アーキビストの連携を深める~「アーカイブズ」60号の刊行に寄せて~

国立公文書館長 加藤 丈夫

   この度、当館が発行する情報誌「アーカイブズ」は第60号を迎えました。平成11年の創刊なので、15年以上の歴史を重ねたことになります。またネット配信に特化して5号目となりました。
   現在、国立公文書館の定期刊行物には「北の丸」「国立公文書館ニュース」「アーカイブズ」の三つがありますが、読者のニーズに合わせ「北の丸」は専門家の研究論文を中心とした紀要、「国立公文書館ニュース」は一般の方々に向けて当館の活動や行事を紹介する広報誌、そして「アーカイブズ」は全国の公文書館等で公文書の管理に携わる専門家・担当者を対象とした情報専門誌となっています。
   近年、わが国における公文書の管理体制が欧米の各国に比べて立ち遅れていることが指摘され、この体制強化が国や自治体の大きな課題になっていますが、当館ではこれを推進する一環として、全国の公文書管理に携わる専門家―アーキビストの“研修と連携の強化”に取り組んでいます。
   その中で、当館が主催する研修には公文書管理研修とアーカイブズ研修の二つのコースがあり、それぞれⅠ~Ⅲの段階を設けていますが、この5年間で延べ5,300名が受講し、その中で上級課程(Ⅲ)の受講者が約70名となりました。
   また連携強化の中心になっているのが「アーカイブズ」の刊行ですが、ここでは国内外の公文書館の活動事例の紹介、ICAやEASTICAなど公文書に関する国際的な活動状況の報告、公文書管理をめぐる国や自治体の動向の解説などを掲載するようにしています。
   この狙いは、全国のアーキビストが公文書管理に関する情報を共有し、先進的な他館の事例を日常の仕事に役立てようというものですが、ネット配信に特化したことにより、情報伝達のスピードアップと作成側のコストダウンが進みました。
   また、現在当館では全国88か所の公文書館に協力をお願いして、それぞれがどのような公文書を所蔵しているかの「所在情報調査」を実施していますが、こうした試みの延長として、将来は各館の所蔵資料をインターネットでつなぎ共同利用ができるようにしたいと考えています。このためには、各館の管理のレベルを合わせること、各館の専門家・担当者の交流を深めることが大切ですが、「アーカイブズ」はこうしたアーキビストの“連帯の強化”に貢献したいと考えています。
   これからも「アーカイブズ」は読者の皆さんのご希望を積極的に取りいれて、誌面の充実を図っていくよう努力して参りますので、ご支援を宜しくお願いします。