英国ウェスト・ヨークシャー公文書館のコミュニティとの連携活動について

国立公文書館 統括公文書専門官室
公文書専門員 渡辺悦子

1. はじめに

ウェスト・ヨークシャー公文書館の本部がおかれるウェイクフィールド館。ウェスト・ライディング地域の不動産登録所も兼ねている。

ウェスト・ヨークシャー公文書館の本部がおかれるウェイクフィールド館。ウェスト・ライディング地域の不動産登録所も兼ねている。

 ウェスト・ヨークシャー公文書館(West Yorkshire Archive Service、以下WYAS)は、コミュニティ[1]との様々な連携活動(community engagement)に努める館として、イギリス国内で知られている。
   本稿で主に取り上げるのは、WYASが2009~2012年に行ったプロジェクト「Our Stories」である。ウェスト・ヨークシャー地域におけるコミュニティとの連携強化を目指したこのプロジェクトの柱の一つは、「コミュニティ・アーカイブ認可制度」の創設である。この制度は、コミュニティの手でつくられた記録資料をコミュニティ自身の手で守りながらも、公文書館とのネットワークでつながり支えあうという仕組みである。「Our Stories」プロジェクトにおけるもう一つの取組みは、オーラルヒストリーの収集を促進するための「Sporting Heroes」プロジェクトである。これは、ヨークシャーを拠点とするプロスポーツクラブの現役選手/OB選手、サポーターのオーラルヒストリーを集めて新たな「地域の記録」とするもので、2012年に開催されたロンドン・オリンピックの関連文化イベントとしても成功した。
   これらの取組みは、海外の地方公文書館による地域/コミュニティ連携の取組みとして注目されるのみならず、日本でも近年注目されつつあるオーラルヒストリーの活用に示唆を与えると考えられ、以下紹介することとする。

2. イギリスにおける「コミュニティ・アーカイブズ」について

 WYASによる活動の紹介の前に、イギリスの公的アーカイブズ機関におけるコミュニティとの取組みを語る上で欠かせない「コミュニティ・アーカイブズ」の定義と活動について、若干ふれておきたい。
   「コミュニティ・アーカイブズ」についての定義は、しばしばその困難さが指摘されるところではあるが[2]、Community Archives and Heritage Group(以下CAHG)[3]がwebページ上で紹介する定義の一つによれば、「コミュニティ・グループによって所有され、展開、管理された記録資料を指し、コミュニティ・グループによるプロジェクトの一環で作成されたもの」[4]とされる。また、アンドリュー・フリン博士は、こうした記録資料を管理するコミュニティ・グループについて、「同じ地域、文化、信仰、出身、アイデンティティなど、特定の関心等を共有する人々のグループとして、自らを規定したグループ」であり、「その活動の動機や方向性がコミュニティ・グループ自身に由来すること」とする[5]。このような記録資料を収集するグループ自身もまた、「コミュニティ・アーカイブ(ズ)」と呼ばれる。これらの混乱を避けるため、本稿では便宜上、資料を指す場合を「コミュニティ・アーカイブズ」、グループを指す場合を「コミュニティ・アーカイブ」としておく[6]。
   コミュニティ・アーカイブが収集の対象とするのは、主に地域の歴史に関する様々な文書資料、地図、写真、地域でのイベント等に関するパンフレット等であるが、特に重視される傾向にあるのがオーラルヒストリーとされる。CAHGは、オーラルヒストリーを写真や文書と並ぶ一次資料としているが[7]、これはコミュニティ・アーカイブズが、そもそも公的アーカイブズ機関の「外側」にある記録への関心に基づく概念であることに由来する。女性や移民、労働者といった、いわば文字資料として記録が残されることが極めて少ないがゆえに歴史から取り残された人々の記録(或いは記憶)の消失への懸念や、そういった社会的弱者が自らの記録を残すことで寄るべきアイデンティティを作ろうとしたことが、その活動につながっているからである[8]。
   コミュニティによる記録の収集活動は、前出のフリン博士によれば、決して新しい動きではないという[9]。「地域の歴史」への関心という点にかんがみれば、17世紀にさかのぼる上流階級の古物収集の伝統や19世紀の古物収集協会、また、20世紀の地域史グループなどにそのルーツを見ることが可能であるが、直接的なものは、70~80年代に発展したオーラルヒストリー運動や大衆史の影響を受けての地域史研究の展開と、こうした社会史等の分野で流行を見た活動が、やがてより幅広く、興味関心等を共有する「コミュニティ」による記録収集活動として普及したことが、現在のコミュニティ・アーカイブの発展へと結びついているとされる。
   コミュニティ・グループによる記録収集の運動は、ここ10~20年で急激に高まったと指摘される。その要因として、人口・経済や社会の劇的な変化により、伝統的なコミュニティが崩壊しそのアイデンティティが急激に失われていくことについての危機感や、公的アーカイブズ機関において保管される記録が公的記録に片寄っている等の懸念もさることながら、特に情報技術の飛躍的な進歩による影響が大きいとされる。情報通信技術の発展は、地理的・物理的障害により結びつきづらかった人々が出会う機会を与え、また集めた記録資料を簡単に収集・保存し、ウェブなどを利用して公開・利用に供することを可能としたからである[10]。2006年に行われた調査によると、イギリスにはすでに3,000にのぼるコミュニティ・アーカイブが存在し、100万人以上が参加していると推定されている[11]。

