巻頭エッセイ「新しい発見につながる取り組み~三重県総合博物館との共同展示会を観て~」

国立公文書館長 加藤 丈夫

 国立公文書館は、毎年各地の公文書館・文書館と協力してそれぞれが所蔵する歴史的資料の共同展示会を開催していますが、今年は三重県総合博物館(MieMu)と共同で開催しています。
   今回のテーマは「明治の日本と三重」ですが、当館からは、日本国憲法、明治憲法、教育勅語などの貴重資料(複製)の他に明治初期の国の主な出来事を記録した公文録(重要文化財)など約70点を出品。MieMuからは明治初期から大正・昭和にかけて三重県庁で作成された歴史的公文書や絵図・地図、更には明治村の協力を得て鹿鳴館時代に使われた家具や調度、大礼服などの衣服も展示され盛りだくさんの内容となりました。
   各地域の歴史資料館では、昔からその地方に伝わる遺物や文書、産品などを展示して今日の発展に至る経過を紹介するのが一般的ですが、日本が近代国家としての体制を整えた明治以降は、中央政府の政策と地方の動きが強く結び着くようになっており、その意味で国と地方双方の動きを同時に観ることができる共同展示には大きな意義があると言えるでしょう。
   今回の展示の狙いは「日本の歴史が、三重の歴史が動いた瞬間を公文書で」ということですが、その中の「全国展開した三重のできごと」というコーナーでは、伊勢地方で発生した地租改正に対する反対一揆が全国に広まった様子が鮮やかな色彩画で紹介されていました。その内容は当館が出展した政府の記録と合わせて観ると事件の意味合いが深く理解できるし、それは国の公文書の管理に携わる私たちにとっても新しい発見につながります。
   更に、今回訪問して感心したのは、MieMuが規模はそれほど大きくないものの、博物館として公文書館としての条件を必要かつ十分に満たしていることでした。
   開設は2年前の2014年ですが、それまでに十分な調査と検討を重ね、館の狙いである「新しい発見やおどろき、知的好奇心から広がる多彩な活動と交流の輪」が実現できているように感じました。
   現在、国立公文書館も新館建設の動きが始まっていますが、新館の施設や機能にはMieMuの取り組みを参考にしたいと思いますし、今回開館までの関係者の努力の経過に直接触れることができたのは私にとって貴重な体験でした。
   国立公文書館では、これからも毎年、各地の公文書館・文書館と協同で展示会を開催していくつもりですが、こうした取り組みを重ねていくことが、日本における公文書館活動の活性化につながることと期待しています。