めて来館される人も多いので、まず“公文書館はどんなところか”を理解していただき、それから公文書館の活動に対して何を期待するかを把握するところから始めなければなりません。
 そのために、当館では数年前から“発信力を高めよう”を合言葉に、1)ホームページの充実、2)「公文書館ニュース」の発行、3)「公文書館友の会」の会員募集、4)見学会の積極的な開催、5)新聞・雑誌を使った広報活動などに取り組んできました。
 こうした対策は徐々に成果を上げつつあり、この3年間の来館者はそれ以前に比べて2倍以上に増えており、ツイッターのフォロワーも年間3万6千件に達し、公文書館の活動を理解する人たちは確実に増えているように思われます。
 そして、現在はもう一歩進んで来館者を対象としたアンケート調査に注力し、展示や館内見学の内容に満足したかどうか、もっと良くするにはどんな点に取り組んだらよいかという意見を求めることにしています。
 一般に、イベント参加者に対するアンケートの回収率は(よくても)10~20%といわれますが、当館ではアンケートの記入方法や回収の仕方に工夫を凝らした結果、最近の展示会では回収率が40~50%になりました。この数字自体にも来館者の公文書館に対する関心の高まりが表れているのですが、ここに寄せられる意見の中には私たちが気付かなかった鋭い指摘も多く、こうした意見をできる限りこれからの運営に役立てたいと考えています。
 私は仕事の一つとして、寄せられた意見を丁寧に読むことにしているのですが、それはまさに“お客さまとの対話”であり、こうした対話を繰り返していくことが、最終的にお客さまの満足度の向上につながるのだと考えています。