3.Our Storiesプロジェクト

 WYASは、イギリス中部のウェスト・ヨークシャー地域に所在する公文書館である。もともとこの地域には、「都市州(metropolitan county)」とよばれる広域自治体・ウェスト・ヨークシャー州があり、州の公文書館と5つの基礎自治体(リーズ、ウェイクフィールド、ブラッドフォード、カルデデール、カークリーズの、districtと呼ばれる区)の公文書館が、予算や所蔵資料、サービスを統合した一組織として運営する形をとっていた。1986年に都市州及び州議会が廃止された後も、旧州域で統合サービスを行うことが合理的と考えられたため、WYASは引き続き5館による共同事業体として運営されている[12]。ウェスト・ヨークシャーには、コミュニティ・グループが所蔵資料を簡単に管理・公開できるソフト・ウェア「COMMA」を供給するコンマネット[13]の拠点があったこともあり、比較的早い時期から多くのコミュニティ・グループが所在していた[14]。
   本稿でとりあげる「Our Stories」プロジェクトは、以下に紹介する「コミュニティ・アーカイブ認可制度」にかかる実験的プロジェクト「Archive Ambassadors」、そして様々なコミュニティ・アーカイブによる活動を紹介するためのウェブサイト「nowthen」[15]構築のためのプロジェクト等を統合したものであり、2009年11月、文化遺産宝くじ基金(Heritage Lottery Fund[16]、以下HLF)から158,200ポンド(約3000万円)の資金援助を得て開始。以降、2012年10月まで3年間にわたり開催された。軸となる取組みは、
         ①オーラルヒストリーの収集
         ②地域の様々なコミュニティとの関わりを互いに促進するための研修の開催及び目録作成
         ③記録資料保存にかかる実務・利用者参加型活用、及びWYASの所蔵資料へのアクセス促進ついての、標準的な評価基準を開発すること
の3点である。この達成のために作られたのがコミュニティ・アーカイブ認可プログラム(Community archives accreditation scheme)であり、これをもってコミュニティの記録収集グループのネットワークを形成することを目指すこととされた。このうち、オーラルヒストリー収集のモデルを築くこととなったのが、派生プロジェクトとして行われた「Sporting Heroes」である。以下、この認可プログラムと「Sporting Heroes」について紹介する。

3.1 コミュニティ・アーカイブ認可プログラム

コミュニティ・アーカイブ 「認可」マーク(転載不可)

コミュニティ・アーカイブ 「認可」マーク(転載不可)

 コミュニティ・アーカイブ認可プログラムは、コミュニティ・グループがそれぞれの活動を独立して管理・運営できるよう支援すること、記録収集活動を新規に始めようとするグループをサポートすること、また各グループのスキル向上のための情報共有をはかること等を目的に作られたものである[17]。
   認可は、コミュニティ・アーカイブを運営するにあたって必要とされる知識やスキルを7つのセクション(と1つの応用編)に分けて紹介、各セクションをパッケージ化したもので行われる。一度に全てのセクションについて認可を受けることも、セクションごとに認可を取ることも可能であり、後者の場合、全セクションの認可取得にいたるまでの期間的制限も特に設けられていない[18]。
   手続きの方法としては、基本はセルフチェックである。まず、ウェブページ上にあるフォームをダウンロードし、プログラムに参加するための登録手続きをする。それにより、認可取得に向けてWYASからのサポートを受けることが可能となる(あわせて、他のグループとの交流等ができる定期ミーティングにも参加できる)。その後、認可を受けたいセクションのチェックリストを完成させ、実務内容等を証明する文書や写真、テンプレート等を提出、認可されれば、WYASによる「認可」マークのロゴがグループの文書や刊行物に使用できるようになる。WYASによれば、これにより記録資料保存団体として適切な運営・管理を行っている証明となるため、他団体との共同プロジェクトや資金援助獲得にむけての活動を円滑化できるとされている。
   認可に必要な7つのセクションは、以下のとおりである。
   ①利用者サービス:
   コミュニティ・アーカイブも、存在をアピールし、所蔵資料への関心を呼ぶためには、利用者向けのイベント開催が必要との観点から、適切な運営のための責任や開催時の注意点について学ぶセクション[19]。
   ②コレクション:
   コレクションの適正な管理が記録資料の幅広い活用とアクセスの提供を担保することを学ぶセクション。コレクションを管理していく上で必要となるのは、収集方針、受入管理記録簿、finding aids(目録や索引)であるとし、それぞれの作成方法についての理解が必要とされる[20]。資料のデジタル化の基礎を学ぶのもこのセクションとなる。
   ③所蔵資料のケア:
   記録資料の保管施設について、理想的環境と可能な範囲で行えることのバランスを取りながら適切な資料保存を行うこと、また資料の基礎的な扱い方や梱包の仕方などを学ぶセクション[21]。
   ④遵守すべき法令:
   運営に不可欠な、個人情報保護と著作権に関する法令を学ぶセクション。このセクションのみは、WYASが提供する正式な研修を受けることが必要とされる[22]。
   ⑤メンバーとボランティア:
   グループとして継続的に発展するために重要な、メンバーとボランティアの研修やそのマネジメントを学ぶセクション[23]。
   ⑥利用者参加型活動の開催について:
   コミュニティ・グループが自らの利用者を定義し、新たな利用者の獲得や、利用者ネットワークを拡大していくことの価値やそのための活動を学ぶセクション[24]。
   ⑦記録の収集:
   記録の収集活動は重要な活動であり、特にオーラルヒストリー収集プロジェクトは、コミュニティによる記録作成・収集に最もよい方法であるとして、その活動に必要な知識を学ぶセクション[25]。
   以上のように、記録資料保存団体として必要な基本的知識やスキルが網羅されていることがわかる。WYASでコミュニティ活動を担当するアン・カーター氏のお話によれば、現在、公文書館はウェスト・ヨークシャーで活動する88のコミュニティ・グループ(2グループは地域外からの参加)とネットワークを形成しており、そのうちの12のグループが認可を取得している。HLFによる資金援助期間が終了してからは、認可プログラムを専門に担当する職員の雇用が難しくなったことから、現在、ネットワーク・グループは、年に4回開催されるミーティングで情報共有を行うことをメインの活動としつつあるが、認可取得のために活動するグループへのサポートは継続して行っているとのことである。

3.2 「Sporting Heroes」プロジェクト

 「Sporting Heroes」プロジェクトは、ウェスト・ヨークシャーを本拠とするプロスポーツ選手(ラグビー、サッカー、クリケット等、「ボールを使用するチーム対抗スポーツ」が対象)とサポーターのオーラルヒストリーを、地域の記録として収集することを目的としたプロジェクトである。以下、WYASのレイチェル・タップ氏の報告「ウェスト・ヨークシャーのスポーツ・ヒーローたち」[26]の内容に基づき、紹介する。
   プロジェクトは、2012年のロンドン・オリンピックにあたり、イギリス各地で行われた地域のスポーツ文化の促進事業にあわせて、イギリスの文化財セクターがいかに関与できるかという方向性に基づき進められた。こういった地域のスポーツに関する記録に注目したのは、「人々の生活において地元のプロスポーツが果たす中心的役割が見えるとともに、行われた試合が地域主義(regionalism)にいかに影響を与えるかを示すユニークな記録となりうる」と期待されたのである。こういったスポーツ関係の記録は、当時のアーカイブズ・セクターではあまり開拓された分野ではなかった一方で、地元スポーツチームへの地域の人々の思いは、出身や民族を超え、広く共有可能なものとして、この分野の整備は新たな利用者獲得につながると考えられた。加えて、各プロスポーツ・チームにおいても、ここ10年ほどの間に地域との関わりを推し進めるための動きが活発化し、様々なプロジェクトが行われる傾向があった。こうした中で、WYASが試みた各プロチームとの接触は、非常にスムーズに運んだという。
   「Sporting Heroes」プロジェクトはまず、WYAS内に所蔵される、スポーツに関する資料のリストアップから始まった。特殊な例を除き、スポーツ関連の記録は、該当するチーム毎等で保管されていたわけではなく、様々な資料群の中に入り込んでおり、資料へのアクセスを確保することが課題となった。調査を経て、WYASには60のコレクションが確認され、5つの公文書館が所蔵するそれぞれの資料についてのスポーツ関連資料のガイドが作成された[27]。

「Sporting Heroes」の展示会が行われたリーズ市博物館は、市街の目抜き通りに位置する。

「Sporting Heroes」の展示会が行われたリーズ市博物館は、市街の目抜き通りに位置する。

 メインとなるのがオーラルヒストリーの収集である。各プロスポーツ・チーム[28]との交渉により、①ホーム・ゲームにおいてサポーターへの短い非公式インタビューを行うこと、②現役/引退選手に対し、最低20分の公式インタビューを行うこと、の2点について許可が得られた。サポーターに対するインタビューは40人程度から収集できれば成功と考えられたが、実に70人近いインタビュー記録が収集できたという。これらのインタビュー記録は、WYASのコミュニティ・アーカイブのためのウェブサイト「nowthen」に、音声記録とそれを書き起こしたものが共に公開されており[29]、またそれぞれのスポーツクラブが提供しているコレクション・サイトにおいて、該当する「nowthen」上の個別記録とリンクされているという。
   こうして収集・整理された所蔵資料及びオーラルヒストリーを結集し、WYASは3か月間にわたる展示会をリーズ市博物館で開催している(2011年4月~7月)。展示品は、WYASの所蔵記録だけでなく、地元サポーターやスポーツクラブ等からも出展された。これは、開催の半年前からプレスやオンライン広告、ソーシャル・メディア等を利用して展示会の開催について告知したところ、展示期間中の貸出についてのオファーを得たことによるものという[30]。展示は、記録資料やモノ資料、オーラルヒストリーを交えて行われた。開催期間中の来館者は、実に52,965人にのぼった[31]。「Sporting Heroes」の成功は、その後WYASにおけるオーラルヒストリー収集のモデルとなり、当時使用された宣伝のためのポスターやリーフレット、教育活動用のテンプレート等が残され、後の活動に生かされているとのことである。

4.おわりに

 イギリスにおける他の地方公文書館と同様に、WYASの運営も決して恵まれた状況にあったわけではない。本部のあるウェイクフィールド館は、建物の老朽化が特に深刻で、2007年頃より、イギリス国立公文書館の施設調査の際には、建物のみならず、アクセスの面でも標準に合致していないとの通告を受けていた[32]。イギリスの比較的古いアーカイブズ機関にしばしば見られる傾向であるが、ウェイクフィールド館の入口は常に施錠されており、事前予約が必要であったり、またインターコムで来館を告げなければ入館できない。建物内にエレベータはなく、一冊当り10キロを超えるような権利証の束を、アーキビストが梯子のような階段を上り下りして閲覧室と地下収蔵庫を行き来するような状況にあるのが現在のウェイクフィールド館である。

ウェイクフィールド館新館のイメージ図(転載不可)

ウェイクフィールド館新館のイメージ図(転載不可)

 このため、2014年、WYASはHLFに対し新館建設のための資金援助を申請、受理を受けて、1,000万件規模の記録資料が所蔵可能な新公文書館建設を進めている(完成は2016年予定)[33]。ウェイクフィールド館は1974年の開館後(公文書館は1704年開館のウェスト・ライディング権利書登録所を引き継いでいるため、建物自体は19世紀にさかのぼる)まもなくより、修復部門が充実し、修復士の養成機関としても全国的に知られている[34]。WYASに所蔵される記録の全てはウェイクフィールド館が修復を請け負っているが、同時に、修復作業を利用した活動やワークショップを積極的に行っている館でもある。修復士のシャーリー・ジョーンズ氏によれば、より充実した地域参加型の修復作業の推進のため、新館1階には大規模な修復室が設けられる予定とのことであった。
   WYASを運営する5館はウェスト・ヨークシャーの全域でコミュニティ・アーカイブ認可プログラムやオーラルヒストリーの収集活動を行いつつ、ウェイクフィールド館をはじめ各館レベルでも様々な地域参加型の活動を行っている。このようなWYASの取組みが、日本の地方公文書館にも何がしかの参考となれば幸いである。

 本稿作成にあたり、WYASのアン・カーター氏(リーズ館)、シャーリー・ジョーンズ氏(ウェイクフィールド館)、デイビット・モリス氏(同)には、お時間のない中ご対応いただいた。ここに付して謝意を表したい。

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[1] 「コミュニティcommunity」の語は地域、共通の利害等を同一とする人々のグループといった広範な定義をもつ語であるが、本稿では「コミュニティ・アーカイブ(ズ)」という、公的アーカイブズ機関の外側で作成・収受・維持する記録に関わるグループの意で使用する。なお、イギリスでは長らく、「コミュニティ・アーカイブズ」の文脈で語られる「コミュニティ」とは、移民や人種的マイノリティ、性的マイノリティやジェンダー差別等を受ける人々、またその権利を求めて社会運動等を行う政治的・社会的グループを意味していたという(A.Flinn(2009)’Whose memories, whose archives? Independent community archives, autonomy and the mainstream’, Archival Science,vol.9)。WYASも、当初はそういったアイルランド人コミュニティ、南アジア移民コミュニティ、LGBTコミュニティなどを対象に活動を行っていた(R.Tapp後出論文より)。
[2] A. Flinn(2007),”Community Histories, Community Archives: Some Opportunities and Challenges”, Journal of the Society of Archivists 28:2, また、Community Archives and Heritage Groupの「About us」など:http://www.communityarchives.org.uk/content/about/history-and-purpose(アクセス:2015/10/13)
[3] 2003-2004年にTNA等を含むイニシアチブによって行われたCommunity Access to Archives Projectを引き継いだ、Community Archives Development Group の後身団体がCommunity Archives and Heritage Group。2005年より、CAAPを引き継ぎ、イギリスとアイルランドのコミュニティ・アーカイブを支援・促進するために設立。専門家・研究者やボランティアにより運営されていたが、2009年、Archives and Records Associationのセクションとなる。http://www.archives.org.uk/about/sections-interest-groups/community-archives-aamp-heritage-group-cahg.html 参照(アクセス:2015/10/13)。
[4] 注1、Community Archives and Heritage Groupの「About us」参照。なお、コミュニティ・アーカイブズを収集するための「プロジェクトが他の組織の主導によって行われたものであっても、長期的にはコミュニティ・グループが維持・発展させているものであること」等が加えられている。
[5] A.Flinn(2007)、前掲論文。
[6] なお、英語では当然ながら、こういった書き分けはない。
[7] CAHGのHPより。
[8] A.Flinn(2007),前掲論文。
[9] A.Flinn(2007), 前掲論文。
[10] A. Flinn (2010), “Independent Community Archives and Community Generated Content, ‘Writing, saving and sharing our Histories'”, Convergence vol.16:1
[11] Community Archive Development Group,(2007) ‘The Impact of Community Archives‘(アクセス:2015/10/15)。
[12] E.Berry(1987),’The West Yorkshire Archive Service: The development of a unified service 1974-1983 and its work to 1986′, Journal of the Society of Archivists vol.8:4、またWest Yorkshire Joint ServiceのHP(アクセス:2015/10/15)。なお、統合サービスについては、設立当初から州域において同質のアーカイブ・サービスを住民に提供することをめざし、運営の統合を呼びかけた州と、それぞれ独自の「archive power」を主張した各区が対立し、双方の議会が合意・実現にいたるまで実に7年以上の歳月を費やしている。
[13] Community Access to Archive Project(2004),’Final Report’等による。なお、CommaNETは2000年にリーズを拠点に設立されたチャリティ・グループで、所蔵資料を簡単にデジタル化できる等の機能をもつソフトウェア・パッケージ「COMMA」を供給したが、2009年財政破綻によりサービスを停止、それまでに電子化された情報にアクセスできなくなる事態となり、コミュニティ・アーカイブズに打撃をもたらした(http://www.communityarchives.org.uk/content/archives2011/affected-by-commanet-going-out-of-business、アクセス:2015/10/15)。2014年、コミュニティ・グループのIT技術サポートを行っているCommunitysitesによりデータのマイグレーションが行われたことで、現在は再び使用が可能になっているようである(https://www.jiscmail.ac.uk/cgi-bin/webadmin?A2=MCG;5b5b4fcd.1408、アクセス:2015/10/15)。
[14] 2003年11月より1年間に渡り、イギリス国立公文書館等のナショナルレベルの機関により、地域の記録を公的アーカイブズ機関がいかに吸収していくかについての実験的プロジェクトCommunity Access to Archives Project(CAAP)が行われた際には、WYASはロンドンのハックニー公文書館と共に、ケース・スタディの対象としても選ばれている。なお、CAAPについては松崎裕子氏の「イギリスにおける『アーカイブズへのコミュニティ・アクセス・プロジェクト(CAAP)―その歴史的背景と概要について-』(コミュニティ政策研究第10号、208年3月)において詳細が述べられている。
[15] Nowthen(アクセス:2015/10/15)
[16] Heritage Lottery Fund(アクセス:2015/10/15)
[17] 前掲、R.Tapp(2012)論文。
[18] WYAS Accreditation leaflet(アクセス:2015/10/15)
[19] WYAS Community Archive Accreditation Scheme, Accreditation pack(アクセス:2015/10/15)より(以下、注25まで同)。なお、認可にあたっての評価基準は、①公開イベントの運営の重要性、最も適した運営、②運営における安全性を確保するために責任を負わなければならない領域、また、一般参加者やグループ・メンバーに関わるリスクを軽減する方法、③利用者の要望への対応方法と、受けた声を実務にどう生かすか、の3点。
[20] 認可にあたっての評価基準は、①収集方針の作り方、②コレクションとなったものについて、各資料の何を記録しなければならないか、③どれをデジタル化するか、どのようにデジタル化するか、④目録や索引を通じて、アクセスを提供するにあたっての各方法論の違いの理解の4点。テーマ別の分類はしないこと、資料のコンテクストが失われないよう出所ベースでグループ分けを行うこと等、ISAD(G)のルールに緩やかに基づく目録のとり方が解説される他、国際標準での記載が公文書館スタッフとのやりとりをスムーズにする等の説明がある点は注目される。
[21] 認可にあたっての評価基準は①収蔵庫、梱包、資料の扱い方について評価し、改善すること、②デジタル記録を長期保存するための問題を理解し、解決することの2点。
[22] 認可にあたっての評価基準は、①グループ・メンバーの情報、コレクション所蔵者の情報など、個人情報保護についての責任の理解、②著作権に関わるものを特定し、誰のものか、どの程度のスパンかの理解、③自身のコレクションについての著作権法の適用方法についての理解、の3点。
[23] 認可にあたっての評価基準は、①メンバーに対する研修がグループの発展を支えること、②研修の機会をどのように見つけるか、誰に対するどのような研修が必要かを見極めること、③グループのプロフィールを高めるために、どのような段階を踏むかの理解、の3点。
[24] 認可にあたっての評価基準は、①グループにとっての利用者を定義できること、②ネットワーク化や共同作業/プロジェクトがいかにグループの活動を拡大するかを理解すること、③新規利用者を見出すための市場開拓プランを作成することの3点。
[25] 認可にあたっての評価基準は、①オーラルヒストリーとは何か、またコミュニティの記録遺産における重要性についての理解、②記録収集プロジェクト/イベントをどのように計画・管理するかの理解、③オーラルヒストリーにかかる許可や著作権の問題についての理解の3点。
[26] 前掲、R.Tapp(2012)論文。
[27] Guide to Records of Sporting Heroes –people & places(アクセス:2015/10/15)
[28] イングランド・プレミアリーグのLeeds Unitedをはじめとし、Wakefield Wildcats、Bradford City、Bradford Bulls、Leeds Rhinos、Huddersfield Town等の9チーム。
[29] NowthenのHP (アクセス:2015/10/15)
[30] オファーは全部で10件にのぼり、図書館1、大学1、博物館1、スポーツクラブ3、個人4の内訳。R.Tapp(2012)前掲論文より。
[31] 「Sporting Heroes」プロジェクトは、ロンドンオリンピック・ロンドンパラリンピック組織委員会による「Inspire」mark(ロンドン・オリンピックに合わせて、文化とスポーツを統合させて人々の積極的な参加を募った活動・イベントに送られる賞)を、2度受賞している。
[32] WYJS Committee Reports, Agenda15, The National Archives Inspection (アクセス:2015/10/15)
[33] Wakefield council, news (アクセス:2015/10/15)
[34] E.Berry(1987)、前掲論文。